再稼働争点、与野党が激戦 新潟知事選 - 朝日新聞(2016年10月8日)

http://www.asahi.com/articles/DA3S12598064.html
http://megalodon.jp/2016-1008-0925-37/www.asahi.com/articles/DA3S12598064.html

東京電力柏崎刈羽原発の再稼働を最大の争点にした新潟県知事選(16日投開票)は、与野党幹部が応援に入る激戦になっている。当初は推薦候補の戦いを楽観していた自民党は危機感を強め、自主投票にした民進党は埋没。ともに原発に厳しい世論の動向を見誤り、焦っているようだ。

■自民 楽観一転、募る危機感
自民党二階俊博幹事長は7日朝、経団連との懇談会で新潟知事選での支援を求めた。「新潟の選挙は大変やっかい。電力業界などオール日本で対抗していかないといけない」
自民党は先月、前長岡市長で全国市長会長を務めた森民夫氏(67)を公明党とともに推薦した。柏崎刈羽原発の再稼働に慎重姿勢を取る泉田裕彦知事が8月末、知事選からの撤退を表明。再稼働を推進する自民党にとっては「もっけの幸い」(原発推進派議員)。野党の候補擁立が遅れたため、自民党内には楽観論も広がっていた。
だが、民進出身の米山隆一氏(49)が立候補し、共産、社民、生活が推薦。泉田路線の継承を訴え、再稼働への慎重姿勢を前面に打ち出したことで、再稼働が明確に争点となった。自民党独自の調査でも激戦という結果が出て、楽観論は吹き飛ぶ。安倍晋三首相は6日、二階氏らとの会食で、出席者から「電話を入れてもらうなど、役割を果たしてもらうことになります」と要請され、うなずきつつ厳しい情勢を聞いたという。
二階氏は3日、国会内で長島忠美県連会長と会い、応援に入る国会議員の日程と各議員がパイプを持つ団体のリストアップを指示した。自身も12日に新潟入りし、土地改良関連団体などに協力を求める。党幹部は「再稼働のために負けるわけにはいかない」と話す。
だが、7日に県内六つの小選挙区すべてを回った古屋圭司選対委員長が上越市で行った演説では、再稼働の是非に触れるようなくだりはなかった。再稼働に焦点があたるほど不利になると自覚しているからだ。

■野党 共闘、乗れぬ民進埋没
7日夕、新潟駅前で共産の志位和夫委員長、社民の福島瑞穂副党首、生活の小沢一郎代表が選挙カーの上に並び立ち、2千人以上の聴衆を前に、3党が推薦する医師の米山氏への支援を呼びかけた。
志位氏は「最大の争点は再稼働問題だ。米山さんは泉田知事の路線を引き継ぐ」。小沢氏も「米山君を知事に押し上げ、再稼働はもちろん原発廃止まで持っていってほしい」と訴えると、大きな拍手が起きた。
民進は米山氏を次期衆院選新潟5区で公認内定していたが、知事選出馬が決まっても推薦すら出さず、自主投票とした。民進を支持してきた電力総連など連合新潟は森氏を支持しており、党として明確な対応ができていないのが実情。民進の県選出国会議員の事務所には「なぜ米山氏を支援しないのか」との抗議電話もあるという。
そこへ米山氏の善戦が伝えられ、民進の有志議員も個別に応援に入るようになった。7日の志位氏らの演説会では松野頼久氏も登場。脱原発派の近藤昭一副代表ら個別に応援に入った議員は、市民団体から「義勇軍」と呼ばれている。
蓮舫代表と野田佳彦幹事長の新執行部にとって初めての大型選挙だが、動きは鈍い。蓮舫氏は6日の記者会見で「政党対政党の戦いではない」と強調した。原発問題で支持層が割れる民進が主体的に動けないからこそ、米山氏の主張が「再稼働反対」でとがり、争点化した面もある。民進不在のまま盛り上がる知事選の行方次第では、蓮舫執行部にとって求心力低下につながりかねない事態ともいえそうだ。

安倍龍太郎、関根慎一)

■届け出一覧
(届け出順、〈 〉内政党は推薦)

三村誉一(みむらよいち)    70 無新 〈元〉海事協会職員

森民夫(もりたみお)      67 無新 〈元〉長岡市長〈自〉〈公〉

米山隆一(よねやまりゅういち) 49 無新 医師〈共〉〈社〉〈生〉

後藤浩昌(ごとうひろまさ)   55 無新 行政書士