20年五輪に生かす:Rio to Tokyo - 日刊スポーツ(2016年9月19-21日)

リオは「置くだけ」仮設観客席 東京は基礎工事必要 - 日刊スポーツ(2016年9月19日)
http://www.nikkansports.com/general/news/nikkan/1712172.html
http://megalodon.jp/2016-0921-1336-47/www.nikkansports.com/general/news/nikkan/1712172.html

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リオデジャネイロパラリンピックが今日19日、閉会式を迎え、五輪を含めたリオ大会の全日程が終了する。東京大会組織委員会の視察報告も踏まえ「Rio to Tokyo〜20年五輪に生かす〜」と題し、リオから学ぶ東京への課題を3回連載する。初回は「競技会場・インフラ編」。ソフト、ハード両面で来訪者に「圧倒的な五輪感」を植え付けるための課題が浮かび上がった。
卓球や乗馬会場などリオの仮設観客席は、地面に「置いてある」だけの構造だった。地震が少ないとはいえ、安全に観戦できるか不安が拭えなかった。地面が砂浜という不安定なビーチバレー会場も同様だった。
会場整備局の担当者は、リオと同様に鉄骨で仮設席を整備するとしたが「地震、台風への安全性確保のため、柱脚部は最低限、基礎が必要」とした。湾岸地域の場合、強い地盤の支持層まで数十メートルのくいを打つかどうかも検討するという。
敷地が広かったリオでは練習会場が試合会場近くにあり、選手は歓迎した。東京は国や都の体育館などを利用するしかないが、大会中や期間前後は一般客が利用できない不便も生じる。
リオで問題だったのは仮設トイレ。簡易くみ取り式が採用されたが空調設備がなく、臭いがひどかった。真夏に開催される東京では「プレハブトイレが基本となり、空調設置も検討する」(会場整備局)とした。


リオで盗難連発した選手村、本番前に複数テスト必要 - 日刊スポーツ(2016年9月20日)
http://www.nikkansports.com/general/news/nikkan/1712603.html
http://megalodon.jp/2016-0921-1337-48/www.nikkansports.com/general/news/nikkan/1712603.html

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リオデジャネイロパラリンピックの閉会式が19日に行われ、五輪を通じて約1カ月半の祭典が幕を閉じた。今大会から学んだことを4年後の東京大会にどう生かすか。
リオの反省から、選手村の運営には本番前に複数回のテストが必要ということがあぶり出された。ベッドメークや洗濯スタッフの契約雇用が遅れて、訓練や教育が十分にできないまま開幕。盗難事件が連発した。スタッフの出入り口に警察官を増員し、身体検査を実施したが、今度は外に運び出すゴミ箱に選手のスマートフォンを入れて盗み出す手口が横行。最終的にはゴミ箱もひっくり返してチェックした。インフラ面でも水漏れなどが多発した。
東京では、選手村が満員になった状態で電気、水道などを使用するテストを行うなどし、最善を尽くす予定だ。警備要員に余裕のあったリオとは違い、場当たり的に増やせない東京では「セキュリティーカメラを増やす」(選手村担当)などして対処を検討する。


国民置き去り支持なき祭典、貧困層は蚊帳の外 - 日刊スポーツ(2016年9月21日)
http://www.nikkansports.com/general/news/nikkan/1713119.html
http://megalodon.jp/2016-0921-1338-23/www.nikkansports.com/general/news/nikkan/1713119.html

<下>
南米初の開催となったリオデジャネイロ五輪パラリンピックは全日程を終了したが、国民の十分な支持は得られなかった。連載最終回は「かけ離れた指導者と市民の思い」。五輪直前に大統領の汚職疑惑による弾劾決議が行われ、政治家の足の引っ張り合いにより不況は進み、ブラジル国民は冷めていった。東京大会も同様の問題をはらんでいる。
「警察だ! 逃げろ!」。リオ市の観光ビーチ、コパカバーナの露天商が叫ぶと、10人ほどが一目散に逃走した。そんな中、大風呂敷を広げて金メダルのおもちゃ、各国の小旗などを売っていた男性が逃げ遅れ“御用”となった。違法行為ではあるが、貧困層にとって観光客相手に商売することぐらいしか、五輪と関わる機会はなかった。
五輪が政争の具に使われ、国民の熱は下がる一方だった。リオ市内外で「一部の人間がもうけられるだけだ」と怒りの声を上げる市民が多かった。
例えば15競技が行われた五輪公園。敷地の75%が大会後、リオ市から建設会社に譲渡される。リオ五輪組織委担当者によると、譲渡を条件に民間が整備費の一部を負担しているという。
似ている事象が東京都にもある。晴海の選手村予定地、約13万4000平方メートルを129億6000万円で三井不動産レジデンシャル住友商事三菱地所レジデンスなど11社に売却。1平方メートル当たり約9万6000円だ。銀座から3キロ圏内で、同単価は110万円前後と言われており破格。都はさらに約410億円をかけ、防潮堤、上下水道、道路などを整備するまで面倒を見る。事業者は選手村を整備し、大会後は計約5650戸の住宅と商業施設を再整備し、販売する。
豊洲市場問題も含め、不明瞭な税金の使い道が市民の五輪熱を奪う。共同通信の調査でも豊洲問題が解決するなら「五輪計画に影響してもやむを得ない」との回答が74・5%に達した。
怒りの声と同じ数だけ聞いたリオ市民の声がある。「スポーツは大好きだ。会場には行かないがテレビでブラジルを応援する」。サッカー男子でブラジルが優勝した夜、リオは確かに歓喜した。だが市民の心は戻らなかった。今後の「五輪負債」に不安が膨らむ。
政界と財界だけが突っ走っても成功はない。東京も教訓になる。市民の目は一層厳しくなっている。【三須一紀】