(筆洗)自殺を強いられた子どもたちもいる - 東京新聞(2017年11月10日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017111002000132.html
https://megalodon.jp/2017-1110-0936-39/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017111002000132.html

世界では、一年間におよそ八十万人が自ら命を絶っているという。四十秒に一人、世界のどこかで誰かが自死していることになる。その中には、死にたくないのに、自殺を強いられた子どもたちもいる。
ナイジェリア北東部に住むハディザさん(16)は、かの地でテロを繰り返すイスラム過激派組織ボコ・ハラムに誘拐された。幹部に「最も幸福な所に行かせてやる」と言われて、彼女は帰宅できるのかと喜んだが、違った。
爆弾が付いたベルトを腰にきつく巻かれ、人混みの中で自爆するように命じられた。そうすれば、多くの人の命を奪うことになる。一緒に自爆を命じられた十二歳の少女に「どうするの?」と聞いたら、こう答えたそうだ。「どこかでひとりきりになって、自分を吹き飛ばす」
国連などによると、ボコ・ハラムによる子どもを使った自爆テロは今年になって急増し、既に百人以上の子が「自殺」させられ、数百人もの犠牲を出しているという。
自らの機転と周囲の助けで自爆をまぬがれたハディザさんらの貴重な証言を集めた米紙ニューヨーク・タイムズの報道によれば、人混みを避け、自爆しようとする子も少なくないそうだ。
自爆テロで何十人もが犠牲になれば、ニュースになって、世界中で報じられる。しかし、他人を巻き込まぬため、たったひとりでの死を選んだ少女たちのことは、まず報じられぬ。