横浜・家族2人殺害 逆送の少年、家裁移送 横浜地裁決定 裁判員裁判、殺人で初 - 毎日新聞(2016年6月24日)

http://mainichi.jp/articles/20160624/ddm/041/040/172000c

横浜市戸塚区の自宅で母親(当時50歳)と祖母(当時81歳)を殺害したとして殺人罪に問われた少年(16)=事件当時15歳=の裁判員裁判で、横浜地裁は23日、少年を横浜家裁に移送する決定を出した。近藤宏子裁判長は「思考や感情、行動様式が未発達」と指摘。刑務所での服役よりも「時間や人手を十分にかけた少年院で教育を受ける方が更生に効果的」と述べた。
最高裁によると、2009年に始まった裁判員裁判で、今年4月末までに未成年者を家裁に移送した決定は7件あったが、殺人罪では初めて。
検察側は懲役10年以上15年以下の不定期刑を求刑。弁護側は少年院送致などの保護処分を求めていた。
決定は、事件の残忍さや、犠牲者が2人という結果の重大性を踏まえ、「保護処分が許容されるか、ためらいを感じることは否定できない」とした。一方で、精神鑑定を行った医師が「他者とのコミュニケーションに困難がある。保護的な生活環境の中で対人関係の構築や共感性を育成する働きかけが必要だ」とした鑑定結果を採用し、事件に少年の成育歴などが影響したとした。
公判で動機について「話すものが存在しない」などと述べた少年の言動も検討した上で、「少年1人に全ての責任を負わせることはできない。少年院での矯正教育で重大犯罪の責任を自覚させ、二度と犯罪を行わないよう更生を図らせることが相当」と結論づけた。
決定によると、少年は高校1年だった2015年5月18日、包丁で祖母と母親の胸や背中を多数回突き刺し、2人を失血死させた。少年は事件後に自首し、横浜家裁が同年8月、検察官送致(逆送)し、起訴された。【藤沢美由紀、島田信幸】
「立ち直り願う」 裁判員が会見
横浜地裁の決定後、審理した裁判員6人全員と補充裁判員2人が記者会見した。「少年院で事件の重みに気づいてほしい」「大人の力を借りて更生し社会に出てほしい」などと立ち直りを願う言葉が続いた。
40代の男性は「大きな事件だと認識しているが、精神鑑定で少年は事件と向き合えていないと説明があり、少年の態度や話す内容でもそれが感じられた。決定は適切だと思う」と振り返った。20歳の女性も「公判で明らかになったことからすれば適切な判断だと思った」とうなずいた。
決定が指摘した少年の未熟さをどう捉えるかを悩んだ裁判員も。別の40代の男性は「少年の受け答えを見て、どう彼を生かしたらいいかを考えるのは難しかった」と明かした。【藤沢美由紀】