(筆洗)あきれるのは「第三者委」の検証のファジィさだ - 東京新聞(2016年6月18日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016061802000135.html
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<アレどこだ? アレをコレする あのアレだ!>は、サラリーマン川柳の秀句。ファジィ(あいまい)という言葉が流行語になっていた二十数年前にはこんな川柳も生まれた。<ファジィ課長 「あれ」「これ」「それ」を連発し>
さて社長にこう命じられたら、どうするか。「その件は、官邸とあれと、きちんと事前にしっかり、あれしといて」。発言の主は、福島第一原発事故が起きた時の東京電力の社長である。
なぜ東電はあの時、「メルトダウン炉心溶融)」という言葉を使って事態の深刻さを、国民にきちんと説明しなかったのか。どんな経緯があり、誰に責任はあるのか。
そういう疑問を検証する「第三者委員会」の報告書によれば、五年前の三月十四日、原発の燃料損傷を記者会見で認めることについて、部下から了承を求められた社長の答えが「あれと、あれしといて」だったというのだから、なかなかのファジィ社長だ。
さらにあきれるのは「第三者委」の検証のファジィさだ。真相究明には欠かせぬ当時の官邸関係者や官僚の証言を得ようとせず、事情を聴いたのは東電社員らだけ。過去をしっかり調べ、教訓を現在と未来に生かそうという熱意なくして何のための検証だろう。
原発事故で避難生活を強いられる人が、今なお九万人もいる。いくらあいまいにしようとしても、決してごまかせぬ現実だ。