自衛隊に初の「米艦防護」命令 安保法の初任務 きょう出港 - 東京新聞(2017年5月1日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201705/CK2017050102000107.html
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安全保障関連法に基づく新任務で、自衛隊が平時から米国の艦艇などを守る「武器等防護」の実施を、稲田朋美防衛相が自衛隊に初めて命令したことが政府関係者への取材で分かった。米国と北朝鮮との軍事的緊張が高まっている中だけに、米軍との一体化への懸念が強まった。 (荘加卓嗣)
昨年十一〜十二月、南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣された陸自部隊に「駆け付け警護」が付与されたのに続く実任務で、安保法に基づく自衛隊の活動が本格化する。
政府関係者によると、五月一日午前、横須賀基地(神奈川県)を出港する海自護衛艦「いずも」が、東京湾南の太平洋で米海軍の補給艦と合流。四国沖まで一緒に航行して護衛する。期間は二日程度とみられる。
補給艦の防護は米軍側のニーズが高い活動。防護対象の米海軍の補給艦は、「いずも」と四国沖で別れた後、北朝鮮情勢の緊迫化を受けて原子力空母カール・ビンソンを中心とする空母打撃群(艦隊)などが展開する朝鮮半島沖へ向かうとみられており、弾道ミサイル発射に備える米軍の艦船に補給をする見通しだ。
政府は昨年末、武器等防護の運用指針を決定した。指針は平時の警護や武力行使に至らないグレーゾーン事態での対応を想定。具体例として米艦が北朝鮮弾道ミサイルへの警戒監視中の場合や、自衛隊と共同訓練中に妨害行為を受けた場合などを挙げていた。

◆米軍との一体化加速
米国と北朝鮮の軍事的な緊張が高まる中、自衛隊と米軍の一体化が加速し、既成事実化する懸念が強まった。自衛隊米原子力空母カール・ビンソンとの共同訓練に続き、安全保障法に基づく「平時の米艦防護」を初めて実施する。
海上自衛隊は、米艦防護の任務中、米軍に対する偶発的な攻撃や妨害行為があれば、武器を使って阻止できる。他国を武力で守る集団的自衛権を行使する要件を満たさなくても同様の反撃が可能になるため、集団的自衛権の「裏ルート」と批判される。自衛隊が戦争の火ぶたを切る危険性も指摘される任務だ。
ただ、今回の場合、海自が米補給艦を防護する範囲は太平洋側だ。現状では、北朝鮮が四国沖の米艦を狙う意思と能力を持っている可能性は低い。他の国やテロ組織が米艦を攻撃することも想定しづらい。海自の任務は、米艦を防護するというよりは、北朝鮮に日米同盟の緊密さを誇示することが主たる目的になる。
米軍が必ずしも自衛隊に守ってもらう必要のない海域、局面での米艦防護は、平時から有事まで米軍に対する自衛隊の支援を飛躍的に拡大させる安保法の本質を物語る。米朝対立の今後の展開次第では、一体化した自衛隊と米軍がそのまま共に戦う事態が現実味を帯びかねない。 (竹内洋一)
<武器等防護> 安全保障関連法の整備で、自衛隊が「日本の防衛に資する活動」をしている米軍など他国軍の弾薬や艦船、航空機を守る任務に従事できるようになった。他国軍から要請があった場合に、防衛相が主体的に実施するか判断する。ただ、初めて要請があった場合や、第三国での警護の要請があった場合は、国家安全保障会議(NSC)で審議する。