(余録)「不幸も独(ひと)りで来れば… - 毎日新聞(2018年4月14日)

https://mainichi.jp/articles/20180414/ddm/001/070/138000c
http://archive.today/2018.04.14-001609/https://mainichi.jp/articles/20180414/ddm/001/070/138000c

「不幸も独(ひと)りで来れば、歓迎される」はギリシャのことわざという。ミソは「独りで来れば」というところで、不幸はいつも2人連れ、3人連れでやって来る−−つまり悪いことは重なるものだという意味である。
中国にも「禍(わざわ)いは単(ひと)り行かず」ということわざがあるから、災難がいくつも重なるというのは洋の東西を問わぬ人類普遍の“法則”のようである。英語にも「災いはもう一つの災いの背中に乗ってやって来る」という言い回しがある。
そんな二つや三つなどという生やさしいものではない。それこそ不祥事や失態の団体ツアーが来訪したような昨今の安倍政権と中央省庁である。はてさてこの災いのあちこちでの同時発生、人知ではかれぬ超常現象か、それとも……
森友・加計、イラク日報問題で新たな疑惑が連日発覚する中でのことである。渦中の財務省では事務次官のセクハラ疑惑が週刊新潮に報じられ、働き方改革の司令塔である厚生労働省でも幹部が不適切発言やセクハラで処分を受けた。
何と国会でヤジを飛ばして注意された経済産業省出身の首相秘書官もいる。政権をとりまく疑惑の嵐の中、あちらでもこちらでも国家機関のタガが外れたような役人の行(ぎょう)状(じょう)である。規律も何もどこへやらという高慢と放縦が情けない。
続く役人の失態に足を引っ張られる政権だが、ではこの災いの群発をもたらしたのは誰なのか。役人に忠誠や忖度(そんたく)ばかりを強い、その誇りや良心という国の宝を破壊したのは誰かを考えてみたらよかろう。