ブラック企業 もっと自分を守ろうよ - 東京新聞(2017年1月14日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017011402000172.html
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電通の新入社員が過労自殺するなどブラック企業が社会問題となる中、超党派議員連盟が労働法制を義務教育から教えることを国に義務付ける法案骨子をまとめた。一刻も早い実施が求められる。
「労働者を搾取して、労働コストを引き下げて、価格競争に勝つ。そんなことを許していたらまじめに頑張る企業が競争に負ける。絶対に許してはいけない」
「ワークルール教育推進法案」骨子を取りまとめた議連役員の一人は指摘する。これに反論できる人はいまい。国会に提出し、年内の施行を目指す。
違法な長時間労働、残業代未払い、パワハラ、セクハラ−。日本の労働市場には多くの問題がまん延している。違法な残業をさせたとして電通三菱電機書類送検されたが、氷山の一角だろう。
連合のシンクタンクが昨秋、実施した調査によると、民間企業に勤める二十〜六十代に自分の勤務先がブラック企業と思うかとの質問に、二割超が「そう思う」「どちらかというと、そう思う」と答えた。驚くべき多さである。
違法な働かせ方は、学生アルバイトにも広がる。厚生労働省が一昨年に大学生を対象にした調査によると、六割が労働条件でトラブルになった経験があった。
法案は、違法な働かせ方から身を守るため、子どものころから労働時間を規制する労働基準法や時間当たりの賃金の最低額を定めた最低賃金法、労使間のトラブル解決策など労働法制に関する知識を身に付けることを目的とする。そのために、小中学校や高校の教育を所管する都道府県や市町村には、この方針に基づき教育計画を定めるよう求める。
労働ルールの基本的な知識がないまま労働市場に出ることが、ブラックな働き方を容認する一因になっている。それが是正されることは、極めて意義が大きい。働く人を守るため、法成立、施行は待ったなしだ。
と同時に、身に付けた知識を生かすためのシステム作りが必要だ。電話やメールで労働相談を受け付けているNPO法人「POSSE(ポッセ)」には、年間三千件も寄せられている。労働基準監督署の機能強化や、自治体に相談窓口を設けるなどの公的な対策の充実が必要ではないか。
政府は三月に長時間労働の抑制策などを盛り込んだ「働き方改革」実行計画をまとめる。国や企業を挙げて、今年を「働き方改革元年」にしてほしい。