(筆洗)そんなデマに人々はどう接したか。 - 東京新聞(2017年1月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017012002000136.html
http://megalodon.jp/2017-0120-0928-52/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017012002000136.html

イスラエルの国防相が「パキスタンがシリアに地上軍を派遣すれば、我が国は核攻撃でパキスタンを破壊」と発言>。そんな物騒な情報がネット上に流れたのは、先月二十日のことだ。
この情報が嘘(うそ)であることは明らかだった。発言したとされる国防相の名は、とっくにその職を退いていた人物の名だった。だが、パキスタンの国防相が三日後、ツイッターに「イスラエルは、パキスタンも核保有国であると忘れている」と書き込み。イスラエル国防省が「国防相はそんな発言はしていない」と否定する騒ぎとなった。
東日本大震災の時は「被災地で外国人の犯罪が多発している」との噂(うわさ)が流れた。宮城県警によれば、震災前後で外国人による犯罪件数の変化はなかったというから根も葉もない話である。
そんなデマに人々はどう接したか。東北学院大学の郭基煥(かくきかん)教授が仙台の住民を対象に実施した調査結果は、実に興味深い。
51・6%の人が「被災地での外国人による犯罪」をめぐる噂を聞いていた。情報源は家族らからの口コミが最も多く、ネットがそれに次ぐ。その噂をどれほどの人が信じたか。何と86・2%もの人が信じていたというのだ。
人間というものは、不安や恐怖を煽(あお)り立てる情報に接すると、あっけなく信じ込んでしまうもの。「!」の衝撃があまりに大きいと、やすやすと大切な「?」を忘れてしまうらしい。