http://www.kyoto-np.co.jp/environment/article/20171221000032
http://web.archive.org/web/20171223051807/http://www.kyoto-np.co.jp/environment/article/20171221000032
米政府のデータベースで米国防総省の資料が公開されている。その中には大阪大、東京工業大など日本の大学や研究機関に、多額の研究資金が提供されていた2016年までの記録があった。
公開データに京都、滋賀からは、京都大と京都府立医科大が挙がっていた。
その中で名前が分かった京大の教授に直接取材を申し込んだところ、大学の窓口を通して交渉するよう求められた。個人が特定されない匿名条件に加え、学部名も大学名も伏せることが条件だという。通常の研究者への取材では経験したことがない、異例の対応だ。
京大広報課を通じて、所属も明かしてインタビューに応じてほしいこと、研究テーマについて話してほしいことを加えて申し入れ、やりとりを重ねてきた。
だが、取材に応じてもらうことはできていない。
日本の防衛装備庁の研究資金を昨年度に受けた大阪市立大の教授にも取材を申し込んだが、同様のやりとりの末、「純粋な研究以外の話はできない」と断られた。真理追求と公開が原則の科学。匿名を条件とする科学者からは、世間の批判を心配し、軍事関係の資金を受けたことへの後ろめたさが感じられた。
07年から10年間に日本国内に提供された米軍資金の総額は、少なくとも8億8千万円に上るとみられる。
米国防省の資金提供先リストにある日本の各大学や研究機関のテーマは、ロボットや人工知能、標的を捉えるレーザー、炭素繊維素材、蓄電、通信、データ解析など多岐にわたる。米国にとっては軍事技術に応用できる最新研究の動向を把握し、海外で人材を発掘する意図があるとみられる。
米軍から大学への研究資金提供は、1967年に国会で問題になった。
同年5月19日の参院予算委員会は米軍から日本への資金提供問題を取り上げ、文部省は援助を受けた大学・研究機関と研究内容のリストを提出。国公立・私立計26大学と研究機関などの計96件、総額107万ドル(当時の為替レートで約3億8千万円)と報じられている。
京大と府立医大が当時の米軍資金提供先リストにある。府立医大で米軍資金を受けとっていたうちの一人は、当時学長だった吉村寿人教授。戦時中、旧満州にあった731部隊で「凍傷研究」にあたった医学者だ。
731部隊では、生物兵器開発のため、医師や研究者が人体実験をしたとされる。吉村は731部隊に1938年から配属された。戦後の著書で、生後3日の赤ちゃんの指を氷水に浸す実験を含めて「私は細菌戦とは無関係な凍傷の研究をやり、今日騒がれている俘虜(ふりょ)の生体実験ではない」と主張する一方、「戦犯部隊に居たという私の経歴は消えるものではない」「国家全体を狂気に駆り立てた事態が誠にうらめしい」と、軍事研究に動員され、やりたかった研究を断念させられた怒りも書いている。
だが、なぜ戦後また、米軍資金を受けとったのか。