(政界地獄耳)自民党に良心は存在しないのか - 日刊スポーツ(2018年12月11日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201812110000143.html
http://archive.today/2018.12.11-005727/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201812110000143.html

まっとうな政治という言葉がむなしい。まっとうとは王道を行くということに他ならないだろう。保守の定義はさまざまだ。その議論は他に譲るとしても、日本では自民党の保守政治が戦後の大半を担ってきた。しかし、あまりにも自民党がだらしない。今までは政治とカネの問題などスキャンダルで信用を落とすことがあっても、党の中には清廉な議員や穏健な保守勢力が出番を待ち、控えていた。

★しかし、保守本流といわれた宏池会は安倍政権にのみ込まれ、議会の子といわれた元首相・三木武夫を輩出した三木派は巡り巡って元参院副議長・山東昭子山東派になり、今は副総理兼財務相麻生太郎麻生派に吸収された。自民党の良心は既に存在しないのだろうか。先の自民党総裁選で首相・安倍晋三に立ち向かった元党幹事長・石破茂も鳴りを潜める。「派閥は総裁選で健闘したといってもそこまで。その後、派閥に入りたいという声もなければ、石破の賞味期限切れとばかり派閥離脱を画策する者もいると聞く」(党中堅議員)。

★7日の参院本会議では自由党議員・森裕子が制限時間を超えて趣旨説明した中、「ルールを破っているのは安倍内閣だ。ルールを守れと言うなら安倍首相に言え。本当は私も反対だと(自民党議員が)言ってくる。言ってきた人、いるでしょう。だったら反対しなさいよ。今までの自民党なら、こんな法案を出させるようなことはしなかった。どうしちゃったんだ自民党」と叫んだ。また8日早朝の参院本会議で同党共同代表・山本太郎入管難民法改正の投票の際「賛成する者は2度と保守と名乗るな。保守と名乗るな。官邸の下請け、経団連の下請け、竹中平蔵の下請け、この国に生きる人々を低賃金競争に巻き込むのか。世界中の低賃金競争に恥を知れ、2度と保守と名乗るな、保身と名乗れ、保身だ」と叫んだ。まっとうな保守政治家は野党にいた。(K)※敬称略

国会の空洞化が加速 政権の暴走が止まらない - 朝日新聞(2018年12月11日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13805865.html
http://archive.today/2018.12.10-222645/https://www.asahi.com/articles/DA3S13805865.html

巨大与党に支えられた安倍政権の横暴がまた繰り返された。
自民党総裁選で3選された安倍首相が初めて臨んだ臨時国会が閉幕した。従来にもまして議論をないがしろにし、国会を下請け機関のように扱う政権の独善的な体質が際だった。

■熟議よりも日程優先

先の通常国会では、森友・加計問題をはじめとする政府の不祥事に対し、国会が十分なチェック機能を果たせなかった。大島理森衆院議長が「深刻な自省と改善」を求める異例の談話を発表したが、事態は改善されるどころか、深刻さを増したとみざるを得ない。その重い責任は、首相と与党にある。

外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法の改正は、社会のありようにかかわる大きな政策転換だ。より幅広い国民的合意が求められるにもかかわらず、政府・与党は野党の理解を得る努力を、はなから放棄していたというほかない。
審議の土台となる外国人技能実習生にかかわる資料を出し渋り、重要事項の多くは法成立後の省令などに委ねる。質問されても「検討中」を繰り返す。
来年4月の施行に向け、熟議よりも、48日間という短い会期内での成立にこだわった。審議を短縮するため、与党が質問時間を放棄する場面もあった。
広範にわたる課題を抱え、政府が全体として取り組むべきテーマであるのに、首相が前面に立つことはなく、答弁はほとんど法相任せだった。
驚いたのが、3年間で技能実習生69人が凍死、溺死(できし)、自殺などで死亡したとする政府資料に対する見解を問われた時の首相の発言だ。「初めてうかがった。私は答えようがない」。外国人労働者を人として受け入れようという当たり前の感覚が欠落しているのではないか。
論戦の過程で明らかになった不安や課題に丁寧に向き合うことなく、成立ありきで突き進んだのは水道法改正も同じだろう。沖縄県の反対にもかかわらず、名護市辺野古の海に土砂を投入しようとしている米軍普天間飛行場の移設問題にも重なる強権的な姿勢は、断じて認めるわけにはいかない。

