◆岩城さん「力不足」
「すべて私の力不足。ご期待に沿えず申し訳ない」。与野党の現職二人が激突した福島選挙区では、自民で法相の岩城光英さん(66)が民進の増子輝彦さん(68)に敗れ、閣僚が落選した。岩城さんは、福島市内の事務所で陳謝を繰り返した。
午後十時二十分ごろ、テレビが増子さんの当選確実を報じると、事務所に集まった支持者らは静まりかえった。岩城さんは壇上で「ただただ申し訳ない気持ちでいっぱい」と目を赤くして語り、頭を下げた。
選挙戦で、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの復興を与党として進めてきたと強調し「私たちには復興を加速させる大きな課題がある。これからも与党主導で尽力いただきたい」と言葉を振り絞った。今後の政治活動については「全くの白紙」と述べるにとどまった。◇
東日本大震災で大きな被害が出た岩手、宮城でも自民党候補が敗れた。震災から五年余り。復旧・復興策を含む政府、与党の取り組みに被災者らが厳しい審判を下した形だ。
◆島尻さん「痛切に残念」
「新基地を押し付けようとする安倍政権への怒りが広がった」。米軍属が起訴された女性暴行殺害事件を機に反基地感情が高まった沖縄選挙区。米軍普天間(ふてんま)飛行場(宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古(へのこ)移設に反対を掲げ、沖縄北方担当相で自民党現職の島尻安伊子(あいこ)さん(51)に圧勝した無所属新人の伊波洋一(いはよういち)さん(64)は真剣な表情で語った。
那覇市の選挙事務所で当選確実を知った伊波さんは、自身を支援する翁長雄志(おながたけし)知事とがっちり握手を交わした。
マイクを前に「辺野古断念を政府に求めていく」と力強く宣言。拍手と指笛が響く中、約百人の支持者らと沖縄伝統の手踊り「カチャーシー」を舞って、喜びを分かち合った。
伊波さんの勝利で、辺野古反対派が衆参両院の県内選挙区を独占し、容認派の自民は議席を失った。万歳の音頭を取った翁長知事も「沖縄の民意が示された。新辺野古基地は絶対に造らせない」と気勢を上げた。
一方、事務所で待機していた島尻さんは落胆した様子で唇をかみしめ、目を潤ませた。選挙戦では経済振興を中心に訴えた。約六十人の支援者を前に「お力添えに応えられなかった。痛切に残念だ」と深々と頭を下げた。
投票した有権者には沖縄が置かれた現状に複雑な思いが交錯した。うるま市の主婦幸地(こうち)明美さん(64)は女性暴行殺害事件に「いたたまれない。基地をなくしてほしい」。
一方、宜野湾市の専門学校生砂川健太さん(19)は「子どもの貧困など生活面に重点を置いてほしい」と話していた。