柳瀬氏と「加計」「特別扱い」拭い切れぬ - 東京新聞(2018年5月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018051102000132.html
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加計学園」の獣医学部新設をめぐり特別扱いがあったのではないか。柳瀬唯夫元首相秘書官は否定したが、疑いは拭い切れない。柳瀬氏ら関係者の証人喚問など、国会での解明が引き続き必要だ。
公平・公正であるべき行政判断が、安倍晋三首相の直接的もしくは間接的な影響力で歪(ゆが)められたのではないか。首相が「腹心の友」と呼ぶ加計孝太郎氏が理事長を務める学校法人「加計学園」の獣医学部を、愛媛県今治市に新設した問題の本質である。
衆参両院の予算委員会できのう安倍首相の秘書官だった柳瀬氏を参考人招致して質疑が行われた。
愛媛県職員が作成した文書には柳瀬氏が二〇一五年四月二日、県と今治市、学園の三者と面会した際、「本件は首相案件」と発言した旨の記述があった。
柳瀬氏は参考人質疑で、この日を含めて計三回、首相官邸で学園関係者と面会したことを明らかにした。「記憶の限りでは会っていない」と否定してきたこれまでの答弁は一体、何だったのか。
また「首相案件」との記述については「私の伝えたかった趣旨とは違っている」と否定したが、一四年の国家戦略特区諮問会議で民間議員が提案した獣医学部新設について、県や市、学園側に「首相が早急に検討すると述べている案件だ」と説明したことは認めた。
そもそも柳瀬氏が認めたように「国家戦略特区の関係で会った民間の方は加計学園だけ」だ。加計学園への「特別扱い」が疑われ、特区制度を活用した獣医学部新設が、「加計ありき」で進められたと野党が追及するのも当然だ。
柳瀬氏は、学園関係者との面会前後に、首相への報告や首相からの指示は「一切なかった」と述べたが、首相が早急に検討すると意欲を示した案件を放置し、首相に報告しなかったのは、首相秘書官として不自然極まりない。
首相は加計学園獣医学部新設計画を初めて知ったのは一七年一月二十日と答弁している。柳瀬氏は、首相答弁とつじつまを合わせようとして報告しなかったと言い張っているのではないか。
首相と加計氏とが親密な関係だったからこそ、特別扱いが疑われかねない学部新設には慎重であるべきではなかったか。秘書官がそうした問題を認識できなかったとしたら、根が深い。
参考人招致で真相が解明されたとは言い難い。柳瀬氏や加計氏らの証人喚問が不可欠だ。政府・与党側は真摯(しんし)に応じるべきである。