■信頼回復には程遠い

首相は自民党総裁選で、地方の厳しい声にさらされた。しかし、政治手法に対する反省にはつながらなかったようだ。
いまだ国民の多くが首相の説明に納得していない森友・加計問題の解明は、今国会で一向に進まなかった。論戦のテーマになることが少なかったという事情はあろうが、政治への信頼を回復するには、首相が自ら進んで説明を尽くす責務がある。
さらに信頼を損ねる閣僚の言動も相次いだ。
組織的な公文書改ざんの政治責任をとらずに留任した麻生太郎副総理兼財務相は、相変わらず問題発言を繰り返している。不摂生で病気になった人の医療費を負担するのは「あほらしい」という知人の言葉を紹介し、「いいことを言う」と述べたのは、健康な人も含めて医療費を分かち合う社会保険制度の基本への無理解を示すものだ。
国税庁への口利き疑惑に加え、政治資金収支報告書を2カ月で4度も訂正した片山さつき地方創生相。サイバーセキュリティーを担当しながらパソコンを使ったことがなく、海外メディアから驚きをもって報じられた桜田義孝五輪相。
閣僚の資質をめぐる議論に国会論戦が費やされる事態を招いた。首相の任命責任は厳しく問われねばならない。

■頓挫した「改憲論議

政策面でも、社会保障制度の立て直しや財政再建など、先送りしてきた難題に向き合う覚悟はうかがえなかった。負担と給付をめぐる議論は早々に封印、消費増税対策として、「キャッシュレス決済」を対象にしたポイント還元や「プレミアム商品券」を打ち出すなど、来夏の参院選をにらんだ野放図なバラマキばかりが目立った。
与野党の協調をないがしろにする政権のもと、首相が意欲を示した改憲論議が進まなかったのは、自業自得だろう。
与党は、与野党合意を前提とする慣例を破って、会長の職権で衆院憲法審査会の開催に踏み切った。立憲民主党など野党の猛反発を招き、今国会では実質的な審議は行われなかった。
9条への自衛隊明記など、自民党のめざす「改憲4項目」を審査会で説明し、改憲の発議に向けた歯車を回す――。そんな首相シナリオは崩れた。
改憲をめぐる世論は熟しているとは言い難く、他に優先すべき政策課題も多い。来年は統一地方選参院選に加え、天皇の代替わりも控える。首相や自民党の思いばかりが先に立った改憲論議だが、一度立ち止まって冷静になってはどうか。
今月末で第2次安倍政権は発足6年を迎える。長期政権のおごりや弊害に向き合わず、このまま民主主義の土台を傷つけ続けることは許されない。

ゴーン氏起訴 検察は世界に説明を - 東京新聞(2018年12月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018121102000138.html
https://megalodon.jp/2018-1211-0934-10/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018121102000138.html

日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者が起訴・再逮捕された。退任後に受け取る巨額の報酬を巡り不正があったとされる。世界を駆け巡るニュースだけに検察側は詳細な説明が求められよう。
世界を驚かした経済事件だ。有価証券報告書に記載すべき報酬が二〇一五年期までの五年間で約五十億円少なかった−これがゴーン被告の起訴事実である。再逮捕の容疑は一八年期までの三年間でも約四十億円を過少記載した疑いだ。
いずれもゴーン被告が日産自動車を退任後に受け取る性格の報酬だった。東京地検はこの退任後の報酬をめぐり、ゴーン被告のサインのある書面を押収しており、支払いは確定事項だと考えている。
その一方でゴーン被告は「退任後の支払いは確定していない」と否認しているようだ。両者の間には認識の溝がある。検察がどう証明するのか、ゴーン被告側がどう防御するのか、冷静に見守る必要がある。
もっとも複雑な背景事情があるとの見方も出ている。フランスのルノーと提携関係がある日産は、既にフランス政府の雇用・産業政策に組み込まれている。その主導権争いが絡むのではと…。日産の電気自動車技術の行方が絡んでいるのでは、との見立てもある。
東京地検が司法取引を使ったせいもあろう。今年六月から施行された新ルールで、他人の犯罪の解明に協力すれば検察官から不起訴などの見返りを得られる。
日産の誰との司法取引だったのか。どんな内容だったのか。国民や各国のメディアなどに伏せられているため、この事件の意味を誰もがつかみかねている。さまざまな謎めいた風評も立つ。
検察は従来「公判で明らかにする」とのみ語ってきた。そのような沈黙の姿勢でよいのか。これだけ国際的な論評を受ける事件では、むしろ積極的に検察の意図を語るべきではないのか。
逮捕されても弁護人の立ち会いが認められない、と奇異の目で海外で受け止められた。拘置所の小部屋に閉じ込められるのは拷問だという指摘さえある。
被疑事実の時期をずらしただけで、勾留期間は最長で計四十日にもなる。否認すれば、起訴後の勾留ももっと長くなるかもしれない。この「人質司法」と呼ばれる日本独自の刑事司法の現状に世界から批判もあろう。世の中は世界水準で動く時代だ。この事件を機に改めてほしい問題である。

