祖父母殺害 懲役15年 18歳 母に追い詰められ-東京新聞(2014年12月26日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014122602000124.html
http://megalodon.jp/2014-1226-1149-21/www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014122602000124.html

埼玉県川口市のアパートで三月、無職小沢正明さん=当時(73)=と妻千枝子さん=同(77)=を刺殺して現金を奪うなどしたとして、強盗殺人などの罪に問われた孫の少年(18)の裁判員裁判で、さいたま地裁(栗原正史裁判長)は二十五日、懲役十五年(求刑・無期懲役)の判決を言い渡した。弁護側は即日控訴した。

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◆小学校も通えず、野宿
「君がおじいさん、おばあさんを手にかけてしまったのは、お母さんにも原因がある」。栗原裁判長は判決を言い渡した後、少年にこう語りかけた。公判では不遇な生活が明らかになり、栗原裁判長が証人に「周りに大人がそろっていたのに、誰かが(少年を)助けられなかったのか」と尋ねる一幕もあった。

判決や公判での弁護側の主張などによると、少年は両親とさいたま市内に住んでいたが、小学校入学後に父親は別居。母親は小学五年のときに一時失踪した。少年は約一カ月間、母親の知人という男性と二人暮らしを余儀なくされ、公判では「自分は捨てられたと思った」と述べた。

母親はその後、別の男性と静岡県内に住み、少年も同居した。学校は小学五年生までしか通わなかった。母親はこの男性と再婚したが、お金がある時はホテルに、なければ公園で寝泊まりする生活に。疲れて立ったまま眠りかけた時には義父に殴られ、前歯を四本失ったと公判で話した。

住む場所は転々と変わり、生活費に困った母親は少年に親戚から借金をするように求めた。少年は中学校に通っていないが、実父のおばに「野球部に入ったので道具を買う」などと借金を重ねた。おばは公判で「四年間で四百万〜五百万円を振り込んだ」と証言した。

義父と母親との間に妹が生まれたが、義父は二〇一二年冬に失踪。当時十六歳だった少年は埼玉県の塗装会社で働き始めた。少年は祖父母を殺害するまで給料の前借りを繰り返した。

判決理由では「祖父母の殺害を思いとどまることはできた」と指摘する一方で、「母親の極めて不適切な養育や不遇な生活を強いられるなかで、母親に逆らわない性格となった。母親に強い言葉で祖父母からの借金を迫られ、追い詰められて犯行に及んだ」と述べた。

判決後に記者会見した松山馨(けい)弁護士によると、少年は判決後、「自分みたいな存在をつくっちゃだめだ」と語ったという。 (谷岡聖史)