http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017102702000143.html
https://megalodon.jp/2017-1027-1003-34/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017102702000143.html
与野党が対立する働き方改革に関する議論は、本来は選挙の争点だったはずだが、低調な論戦に終わった。選挙で語らぬ政策を「安倍一強」政権は今後の国会審議でごり押ししないだろうか。
そんな争点などなかったかのような盛り上がらない論戦だった。
時間外労働に上限を設け規制を強化する。一方で、金融ディーラーや研究職など高年収の専門職を時間規制から外すことから「残業代ゼロ法案」と批判される「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」導入という緩和もする。
両者を抱き合わせる点にも批判がある働き方改革関連法案は、今秋の臨時国会最大の与野党対立法案になる、そう見られている中での衆院解散だった。選挙戦でも争点化が期待された。
立憲民主党や共産党、社民党は高プロ導入に反対を主張した。
ところが、自民・公明両党は衆院選公約では、長時間労働の是正こそ掲げているが、「高プロ」の導入については触れずじまいだった。批判を懸念し「争点隠し」をしたように見える。
雇用政策は社会保障と密接にからむ。現役世代が賃金から支払う保険料は社会保障制度を支える重要な財源だ。賃金が上がれば保険料収入も増える。安定した雇用や子育てなどとの両立が実現し、生活できる賃金が得られるような改革を考えることは、社会保障の将来にとっても重要な議論である。
だが、論戦は幼児教育・保育の無償化に限られてしまった。
安倍政権は安全保障関連法や「共謀罪」法など選挙で語らなかった政策を「数の力」で押し通した。労働法制では二〇一五年、改正労働者派遣法を強引に成立させた。派遣という働き方を固定化させると批判があった。
昨年には、支給額を抑えるルール強化に野党が反対した年金制度改革関連法の国会審議で安倍晋三首相は「私が述べたことを理解いただかないと何時間やっても一緒だ」と突き放し採決を強行した。
首相は選挙の大勝を踏まえ「今まで以上に謙虚で真摯(しんし)な政権運営に努めていく」と語った。
立憲民主党の枝野幸男代表は選挙期間中「首相が勝てば『残業代ゼロ法案』が必ず国会に出てくる」と警戒感を示した。力任せの国会運営は許されない。野党の批判にも謙虚に耳を傾けるべきだ。
希望の党が労働法制や「高プロ」について態度が不明確なことも気になる。働き方の将来像を早く示してほしい。