過労死防止大綱 働く人を守る対策急げ-東京新聞(2015年4月22日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015042202000160.html
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厚生労働省は過労死を防ぐための対策をまとめた過労死防止対策大綱の骨子案を公表した。過労死や過労自殺、それにつながる長時間労働の実態を明らかにし、効果的な対策を盛り込むべきだ。
「息子は二十七歳の若さでなぜ、死ななければならなかったのでしょうか」。全国過労死を考える家族の会兵庫代表、西垣迪世(みちよ)さんは厚労省の協議会で訴えた。
西垣さんの一人息子は、IT会社でシステムエンジニアとして働いていた。一カ月の時間外労働が百五十時間を超えることもあり、終業時間が午前零時を越える日が一カ月の半分以上という月もあったという。うつ病を発症し、休職、復職を繰り返したが、完治していないのに朝までの勤務を強いられるなどし、病状は悪化。治療薬を過量服用し、入社四年目で亡くなった。
ブログには「働き過ぎです。このまま生きていくことは、死ぬよりつらい」とあった。
過労死は後を絶たない。
脳・心臓疾患で労災申請したのは二〇一三年度で七百八十四人、うつ病などの精神疾患は過去最多の千四百九人だった。脳・心臓疾患で亡くなったのは百三十三人。精神疾患による自殺、自殺未遂は六十三人だった。企業との和解や泣き寝入りも多く、数字は「氷山の一角」と専門家は指摘する。
大綱は過労死を防止することは「国の責務」とした過労死防止対策推進法に基づくもの。骨子案は実態解明の調査研究を進めることや、企業などへの啓発活動を実施することを盛り込んだが、さらに踏み込んだ対策が必要だ。
まずは、過労死の大きな原因である長時間労働を抑制することが急務だ。労働基準法は、労働時間は週四十時間を超えてはならないと明記するが、労使協定を結べば際限なく働かせることができる。
フランス、ドイツなどでは、これ以上働かせてはいけないという総労働時間の罰則付き上限規制を設けている。加えて、勤務終了から開始まで連続十一時間以上の休息時間を取らなければいけないという「インターバル規制」もある。
こうした厳しい制限を、日本も導入するべきではないか。
労働問題に取り組む日本労働弁護団は、総労働時間の上限、週四十八時間、時間外労働の上限、年二百二十時間と法律で定め、罰則規定を盛り込むことを提言する。
働く人の命と健康を守る、実効性ある対策が急がれる。