安倍内閣が最高裁人事に介入か 山口厚最高裁判事 - 弁護士 猪野 亨のブログ(2017年1月27日)

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2017年1月13日、安倍内閣は定年退官を迎える最高裁判事の後任を閣議決定しました。

定年退官
 桜井龍子判事 2017年1月15日
 大橋正春判事 2017年3月30日

後任
 山口厚
 林景一氏

さて問題になるのは、何故、このような人事が行われたのかです。
従来、不文律で最高裁判事は、出身による枠組みがありました。おおよそ次の枠組みとなっています。
 裁判官出身 6名
 弁護士出身 4名
 検察官出身 2名
 行政官出身 2名
 法学者出身 1名

桜井判事は行政官であり、その枠には林景一氏(外交官)が入り、大橋正春判事は弁護士であり、その枠に山口厚氏ということになりますが、これまでの枠組みが壊されました。山口氏は、弁護士登録をしているとはいえ、本籍は学者(刑事法)です。
既に弁護士枠が減らされたということについては、ネット上でも飛び交っており、問題視されています。これは次に述べるとおり、「既得権」という問題ではありません。
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最高裁判事は、内閣が任命しますが(憲法79条1項)、最高裁は内閣(行政)に対して違憲立法審査権を行使することによって権力行使を憲法の観点から抑制する国家機関(最高裁)の構成員であり、立憲主義という点でも非常に重要な役割を担っています。
 この人事を内閣が恣意的に行うのであれば、内閣に都合のよい人事をすることによって最高裁の独立性が失われ、内閣の事実上の統制下に置くことを可能にしてしまいます。
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今まではバランスによって成り立たせていた統治機構に関して、権力の集中が起きることになります。内閣法制局であり、最高裁になると立憲主義の危機にもつながります。内閣のお目付役をすべて自分の言うことを聞く者にすげ替えてしまうのですから。
次々と慣例を破る姿は、全く抑止が働かなくなるということもであります。
その人事権を使った恫喝は極めて大きな影響力を与えますから、次第に批判はなりを潜めることになります。
安倍政権の手法が危険であることが改めて示されました。こうしたやり方は、例えば外国での例では大統領が親族や友人ばかりを側近に用いたりする場合がありますが、安倍氏の手法はこれ以上に恐ろしいということです。親族や友人の場合には端的に「汚職」だったり、「蓄財」のためだったりしますが、統治に関わる部分で政権の意向に沿うだけの人物の登用は「独裁」です。