http://mainichi.jp/articles/20160711/ddm/001/070/193000c
http://megalodon.jp/2016-0711-2113-34/mainichi.jp/articles/20160711/ddm/001/070/193000c
有権者は選挙で議員や政党を選ぶだけではない。複数の政党が獲得議席数を競う現代の民主政治では、有権者の投票はそれら政党間の関係も選択することになる。2大政党制や1党優位、多党制といった「政党システム」がそこで選ばれる。
戦後10年を経て保守が合同した自民党と、左右統一した社会党の対立はその議席数の比率から「1と1/2政党制」といわれた。この政党システムは社会主義色の強い革新政権誕生を阻む一方で、保守政権には改憲に必要な3分の2以上の議席は与えないものだった。
保守に政権を委ねながら、戦前回帰の色を帯びる改憲は許さなかった当時の日本国民の「集合意思」である。今や保革の対立軸も過去のものとなり、その後の政権交代も経験した日本政治だ。なのにまたもや「3分の2」をめぐって緊張した政党システム選択である。
かねて改憲に意欲を見せながら、いざ発議できる議席数のかかった参院選では憲法を争点から外した安倍晋三(あべしんぞう)首相だ。投票の結果は安倍政権下の改憲を是とする勢力が3分の2を占めることになった。はて、それは首相のめざす改憲を支持する集合意思といえるのか。
すでに改憲自体を拒否する政党は少数派だった近年の日本である。そこに保革対立時代のような緊張がもたらされたのは、戦後体制からの脱却を説く首相が自民党結党当初の党是の改憲を説き、今どき人権条項に制約を加えるような党改憲案が用意されていたからだ。
連立与党の圧倒的優位は少子高齢社会の難所に臨む政権の貴重な政治的資源である。半世紀も前の政治対立をよみがえらせる逆噴射で消尽しないよう願う。