ローマ教皇非核訴え 核軍縮への転換が急務だ - 琉球新報(2019年11月26日)

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世界の切実な声としてかみしめたい。
38年ぶりに来日したローマ教皇の言葉だ。約13億人の信者がいるローマ・カトリック教会の頂点であるフランシスコは長崎と広島の両被爆地を訪れ「核兵器のない世界を実現することは可能であり必要不可欠なことだ」と訴えた。天皇安倍晋三首相とも会談し、自身の考えを伝えた。
教皇は2013年の就任以来、繰り返し核廃絶の必要性を訴えてきた。世界各地で戦争が続く現状に憂いを示し、長崎と広島の被爆の歴史から「人類は何も学んでいない」と発信した。17年にバチカン被爆者と面会した際には核兵器保有を歴代教皇として初めて明確に批判した。
教皇が発してきた核廃絶へのメッセージは、一宗派の指導者の発言にとどまらない。世界に通ずる普遍的意味を持つ。例えば、東西冷戦を終結に導いた元ソ連大統領ゴルバチョフ氏の思いとも共通する。ゴルバチョフ氏は9月に本紙の取材に対し、冷戦を終わらせたのは「核戦争に勝者はなく、核戦争は容認しない」という理念だったと振り返った。
米中ロを中心に核軍拡へと向かっている新冷戦と呼ばれる今だからこそ、教皇の言葉は一層重い。8月には中距離核戦力(INF)廃棄条約が破棄されたことで、米国が日本などアジア太平洋地域に中距離ミサイルを配備する可能性が高まっている。米軍が駐留し、中ロに隣接する日本は新冷戦の最前線だ。
核兵器禁止条約への参加を促すなど教皇来日は、そんな日本から核軍縮への機運を高める狙いがあるとみられる。17年に国連で採択された同条約は、発効に必要な50カ国・地域の批准に達していない。米国の核の傘を当てにしている日本も批准に後ろ向きだ。
日本が国連に提出し委員会で採択された核兵器廃絶決議案は、核軍縮を巡る国際情勢の悪化を反映し、日本の非核政策の後退が鮮明になった。毎年提出してきた決議案の中で、昨年まで記載されていた核使用の非人道的な結末に対する「深い懸念」という文言は削除された。米ロの新戦略兵器削減条約(新START)の履行促進など具体的な核削減策にも触れなかった。
「深い懸念」は核兵器禁止条約の基本理念だ。唯一となった米ロ核軍縮条約である新STARTは21年2月に期限を迎える。破棄への懸念が強まっている。
核軍拡に向かう世界を核軍縮に転換させる流れをつくることが急務だ。そのためには、唯一の被爆国である日本から核軍縮の要求を強める必要がある。後ろ向きではいけない。教皇の訴えに応えるべきだ。
教皇訪日は当初、来沖の期待もあった。実現しなかったが、沖縄からも教皇の訴えに共鳴する声を上げたい。極東最大の米軍基地が存在し、いつでも核兵器が持ち込まれる危険と隣り合わせの県民にとって、よそ事ではない。