核なき世界 他に道なし 旧ソ連元大統領・ゴルバチョフ氏、本紙に語る - 東京新聞(2017年10月30日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201710/CK2017103002000122.html
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【モスクワ=栗田晃】東西冷戦の終結に指導的な役割を果たした旧ソ連ミハイル・ゴルバチョフ元大統領(86)が、モスクワで本紙の単独インタビューに応じた。三十年前の一九八七年、当時のレーガン米大統領と中距離核戦力(INF)廃棄条約を結び、核保有大国が初めて核軍縮に踏み出した経験を踏まえ、「『核兵器なき世界』に代わる目標は存在しない。核兵器廃絶を成し遂げないといけない」と強く訴えた。 
ゴルバチョフ氏は九一、九二年に長崎、広島の被爆地を訪問した。八六年のチェルノブイリ原発事故当時はソ連共産党書記長として事故対策を指揮。二〇一一年に東京電力福島第一原発事故を経験した日本との共通点も挙げ、「原爆投下や原発事故を経験した国は、核兵器廃絶との戦いの先頭に立つべきだ。それは日本と(旧ソ連を継承した)ロシアだ」と強調した。
また、核兵器を非合法化する核兵器禁止条約の制定に貢献した非政府組織(NGO)核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN(アイキャン))のノーベル平和賞受賞決定を「ノーベル賞委員会は極めて正しい判断をした」と祝福した。
ゴルバチョフ氏は、核超大国の米ロによる核軍縮交渉が一向に進んでいない現状を懸念。一九八五年十一月、レーガン大統領との初の首脳会談後に発表した共同声明に盛り込まれた「核戦争は決して容認できず、勝者はいない」との一文を挙げ、「もう一度この意味を思い出してほしい」と訴えた。両氏は八六年にアイスランドレイキャビクで再会談し、INF廃棄条約締結につながった。
ロシアによるウクライナ南部クリミア半島の併合から始まったウクライナ危機やシリア内戦を巡り、米ロ関係は冷え込み、「新冷戦」と呼ばれる緊張関係に陥っている。ゴルバチョフ氏は「深刻な危機からの出口を探すべきだ。三十年前の米ソ対話も簡単ではなかったが、両国の指導者の政治的な意志が決定的な役割を果たした」と指摘。
トランプ米大統領とロシアのプーチン大統領に「核軍縮に迅速な行動をとるべきだ。米ロ両国のみが、人類の最も重要な目標である核なき世界を達成できる」と重ねて求めた。
ゴルバチョフ氏はインタビューに、一部を口頭、残りは書面で回答した。

ミハイル・ゴルバチョフ> 1931年生まれ。85年にソ連共産党書記長に就任し、ペレストロイカ(改革)やグラスノスチ(情報公開)を推進。米国との間で核軍縮を進め、東西冷戦を終結させた。90年、大統領制導入とともにソ連最初で最後の大統領に就任し、ノーベル平和賞を受賞。91年末、ソ連崩壊とともに退任し、その後は「ゴルバチョフ基金」総裁として講演や執筆活動などに取り組む。今夏にも18作目の著作「楽天家のまま」を出版した。