川口祖父母殺害:少年に懲役15年「母親が不適切な養育」-毎日新聞(2014年12月25日)

http://sp.mainichi.jp/m/news.html?cid=20141226k0000m040112000c&inb=mo
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さいたま地裁判決、「居所不明児」として過酷な環境に言及
埼玉県川口市で今年3月、祖父母を殺害し金銭を奪ったとして強盗殺人罪などに問われた事件当時17歳の少年(18)の裁判員裁判の判決で、さいたま地裁は25日、懲役15年(求刑・無期懲役)を言い渡した。栗原正史裁判長は「原則通り刑事罰を科するのが相当」としつつ、「母親の養育や犯行前の言動に大きく左右された点を十分に考慮すべきだ」と指摘した。

判決によると、少年は母親(42)=強盗罪などで服役中=から「殺してでも」金を借りてくるよう執拗(しつよう)に言われ、同月26日に祖父母を訪問。借金を断られたため、独自の判断で延長コードや包丁で2人を殺害。母親と共謀し、現金8万円とキャッシュカード4枚を盗むなどした。

公判で少年は殺害行為を認めながら「母親の指示だった」と主張した。判決は「母親が『殺してでも借りてこい』と口にしたことは否定できないが、借金を確実にさせるための言葉にすぎない」とし、母親の指示はなかったと判断した。

その上で「祖父母の殺害を思いとどまることも十分にできたはず」と指摘。「落ち度のない2人の被害者を殺害し、金銭も奪っており、検察側の無期懲役の求刑もそれなりに理由がある」とした。

一方で、少年が小学校4年生から学校に通わず、「居所不明児」として過酷な環境に育ったことについて「周囲の者が被告の劣悪な環境を改善できなかったことは残念」と言及。母親の極めて不適切な養育や、少年が不遇な生活を強いられたことが犯行を引き起こしたとした。

弁護側は少年院送致などの保護処分を求めていたが「社会的に許される特段の事情があると認められない」と退けた。

少年法の規定により、事件当時18歳未満の少年に死刑を科すことはできないため、最高刑は無期懲役になる。一方、懲役15年は事件当時の同法に基づいて少年に科せる有期懲役の上限だった。【山寺香、木村敦彦】

◇母親ら周りの大人の責任が大きい
少年犯罪被害当事者の会代表・武るり子さんの話 裁判官や裁判員の方たちが悩んで出した判決なので、量刑について語るのは難しい。ただ、複雑な家庭環境が背景にある今回のケースは、母親ら周りの大人の責任が大きいと思う。ただ、それと少年が犯した罪の責任は別問題で、祖父母の命を奪ったのは重大な犯罪だ。今後は再犯を防止する教育などの仕組みづくりが必要だと思う。

◇少年に母親の言葉がどう影響したかの説明が不十分
虐待問題に詳しい平湯真人弁護士の話 裁判所は事件の経過を熱心に知ろうとしたようではあるが、少年の行為に母親の虐待がどう影響したかの説明が不十分だ。判決は「殺してでも借りてこい」は少年を追い込むための言葉に過ぎないとしたが、子どもにとっては犯行を決意せざるを得ない力を持つとみるべきだし、動機ももっと丁寧に解明する必要がある。母の心理的虐待と事件との関係をはっきりさせないと、せっかくの反省が更生につながらない。