(筆洗) いずれも作詞は亡くなった永六輔さん - 東京新聞(2016年7月12日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016071202000135.html
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夢であいましょう」「黒い花びら」「上を向いて歩こう」「こんにちは赤ちゃん」。曲名を並べ、不思議だなあと首をひねる。なぜか曲名だけで次の歌詞が自然と出てくる。
「黒い花びら」の曲名を見れば「静かに散った」と、「見上げてごらん夜の星を」と見れば「小さな星の」と浮かぶ。どんな仕掛けか。もう一度、曲名を見る。曲の歌い出しがそのまま曲名になっていることに気がつく。
直球にして明快な方法である。覚えやすさの点で優しさも感じる。書いたのはそういう方だったに違いない。いずれも作詞は亡くなった永六輔さん。往年の「六、八(作曲家の中村八大さん)、九(歌手の坂本九さん)」の間を埋める、ちゃめっ気か七日に逝く。八十三歳。
放送作家に作詞家、タレント、文筆家。マルチな活躍の一方、絶えず権力を見張る側にいた方である。安保反対にわく一九六〇年、「デモと番組とどっちが大切なんだ」と聞かれ「デモですね」と台本を書いていた番組を降板。「上を向いて歩こう」には安保闘争の挫折の悲しみを込めた。
五四年ごろか、戦力を持たぬはずの日本に戦力があると皮肉るコントをNHKラジオの娯楽番組に書いている。「いないいないばあっ!自衛隊
選挙に勝つため不利な争点を隠す「いないいないばあっ!改憲」の時代に直球、明快のガンコ者との別れが何とも心もとない。