個人見学 受け入れ 草津の国立ハンセン病療養所・栗生楽泉園:群馬 - 東京新聞(2017年9月7日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/list/201709/CK2017090702000161.html
https://megalodon.jp/2017-0907-2114-50/www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/list/201709/CK2017090702000161.html

草津町国立ハンセン病療養所「栗生(くりう)楽泉園」は、隣接する重監房資料館と協力し、園内の史跡や一部施設の見学について、新たに家族連れや知人同士など5人未満の個人の受け入れを開始した。5人以上の団体には、新たに学芸員が引率して解説する見学案内も同時に始めた。差別の歴史や人権の尊さを幅広い人々に、より深く理解してもらうのが狙い。 (菅原洋)
園内東端に元患者たちが「地獄谷」と呼んできた、外部には知られていない一角がある。
一九三五(昭和十)〜六四(同三十九)年、ここに火葬場があった。亡くなった元患者の骨つぼは既製品より小さく、火葬後の残骨を納骨できる場所も用意されず、近くの崖へ投げ捨てたのだ。元患者への根深い差別を伝えている。
火葬場の撤去時、元患者が残骨の収拾を訴え、元患者と職員が総出で骨を拾った。今は供養碑がある。
供養碑の隣にある「つつじ公園」も、差別の歴史を伝える場所だ。ここに三三(同八)年、患者たちの監禁所(室)が建てられた。園内には、ハンセン病に加えて精神的な病も発症した患者二人を看病せず、ここに閉じ込めた記録が残る。監禁所は七七(同五十二)年に取り壊された。
園内には、戦前から終戦後にかけて法令に触れたとされた患者たちを収容した懲罰施設「重監房」の建物基礎も残存する。
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園内はこれまで、居住・療養する元患者たちへの人権上の配慮などから関係者を除く個人の見学はできなかった。団体については、一般の職員が付き添うだけだった。
園内で元患者たちの関連品を展示する社会交流会館に八月上旬、干川(ほしかわ)直康学芸員が着任したのを契機に、新たな受け入れを始めた。
見学できるのは、地獄谷などの他、栗生神社をはじめ、元患者たちを癒やした各宗教施設など外周部に点在する二十数カ所。納骨堂も含まれ、差別のために故郷の墓で眠れない元患者の多くの遺骨を納めている。所要時間は計約一時間。
園内最古の青年会館は来年をめどに修復計画があり、工事後に見学ルートに加えることを検討する。同会館では終戦後に元患者たちを差別して裁判所ではなく、園内で裁いた「特別法廷」が開廷した。
見学者には、楽泉園が新たに作製した園内散策マップを無料配布する。干川学芸員は「差別の歴史の重みが実感できるような場所などを見学してほしい」と呼び掛けている。
見学希望者は社会交流会館か重監房資料館で受け付けをする必要がある。個人、団体とも無料。個人は事前予約は必要なく、見学ルートを自由に回ることができる。ただし、元患者の居住・療養区域へは立ち入れず、元患者への撮影や話し掛けは禁止している。団体は一週間前までに予約が必要。問い合わせは楽泉園=電0279(88)5999=へ。原則月曜休み。