ワークルール 君たちを守る盾になる - 東京新聞(2018年1月15日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018011502000154.html
https://megalodon.jp/2018-0115-1056-15/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018011502000154.html

働くときに何か困ったら、役に立つ法律や制度がある。労働法は、経営者から理不尽な扱いを受けたとき労働者の身を守る“盾”になる。もっと知ることで働きやすい職場にできるはずだ。
例えば、こう聞かれて正解を答えられるだろうか。

  • 正社員しか有給休暇は取得できない
  • 経営者はいつでも労働者を解雇できる

いずれも不正解である。有給休暇は学生アルバイトでもパートでも半年以上勤務しているなどの条件を満たせば取得できる。解雇は経営者が三十日前までに予告するか、三十日分以上の平均賃金を払う必要がある。
知らないと学業でアルバイトを休みたいのに休めなかったり、残業代を未払いにされたり、いきなり解雇されるといった理不尽な扱いを受けかねない。
働くときに経営者と労働者が結ぶ労働契約は、そのままでは立場の弱い労働者に不利になりがちだ。そこで働く側を守るために労働基準法をはじめとする労働法が存在する。ワークルールとも呼ぶ。働き過ぎを規制したり、不当な扱いを防止したり、仕事でけがや病気をしたら生活の支援を受けられたりする。
問題は、多くの若者たちがそれを知らないことだ。中学高校生は学校でも地域でも学ぶ場が少ない。アルバイトを始めても、職場で受けた扱いが不当な行為になるということも分からないまま泣き寝入りするような状況は変える必要がある。
超党派の国会議員が昨年十一月、ワークルール教育推進法案をまとめた。若者を使いつぶすブラック企業問題を受け成立を目指している。法案は、国に教育を進める基本方針策定や予算確保を義務付ける。求人情報を得る方法から、労働契約の意味、権利が侵害されたときの対処法、相談窓口の存在などを具体的に学べる場を学校や地域で整えるべきだ。
気になるのは労働法の理解不足は若者に限らないことだ。連合の調査では、会社が残業を命じるには必ず労使が結ばねばならない協定(三六協定)を知らない人が現役世代の四割強いた。残業を可能にする重要なルールだ。知識の普及は幅広く求められる。労働組合が果たす役割だろう。
一般的に職業生活は四十年以上にわたって続く。健康でやりがいを感じる雇用環境が大切なのは言うまでもない。