https://mainichi.jp/articles/20180618/ddm/041/040/104000c
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安倍政権のモリカケ疑惑と日大アメリカンフットボール部の悪質タックル問題は似ている−−と、ちまたでよく耳にする。実際、加計学園問題に絞って日大の問題と比べると、トップや周囲が現場の告発を釈明で否定しようとした点はもちろん、関係者の発言までそっくりだ。二つの問題の奥に潜む日本の病理を探る。【和田浩幸、宇多川はるか】
文部科学省の獣医師数抑制政策のもと、加計学園は国家戦略特区制度で獣医学部の新設を実現した。安倍晋三首相は「岩盤規制に穴を開ける」と制度の意義を語るが、その「穴」が最初から同学園しか通れなかった疑惑が持たれている。
これについて前川喜平・前文科次官は、和泉洋人首相補佐官から素早い対応を指示されたことを巡り「首相は自分の口から言えないから代わって私が言う、という話だった」と証言。和泉氏はこれを否定している。
一方、柳瀬唯夫元首相秘書官は愛媛県文書で「自治体がやらされモードではなく死ぬほど実現したいという意識を持つことが最低条件」と述べたとされるが、柳瀬氏は一般論だった旨を強調。首相も指示や関与を否定し、柳瀬氏を擁護する。
これらをアメフットにたとえると−−。前川選手 和泉コーチを通じて安倍監督から岩盤規制をタックルで潰せと言われた。加計学園を念頭に置いた特別の指示だった。
和泉コーチ 監督の指示はなかった。前川選手に「思い切りタックルしろ」と一般的な意味で言った。
柳瀬コーチ 「死ぬ気で行け」と言ったのは思い切りタックルしろという意味だ。安倍監督 加計学園のために潰せと指示し、働きかけたことはない。柳瀬コーチの発言は精神論だ。
「多くの人が日大と安倍政権を重ねるだろう。本来は組織の代表が率先して謝り責任をとるべきなのに、末端が責任をとったり上をかばったりする。この姿には既視感がある」と語るのは、高千穂大経営学部の五野井郁夫教授(政治学)だ。
「かつて政治学者の丸山真男は戦前のファシズムの特徴として、権力に近いほど罪が許され、遠いほど法が適用され責任が問われる現象を『抑圧の移譲』と呼び、権力側の責任逃れを『無責任の体系』と表現した。安倍政権や日大もそうだ。日本のある種のOS(パソコンを動かす基本ソフト)は戦前から変わっていないのではないか」と指摘する。
関西大社会安全学部の亀井克之教授(リスクマネジメント論)も「二つの問題の構図は全く同じ。組織の監督者が道義的責任をとるべきなのに、指示の有無に論点をすり替えている」と話す。その上で「日大問題の被害者は学生たちで監督らが最後に責任をとる形となった。だが、加計問題は被害者が納税者だと分かりにくく、もっと指摘されていい。安倍政権がうみを出し切らないと、権力側が責任を問われない社会になる」と危惧する。
危機管理コンサルタントの白井邦芳さんは「日大アメフット部に自浄力はなかったが日大に第三者委員会ができた点で安倍政権とは異なる」と分析。「加計問題で第三者委の役割を期待できる機関は司法しかないが、忖度(そんたく)の問題では検察も動けない。行政運営を監視する過去の行政監察局のような機関がなければ問題が繰り返されかねない」と懸念する。