働き方法案強行採決 高プロは削除すべきだ - 琉球新報(2018年5月27日)


https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-726834.html
http://archive.today/2018.05.27-005246/https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-726834.html

安倍政権が最重要法案と位置付ける働き方改革関連法案を与党などが衆院厚生労働委員会強行採決し、可決した。
法案には高収入の一部専門職を労働時間規制の対象から外す高度プロフェッショナル制度高プロ)が含まれている。過労死が増大する働き方の改悪法案ではないか。
高プロは年収1075万円以上の金融ディーラーや研究開発職といった一部専門職を労働時間規制の対象から外す制度だ。政府は「時間ではなく成果で評価される働き方」と説明する。柔軟な働き方で生産性を高めようとする経済界の思惑が背景にある。事実上の残業代ゼロの制度だ。
安倍晋三首相は1月の施政方針演説で、働き方改革関連法案の意義について「わが国に染みついた長時間労働の慣行を打ち破る」と述べた。しかし高プロは首相の主張に逆行する。高収入専門職を労働時間規制や残業代の対象から外し、働く人の命を奪いかねない危うい制度ではないか。
現行の労働基準法高プロと同様に労働時間規制の適用除外とされている管理監督者にも過労死が起きている。さらに、あらかじめ決めた時間を働いたと見なす裁量労働制の適用を受けていた電機メーカーのエンジニアの男性も過労死している。労働時間規制や残業代の対象から除外すれば、結局は企業の都合で長時間労働を強いられてしまうのは目に見えている。
裁量制では企業は残業代を支払う義務がないため、労働時間管理が甘くなりがちだ。過労死したエンジニアの男性の会社も働いた時間を把握していなかった。
このため遺族は労災申請に必要な勤務実態を把握するため、自ら調査している。遺族が勤務実態を把握できなければ企業責任を問えない。極めていびつな状況だ。
関連法案は高プロのほかに残業代の上限規制、同一労働同一賃金の導入が3本柱だ。当初はこれ以外に、裁量労働制の適用業種拡大も盛り込まれていたが、厚生労働省の労働時間調査に異常値が見つかった影響で削除された。
さらに、この調査のデータで新たに6カ所のミスが発覚した。再調査で6事業所を二重集計するミスがあったとの報告が採決当日の朝にあった。あまりにずさんだ。
共同通信世論調査では、今国会での成立は「必要ない」とする意見が68・4%を占めた。国民の理解は得られていない。厚労委の法案審議は不祥事などに集中し、残業時間の上限規制や非正規労働者の処遇改善などの重要論点の議論は十分ではなかった。
にもかかわらず、政府は29日の本会議で衆院を通過させ、参院に送付する考えだ。あまりに拙速だ。
高プロ労働基準法の根幹となる法定労働時間制を壊す制度だ。働き方を向上させてきた歴史にも逆行する。高プロは関連法案から削除すべきだ。