安保法制下の日本に 関連法が施行 - 東京新聞(2016年3月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201603/CK2016032902000113.html
http://megalodon.jp/2016-0329-0910-49/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201603/CK2016032902000113.html

◆苦悩する自衛官
「与えられた任務をこなすだけです」。三月上旬、名古屋市内で自衛隊入隊予定者の激励会があった。安全保障関連法について聞くと、自衛官の卵たちは前向きな言葉を連ねた。同様に答える現役自衛官も多いが、本音は単純ではない。
関東に勤務する五十代の陸上自衛官は、海外派遣に賛同するインターネット上の過激な書き込みには「現実が分かってない」と首をかしげる。一方で「戦争法」という表現も「違う」と思う。
「海外で銃を構える自分が想像できない」という。入隊時から仕事は「国を守ること」だと自らに言い聞かせてきた。「給与・手当の問題、装備の充実を考慮すると、とんでもない額のお金が必要になるはず。こうした観点から安保法を考える人が少ないのは不思議です。その負担を強いられるのは国民なのに」
航空自衛隊の中堅幹部によると、部隊の若い隊員の間では「海外に行けと言われれば行くしかない。今さら自衛隊は辞められない」「後方支援部隊までが海外に行くなら、日本も本格的に戦争に巻き込まれるな」という言葉が交わされるという。幹部は「辞められないのは家庭があるから。本音は『海外は危険だから行きたくない』だ」と説明する。自身も「幹部自衛官だから『行きたくない』とは言えないが、射撃能力や体力が基準に満たない隊員も少なくない。海外に行けば間違いなく死者が出る」と懸念を隠さない。
中部地方の若手自衛官は、不安を口にする隊員に「死ぬ覚悟はないのか」と同僚が怒りをぶつけるのを見た。
「命令されれば『職業軍人』として海外に行く。服務宣誓しているのだから当然」と言い切った後で、不安を明かした。「敵から撃たれる時のことを想像すると冷静にいられるのか…。銃を撃つ時も覚悟が必要になる。公には言えないが、はっきり言って怖い」