言わねばならないこと(99)「政治道徳」崩壊させた デザイナー・作家 太田和彦さん - 東京新聞(2017年9月7日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/iwaneba/list/CK2017090702000194.html
https://megalodon.jp/2017-0919-0932-55/www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/iwaneba/list/CK2017090702000194.html

安倍政権は、安全保障関連法や「共謀罪」法などをむちゃくちゃな方法で成立させた。森友学園加計学園の問題では「記憶にない」や「文書は破棄した」の答弁で押し通した。
大事な法案なら納得してもらうまで議論し、疑いがあれば、身の潔白を証明すればいい。だが、危うくなると逃げ回り、担当者は配置転換する。安倍晋三首相は後で頭は下げても口だけで、誠実に説明しようとしていない。この首相は「政治道徳」を崩壊させた。
政治に関心がある方ではなかったが、安倍首相になって「国のかたち」が変わっていくことがとても気になりだした。ましてや憲法までいじろうとしている。とんでもない話だ。
私は戦後の第一世代。骨の髄まで「戦後民主主義」の申し子だ。平和主義の国是があったから、いま飯が食えて徴兵の心配もない。他国の人を殺したり、戦争に巻き込まれたりすることはないという安心感が「繁栄」につながった。
安倍首相にはその根幹を覆そうとする、戦前に戻そうとする怖さを肌身で感じる。国の中枢にいて、異論は許さない。出れば「共謀罪」法で戦前の治安維持法のように取り除く。これはファシズムだ。
酒場で政治の話をすれば酒がまずくなる。これは鉄則だ。しかし「居酒屋評論家」とは関係なく、読者のニーズでなくても、連載コラムに今の政治への批判は時々書く。マスコミに発表の場を持つ者の責務と考えるからだ。
コラムなどで表現活動の場を持つ人たちは、自分の連載に、いつもと違っても書いてほしい。言い続けることが大事だ。

<おおた・かずひこ> 1946年生まれ。元東北芸術工科大教授。著書に『居酒屋百名山』『居酒屋を極める』など。サンデー毎日にコラム「おいしい旅」を連載中。