残業代ゼロ、残業上限規制、同一労働・賃金 「働き方法案」一括審議へ - 東京新聞(2017年8月24日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201708/CK2017082402000129.html
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厚生労働省は二十三日、収入が高い一部専門職を労働時間規制から外す「残業代ゼロ」制度(高度プロフェッショナル制度)創設を柱とする労働基準法改正案、罰則付きで残業の上限規制を盛り込む同法改正案、正社員と非正社員の不合理な差をなくす「同一労働同一賃金」を目指す労働契約法改正案など七本の法案を一つにまとめ、一括法案として秋の臨時国会に提出する方針を固めた。
「残業代ゼロ」法案、「残業上限規制法案」ともに過労死を招く危険性があるとして、野党は反対している。政府は一括法案にすることで、審議時間を短縮し、臨時国会での成立を目指す。
厚労省は来週開かれる労働政策審議会厚労相の諮問機関)に一括法案とする方針を示す。連合など労働組合側の委員は、国民生活に直結するとして、法案ごとに丁寧に審議するよう求めるとみられる。
「残業代ゼロ」法案は一昨年に国会提出されたが、二年以上継続審議になっている。野党や労働組合長時間労働を促し、過労死リスクが高まるとして反発し、一度も審議入りしていない。政府は同法案を取り下げ、関連法案として出し直す。対象は、年収千七十五万円以上の金融ディーラーや研究開発などの専門職。連合は一時、健康確保対策の強化を条件に、政府と法案修正で折り合ったが、傘下労組の反発から、容認姿勢の撤回に追い込まれた。
残業上限規制は、一年間の残業時間総量を七百二十時間と定め、その枠内なら特例として「一カ月百時間未満」「二〜六カ月の月平均八十時間以内」の残業ができる。ただ、月百時間は労災認定の目安である過労死ラインと同じ。そこまでなら残業させてもいいという誤ったメッセージになる可能性もあり、過労死遺族も反対している。

◆性格異なる3制度、拙速
<解説> 残業代ゼロ制度、残業時間の上限規制、同一労働同一賃金。この三つは目的も、対象とする労働者の立場も全く違う。そして、働き方に大きな影響を与える。それを一括法案としてまとめて審議しようという厚労省の姿勢は乱暴といわざるを得ない。
政府の狙いは一括にすることで審議時間を短縮することだ。さらに、「働き過ぎ」を助長する懸念が指摘される残業代ゼロ制度への批判を薄める思惑もある。
残業代ゼロ制度は産業競争力を強化する観点から提案された。二〇一四年に経済同友会幹部が政府の会議に提案し、成長戦略に盛り込まれた。経営者側の論理に立った制度といえる。
一方、政府は一六年からは「一億総活躍社会」実現の一環として、働き方改革を叫ぶようになった。
残業代ゼロは一部専門職に限り、残業時間の規制に縛られず働けるようにするもので、残業上限規制とは真逆(まぎゃく)の内容。
同一労働同一賃金は、正社員と非正社員の格差をなくすのが目的。ほかの二つとは全く性格が違う。
日本労働弁護団幹部は「規制緩和と規制強化の法律を一緒に議論するなどあり得ない。しかも、それが正社員、非正社員の均等待遇の話と何の関係があるのか」と批判する。 (編集委員・上坂修子)