首都圏の参院選 新風を吹き込みたい - 東京新聞(2016年7月12日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016071202000136.html
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首都圏での参院選の結果は、自民、公明両党の快勝だった。もっとも、投票率は相変わらず、低水準にとどまった。政治への関心がいまだに回復していない証左だろう。新しい風を吹き込みたい。
参院選での全国の選挙区投票率は54・70%で、過去四番目に低かった。関東の一都六県では、東京と神奈川を除く群馬、栃木、茨城、千葉、埼玉の五選挙区で、それを下回る低調ぶりだった。
論戦の構図をあえて単純化すれば、自民、公明の与党は成長重視の経済政策アベノミクスの加速を、民進、共産などの野党は安倍政権下での憲法改正阻止をそれぞれ殊に強く訴えた。
どちらも重要な争点には違いないが、議論がかみ合うことはなかった。現実的な判断材料を得られないような空中戦に、有権者が興味を失ったとしても仕方ない。
一貫して改憲論議を避けた与党側も、アベノミクスに代わる実効性のある対案を示せなかった野党側も、投票率の低迷をもたらした責任の一端はまぬかれまい。
無党派層を引きつけられなくては、政党の組織力や候補者の知名度がものをいうことになる。
保守王国とされる一人区の群馬と栃木では、野党共闘で支えた候補も、自民党現職の足元にも及ばなかった。だが、時代は移り変わる。地域の課題に即した政策を掲げて挑戦する存在は大切で、投票率を向上させる知恵がほしい。
既成政党の枠組みにとらわれない目新しい動きにも注目したい。
奥田愛基さんを中心とする学生グループSEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動、シールズ)は、野党共闘を実現させた事実上の立役者だった。
東京選挙区では、おおさか維新の会の候補との接戦の末、最後となる六番目の議席を獲得した民進党候補を強力に後押しした。
シールズは、今参院選を区切りに解散する。確かなのは、緩やかに連帯した若い世代の潜在的な力を印象づけたことだ。政治の世界に遠からず、新風が吹き込まれる予感を抱かせる。
さらに、街頭演説に音楽ライブを取り入れた「選挙フェス」で知られるようになった三宅洋平さん。
原発即時停止を唱え、東京選挙区の無所属候補として、九番目に多い二十六万票近くを集めた。落選したが、三年前の参院選の結果と比べて着実に支持を広げた。
多様な価値観の時代だ。既成政党や著名人ばかりでなく、多彩な顔触れの民主主義を目指したい。