9歳、10歳児に不妊手術 旧優生保護法の宮城県資料 - 東京新聞(2018年1月31日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201801/CK2018013102000153.html
https://megalodon.jp/2018-0131-0944-27/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201801/CK2018013102000153.html

優生保護法(一九四八〜九六年)下で障害などを理由に不妊手術を施されたとして宮城県に個人名記載の資料が残る八百五十九人のうち、最年少は女児が九歳、男児が十歳だったことが三十日、同県への取材で分かった。十一歳の児童も多く、半数以上は未成年。優生思想に基づき妊娠の可能性が低い児童に身体的負担を強いる非人道的措置が浮き彫りになり、実態把握など国の対応も問われそうだ。
三十日には十五歳で強制不妊手術を施されたとして、宮城県の六十代女性が国に損害賠償を求める初の訴訟を起こした。弁護団には他にも相談が寄せられているといい、謝罪や補償を国に求める動きが広がるか注目される。
宮城県によると、資料は六三〜八六年度の「優生手術台帳」。旧法に従って手術を受けた八百五十九人(男性三百二十人、女性五百三十五人、性別・年齢非公表四人)の氏名や、手術の申請理由となる疾患名などが記載されている。
女性の最年少は六三年度と七四年度にそれぞれ手術を受けた九歳の二人。男性の最年少は六五年度と六七年度に手術を受けた十歳の四人。いずれも疾患名は「遺伝性精神薄弱」とされていた。ほとんどの年度で十一歳の男女が手術を受けていたとされる。
男性の未成年は百九十一人(59・6%)で、女性は二百五十七人(48・0%)。全体では52%に上る。最高齢は男性が五十一歳、女性は四十六歳だった。
手術の申請理由は、「遺伝性精神薄弱」が全体の八割超となる七百四十五人で最多。「精神分裂病」三十九人、「遺伝性精神薄弱+てんかん」二十六人、「てんかん」十五人と続いた。「遺伝性難聴」など身体障害のある十四人も手術を受けていた。年度別では、六五年度の百二十七人、六六年度の百八人をピークに減少傾向となり、七九年度や八一年度は一人だった。

<旧優生保護法> 「不良な子孫の出生防止」を掲げて1948年施行。知的障害や精神疾患、遺伝性疾患などを理由に本人の同意がなくても不妊手術を認めた。ハンセン病患者も同意に基づき手術された。53年の国の通知はやむを得ない場合、身体拘束や麻酔薬の使用、だました上での手術も容認。日弁連によると、96年の「母体保護法」への改定までに障害者らへの不妊手術は約2万5000人に行われた。同様の法律により不妊手術が行われたスウェーデンやドイツでは、国が被害者に正式に謝罪・補償している。