「震災いじめ」を国が明記 未然防止へ基本方針を初の見直し - 東京新聞(2017年2月8日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201702/CK2017020802000125.html
http://megalodon.jp/2017-0208-0957-22/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201702/CK2017020802000125.html

国のいじめ防止対策協議会(座長・森田洋司鳴門教育大特任教授)は七日、国の基本方針に「東日本大震災で被災した児童生徒に対するいじめの未然防止・早期発見に取り組む」などの項目を新たに盛り込んだ改定案を大筋で了承した。いじめ防止対策推進法は、基本方針の策定を国と学校に求めており、国の見直しは初めて。
東京電力福島第一原発事故福島県から横浜市自主避難した中学一年の男子生徒が名前に「菌」を付けて呼ばれるなど、各地で震災に関するいじめが相次いで発覚。文部科学省は「震災いじめ」を明記して注意喚起することで、学校現場や地域への啓発につなげたい考えだ。
改定案は、心身への被害の大きい「重大事態」への対応を示した指針案とともにパブリックコメント(意見公募)を実施した上で、三月中に決定する。
震災いじめの項目は、基本方針のうち特に学校での対策をまとめた別添資料に加えた。被災した児童生徒が受けた心身への影響や、慣れない環境への不安感を教職員が十分に理解し、心のケアを適切に行うとした。
別添資料ではほかに、性的少数者(LGBT)へのいじめ防止のため、教職員の理解を促進するよう明記。障害のある子どもが被害者、加害者となる場合は、個人の特性を踏まえた適切な指導も必要だとした。
改定案ではいじめが「解消された」と判断できる要件として、加害行為が相当の期間なくなった上で、被害者本人が心身の苦痛を感じていないと認められる場合と提示。相当期間は三カ月を目安とし、この間にも注視を続けることが不可欠だとした。
またアンケートや個人面談、校内研修など、学校現場での防止に向けた取り組みに達成目標を設定し、保護者や地域住民らによる「学校評価」で状況をチェックすることも打ち出した。

<いじめ防止対策推進法> 2011年10月、大津市の中2男子がいじめを苦に自殺したのをきっかけに、防止対策を徹底するために与野党議員立法で制定された法律。国と学校にいじめ防止対策基本方針の策定を義務付けた。心身や財産への重大な被害や、長期欠席を余儀なくされたりした場合を「重大事態」と定義。学校には文部科学省自治体への報告が義務付けられており、調査組織を設置して被害者側に適切な情報提供をしなければならない。