慰安婦合意1年 一人でも多くに償いを - 東京新聞(2016年12月26日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016122602000127.html
http://archive.is/2016.12.26-003953/http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016122602000127.html

旧日本軍の慰安婦問題の解決を目指し日韓両政府が合意してから、二十八日で一年になる。被害者に対する日本側の拠出金支払いが始まった。韓国政治は混迷するが、粘り強く合意を進めたい。
合意に基づき韓国側が「和解・癒やし財団」を設立し、日本政府が財団に十億円を拠出した。
救済の対象は韓国政府が元慰安婦だと認定した二百四十五人。生存者には一人当たり一億ウォン(約九百七十万円)で医療や介護費用などを想定し、故人の遺族らには約二千万ウォンを渡す。
合意時点での生存者は四十六人で、財団の発表では、七割余の三十四人が拠出金を受け取る意向を示し、二十九人には既に支払いが完了した。
韓国政府当局者によると、受け取った現金の一部を支援者に渡したい、全額を大学生の奨学金に提供したいという人もいる。被害者たちの声が両国民に周知されないのは残念だ。
慰安婦の中でも支援団体と行動を共にする約十人は合意を拒否し、日本政府に法的責任を認め国家賠償をするよう要求している。
支援団体は日韓だけの歴史清算ではなく、戦時下の女性に対する性暴力の問題としてとらえ、国際的な規範となる解決を目指すべきだと主張する。確かに韓国の運動が、一九九〇年代の旧ユーゴ紛争で起きた性暴力の被害者救済に影響を与えた側面はある。
しかし、韓国の元慰安婦たちの平均年齢は約九十歳。この一年間で七人が死去した。日韓の合意に従って一人でも多くの被害者に日本側の拠出金を届け、健在なうちに償いをするのが最も望ましい。
安倍晋三首相は昨年末、「責任を痛感し、心からのおわびと反省の気持ちを表明する」との見解を表明した。金銭支払いですべてが決着するわけではない。日本政府が今後、被害女性に慰労と謝罪を直接伝え、尊厳の回復に取り組むことが重要だ。
朴槿恵大統領は政権内の不正により国会の弾劾訴追を受け、職務停止に追い込まれた。朴政権が推進した日韓合意について、野党側は撤回せよと迫る。
日本側はソウルの大使館前に設置された、慰安婦問題を象徴する少女像の撤去を要求しているが、韓国の混迷で見通しが立たない。
それでも、生存者の多くが日韓合意による解決に応じ、国連はじめ国際社会も評価している。仮に韓国の政権が交代しても、合意を尊重し実行するよう強く望む。