<どう向き合う少年犯罪(4)> 子どもと地域 出会いを:神奈川 - 東京新聞(2016年2月7日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201602/CK2016020702000153.html
http://megalodon.jp/2016-0208-1104-07/www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201602/CK2016020702000153.html

◆「寺子屋」活動で触れ合う 宮越隆夫さん(68)
川崎の中一殺害事件のような悲劇を防ぐために、地域は何ができるのか。特効薬はないと思っている。子どもたちに寄り添う地域を目指し、愚直にたくさんのことを続けていくしかない。
例えば、川崎区の市立臨港中学校は一九九〇年代前半、荒れていた。校内暴力や事件が繰り返し起きて、新聞にも載った。
その名残が少なくない九八年、PTAや町内会、学校の先生などで中学校区ごとにつくる「地域教育会議」が臨港中の学区にもできて、事務局長になった。最初に取り組んだのが「地域と子どものいい出会いの場をつくる」こと。
まず中学生に祭りのみこしを担いでもらった。担ぎ手が少ない中、やんちゃな子も歓迎された。怒られてばかりの子が必要とされて褒められた。夏休みには商店などで体験学習をしてもらった。「中学生が来ると明るくなるし、よく働いてくれる」と評判になった。
すると、夏休みに公園で爆竹や花火をしたり、たばこを吸っていた子が減った。学校への苦情も止まった。つまり、子どもがやりがいのある楽しいステージをたくさんつくれば、悪いことをする気持ちは小さくなる。そこにすぐ来ない子だって、同年代の子が楽しそうにやっていたら、のぞきに来る。だから続けることが大切だ。今も体験学習は続いているし、東日本大震災の被災地へのボランティアにも行くなど社会と関わる活動が広がっている。
私たちの地域では一昨年から、小学生らを対象に「地域の寺子屋」活動をしている。住民らが放課後の教室で勉強を教えたり、休日には多摩川の干潟探検などいろんな体験の場を用意したりする。今の小学生が中学生になるころ、一人一人が自分の考えをしっかり持って生きていく子になってくれればいい。
今の川崎の街は、緑や遊び場が少なく、子どもにとって生きづらいのかもしれない。マンションがどんどん建って人口が増え、地域のつながりが薄くなっている。だからこそ都市に生きる子どもたちが生き生きできる舞台を用意したい。自分の存在が認められて、非行なんかしなくても楽しいよと思える地域にしたい。
中学校の卒業式で、ある生徒が言った言葉が忘れられない。「地域は私たちにとって、ひとつの大きな家です」。これからもそう言ってもらえるように頑張りたい。 (聞き手・横井武昭)
=おわり
<みやこし・たかお> 1947年新潟県生まれ、川崎市川崎区在住。3人の娘を川崎で育てた。91年、市立渡田小学校のPTA会長。98年から臨港中学校区地域教育会議の事務局長となり、住民らと青少年の地域での活動支援や教育に取り組んでいる。川崎区地域教育会議の副議長も務める。本業は土木建設業。