(筆洗) 小泉進次郎環境相の発言 - 東京新聞(2019年9月27日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2019092702000133.html
https://megalodon.jp/2019-0927-1612-02/https://www.tokyo-np.co.jp:443/article/column/hissen/CK2019092702000133.html

ドイツの哲学者ショーペンハウアーは、文筆を仕事にする人に向けて述べている。<知者のごとく思索し、しかしだれもが使う言葉で語れ…ふつうの言葉を用いて、非凡なことを語りなさい>(『読書について』)
普通の言葉で非凡なことを-その難しさに悩み続けてきた身には、耳に痛い。言葉が命の政治家にも、きっとあてはまる…と思いきや、だれも使わないような言葉で普通のことを語る人がいたようだ。気候変動の問題には「セクシーに取り組むべきだ」という小泉進次郎環境相の発言が、話題になっている。
「セクシー」への違和感が指摘された。英語には、魅力的という意味もあるそうで、単に「魅力的な課題だ」と言っているのなら、うなずけなくはない。ただ大臣が、わざわざ奇抜な表現で語るほどの内容でもないだろう。
国連では、英語でメモを見ずにスピーチもした。ジョークも交えている。非凡である。だが、伝える記事には、内容に「具体的な政策は含まれず」とある。
ネット上では、話しぶりに比べて、内容の薄い発言が多いと少し前から話題らしい。言いそうな言葉の創作も笑いを呼んでいるそうだ。
演説会場の人気者なら、目くじらを立てるほどでもなかろう。若くして大臣に抜てきされ、将来の首相候補ともいわれる方だ。おもしろくはなくても、非凡な内容を話す時だろう。あまり笑えない。