<どう向き合う少年犯罪(3)> ひとり親 孤立させない:神奈川 - 東京新聞(2016年2月6日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201602/CK2016020602000146.html
http://megalodon.jp/2016-0208-1100-59/www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201602/CK2016020602000146.html

NPO法人リトルワンズ代表・小山訓久さん(39)
私たちのNPO法人は、ひとり親家庭の支援や子どもの貧困問題に取り組んでいるが、今回の川崎中一殺害事件では、子どもを持つお母さんなどからさまざまな声が寄せられた。
シングルマザーの八割が働いていると言われ、この割合は先進国でも高い。ただ非正規で働く人も多く、仕事を二つ三つ掛け持ちしている人もいる。子どものために一生懸命働けば働くほど、今度は子どもと会う時間が短くなる。シングルマザーは一日四十五分ほどしか子どもと接する時間がないというデータもある。
仕事に忙しく、職場と家の往復で、行政や地域の目が届かないケースがある。生活や子育てに悩みがあっても、相談する相手も少ない。行政に相談に行くにも平日になかなか休めず、どこの窓口か分かりにくくてハードルが高いと感じる人もいる。
そうした家庭や親を孤立させてはいけない。役割分担が大切で、行政が届かない支援は、私たちのように経験やスピードのある民間団体を活用してほしい。
私たちがケアしているシングルマザーは現在、東京都内を中心に約千三百人いる。「これからの生活が不安」「どうしていいか分からない」などの相談をメールで受け付け、先輩のシングルマザーがボランティアで対応する。「お金がない」などの相談は私たちスタッフが応じる。子どもがいる家庭への支援はのんびりしていられない。ネットであれば早く対応ができる。
空き家を利用した住宅支援や就労支援のほか、毎月の交流会やイベントなどを開いて、生活に必要な情報を提供する。お母さん方のネットワークができ、家の外にも味方がいることを感じてもらえる。
川崎の事件を機に、家庭や地域や行政のあり方を見つめ直そうという動きが出てきたのはとても大事。誰かのせいにして非難するのは簡単だが、そうではない。ひとり親や貧困の問題はいろんな原因が絡み、とても複雑で重層的だ。みんなが「自分は何ができるのか」を考え、とにかく悩む親や家庭を「独り」にさせないことが大切だと思う。 
(聞き手・横井武昭)
<こやま・くにひさ> 1977年、東京都生まれ。オレゴン大学心理学部卒。テレビ番組制作などを経て、2008年にひとり親支援の団体を立ち上げ、10年にNPO法人リトルワンズを設立した。現在は、同法人代表理事で、本業はプランナー。
問い合わせは、同法人のメール(info@npolittleones.com)へ。