安保法運用「国民チェックできぬ」 情報公開不足 自衛隊活動は拡大 - 東京新聞(2018年3月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201803/CK2018032902000141.html
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安全保障関連法施行後の二年間を振り返ると、詳しい活動内容を公表せずに運用しようとする政府の姿勢が目立つ。自衛隊の活動が適正かどうか、国民が判断できなくなる恐れがある。 (新開浩)
代表例は、安保法で可能になった「武器等防護」。
安倍晋三首相は今年一月、施政方針演説で安保法に触れ「自衛隊は初めて米艦艇と航空機の防護の任務に当たった」と説明。防衛省も二月、米艦艇と航空機への武器等防護を昨年、一件ずつ行ったと発表した。
米艦艇については、海上自衛隊護衛艦が昨年五月一〜三日、米海軍の補給艦を太平洋上で護衛したケースを指しているとみられる。安保法が初めて実際に運用されたケースで大きく報道されたが、政府から公式発表はない。航空機の方も公式発表されていない。
こうした運用について、希望の党後藤祐一氏は今国会で「場所が大まかにも示されないのは大変残念。安保法がどう運用されているのか、国民は議論できない」と追及。小野寺五典(いつのり)防衛相は「米軍の活動に影響を与える恐れのない範囲で、可能な限りの情報を公開した」と釈明した。詳細を公表すると、護衛を必要としている米軍の弱いところを知られてしまうというのが政府の説明だ。
武器等防護に関する政府の運用指針は、「適切に情報公開を図る」としながら、武装集団による「具体的な侵害」などが起きなければ実施した事実も公表しないと定めている。
武器等防護以外も同様。昨年六月ごろ、北朝鮮による弾道ミサイル発射を日本海で警戒中の米イージス艦に、海自艦が安保法に基づく給油を初めて行った。これも九月の報道で判明。菅義偉(すがよしひで)官房長官は会見で「自衛隊や米軍の運用の詳細が明らかになる」として事実確認に応じなかった。
日米両国の情報公開制度を活用し、米軍活動の実態解明に取り組むNPO法人「ピースデポ」の梅林宏道特別顧問(80)は「軍事作戦ならともかく、訓練の場所や日時を公開しても、日米の安保協力に支障を来すとは思えない。合憲性が議論される安保法の運用について、国民がチェックできないのは問題だ」と疑問視している。