「金町学園」閉鎖の危機 関東唯一の聴覚障害児入所施設 - 東京新聞(2016年12月31日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201612/CK2016123102000116.html
http://megalodon.jp/2016-1231-1113-55/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201612/CK2016123102000116.html

関東地方で唯一、耳の聞こえない子どもたちが共に暮らす施設「金町学園」(東京都葛飾区)が閉鎖の危機を迎えている。母体の社会福祉法人が二〇一八年三月で撤退する方針を決めたため。全国から集まった子どもたちが手話を使って夢や悩みを語り合ってきた施設。なくしてはいけないと、職員らは自らで新しい施設を作ろうと寄付集めを始めた。 (石原真樹)
JR常磐線金町駅からバスで十分の住宅街に学園はある。ろう学校に通う五〜十八歳の二十五人と、ろう学校の高等部に通う二十歳の二人が暮らす。「公用語」は手話。十一人の職員は全員、手話ができる。そのうち四人は聴覚障害者だ。
もともと、さまざまな事情で親と暮らせなくなった聴覚障害児を受け入れてきた。最近は大学進学や就職を目指し、地方からやってくる学生が増えた。
ただ、これが閉鎖の理由にされた。運営者の社会福祉法人東京愛育苑(葛飾区)の石山裕明・法人本部長は「親からの虐待などを理由にした入所が減った。(困窮者の支援だった)役割は終わった」と説明。学園の跡地は、同法人が力を入れる児童養護や高齢者事業への活用を検討する。
一方、浜崎久美子園長(72)は「手話で存分に話せる集団生活の場は、これから生まれてくる聴覚障害児のためにもなくしてはいけない」と訴えてきた。新施設を建てるため昨年秋、新たな社会福祉法人の設立準備会を結成。寄付金集めに乗り出した。
ろう学校に通いやすい都内に土地を借り、定員三十人、九百平方メートルの施設を整備する計画。四億六千万円の費用を見込む。インターネットで事業への協力を募るクラウドファンディングによって三百五十五万円が集まり、寄付を呼び掛ける動画を制作中だ。
寄付に関する問い合わせは、「聴覚障害児の会」設立準備会=電03(5980)8420=へ。

<障害児入所施設> 障害のある子や学生が日常生活や自立に必要な知識や技術を教わりながら暮らす。障害の種類で分類されていたが、2012年の児童福祉法改正で一元化され、施設が対象とする種類以外の障害のある子らを受け入れることも求められた。「福祉型」と治療も行う「医療型」の2種類がある。「全国盲ろう難聴児施設協議会」によると、主に聴覚障害児を受け入れる福祉型入所施設は全国に8カ所あり、東日本では金町学園と北海道の2カ所。