バンドン演説 首相70年談話にどうつなげる - 読売新聞(2015年4月23日)

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「演説」を「談話」にどうつなげていくのか。安倍首相の戦略的な取り組みが求められよう。
新興独立国が第三世界の連帯をアピールしたアジア・アフリカ会議バンドン会議)の60周年記念首脳会議がインドネシアで開かれた。
安倍首相は演説で、アジア・アフリカ諸国を「成長のパートナー」と呼び、5年間で35万人の人材育成を支援する方針を表明した。
相手国の自主性を重んじる戦後日本の援助外交は高く評価されている。成長が著しい各国への投資や輸出の拡大は、安倍政権の成長戦略にも資する。民間とも連携し、積極的に進めたい。
首相は地域の現状に関し、「強い者が弱い者を力で振り回すことは、断じてあってはならない」と語った。南シナ海岩礁埋め立てを進める中国が念頭にある。
海洋秩序の維持に向け、「法の支配」を重視する共通認識を国際社会に広げることが重要だ。
物足りなかったのは、首相の歴史認識への言及である。約6分間の演説とはいえ、侵略の否定などバンドン会議の原則に触れたものの、先の大戦については「深い反省」を示すにとどめた。
前回の50周年首脳会議では、当時の小泉首相が過去の植民地支配と侵略を認め、「痛切なる反省と心からのお詫わび」を明言した。この表現を、約4か月後の戦後60年談話にも反映させた。
安倍首相は今夏、戦後70年談話を発表する。日本が過去の反省を踏まえ、世界の平和と繁栄にどんな役割を担うのか。談話では「深い反省」の中身が問われよう。
首相は来週、米国を公式訪問し、6月に先進7か国首脳会議に出席する。7月には、70年談話に関する有識者懇談会の報告書がまとまる。関係国とも連携しつつ、適切な政治判断を下す必要がある。
演説後、首相は中国の習近平国家主席と会談し、戦略的互恵関係を推進する方針で一致した。
昨年11月に続き、両首脳が意見を交わした意義は小さくない。
習氏は、「歴史問題は中日関係の重大な原則問題だ。歴史を直視する前向きなシグナルを出してほしい」と注文したという。首相は、歴史認識に関する歴代内閣の立場を引き継ぐと説明した。
歴史認識を巡る日中間の溝は深い。中国主導のアジアインフラ投資銀行尖閣諸島周辺での中国の領海侵入など、懸案も多い。
過去の問題を乗り越え、未来志向の関係を築くには、日中双方が歩み寄る努力が欠かせない。