(筆洗)プラスチック製品 - 東京新聞(2018年1月18日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018011802000137.html
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風は冷たいがよく晴れた日曜日、近所の川沿いの道を散歩していて、こんな光景を見た。
こざっぱりした身なりの初老の男性が柴犬を連れて歩いている。犬が用を足すと、男性はすかさずバッグから小さなポリ袋を取りだし、ふんを入れた…と、次の瞬間、男性は、その袋を、川に向かって勢いよく投げ捨てたのだ。
愛犬のふんを拾い、わざわざ分解しにくいポリ袋で「包装」して捨てる。何とも倒錯した人物もいるものだが、実は私たちの消費のありよう自体、かなりおかしなものかもしれない。
野菜でも何でも、やたらときれいにプラスチック製品で包装されているが、その多くはごみとなる。全世界でごみとなって海に流れ出るプラスチック製品は年に八百万トンともいわれ、世界中の海が汚染されつつある。二〇五〇年には、海を漂うプラスチックが魚の総量よりも重くなるという試算もあるほどだ。
欧州連合(EU)はおととい、二〇三〇年までに使い捨てのプラスチック包装をなくすという計画を打ち出し、英紙などは「EU プラスチック浪費に宣戦布告」と伝えた。そういう物騒な言葉が使われるほど、危機感は高まっている。
川沿いでポイ捨てをした初老の男性はその後も、のんびり散歩を続けていた。「プラスチック戦争」など遠い国のこと、ポリ袋がどこに流れようが、わが日常に変わりなし、ということか。