元駐日仏大使「国際社会で日本が信頼失う事態に」 ゴーン前会長逮捕に強い不快感 - 毎日新聞(2018年12月10日)

https://mainichi.jp/articles/20181210/k00/00m/030/114000c
http://archive.today/2018.12.10-145634/https://mainichi.jp/articles/20181210/k00/00m/030/114000c

【パリ三沢耕平】フィリップ・フォール元駐日フランス大使(68)がパリ市内で毎日新聞の取材に応じ、日産自動車前会長のカルロス・ゴーン容疑者の逮捕に強い不快感を示した。日本政府は逮捕容疑に関する詳細な情報を提供すべきだとし、国際社会で日本が信頼を失う事態に発展しかねないと警告した。
「日本のことを友人だと思っていたのに……」。フォール氏は険しい表情でこう語り始め、逮捕について「とにかく驚いている」と繰り返した。
ゴーン前会長の逮捕容疑は役員報酬の虚偽記載。通常、有価証券報告書の記載内容は企業や監査法人が責任を負うため、フォール氏は「なぜ逮捕されなければならなかったのか、今も謎だ。仏政府は日本に対しもっと情報提供を求めるべきだ」と指摘。「もし、同じようにトヨタ自動車の会長がフランスで逮捕されたら日本は怒るだろう」と述べた。
フォール氏が駐日大使を務めた時期は2008年2月〜11年9月。ゴーン前会長とは定期的に食事をした間柄だったといい、「彼は日本を信頼し、常に日産を第一に考えていた。まさかその日産に裏切られるとは思わなかっただろう」と述べ、逮捕は日産による「陰謀」の可能性があるとの見方を示した。
ゴーン前会長の勾留が長期間に及ぶ中、「民主主義の国はこういうやり方をしない。今、日本で起きていることはサウジアラビアで起きていることのようだ」と批判。そのうえで「もし罪が比較的に軽かった場合、日本は将来、信頼を失うことになるだろう」と強調した。

(余録)権力分立を唱え… - 毎日新聞(2018年12月11日)

https://mainichi.jp/articles/20181211/ddm/001/070/184000c
http://archive.today/2018.12.11-003722/https://mainichi.jp/articles/20181211/ddm/001/070/184000c

権力分立を唱え、近代司法に大きな影響を与えた18世紀のフランスの哲学者モンテスキューの「法の精神」である。そこでは江戸時代の日本の法制度がさんざんに言われているのは、以前の小欄でも触れた。
徳川将軍のことらしい「皇帝」の専制と、残虐で容赦ない刑罰が特徴とされ、むしろ酷刑が逆効果になっているという。オランダからの日本情報や、キリシタンの殉教の影響がうかがえ、当時の欧州の典型的な日本イメージであろう。
幕末の不平等条約治外法権も欧米人に日本の刑罰の残虐が印象づけられていたのと無縁ではなかろう。その後、法体系を整え条約改正を果たした日本だが、21世紀にもなって法の過酷さが欧米で取りざたされるのはどうしたことか。
欧米のメディアで長期勾留や、弁護士の立ち会いもない取り調べが問題視された日産前会長のゴーン容疑者が再逮捕された。容疑は前と同じ有価証券報告書への役員報酬の過少記載の直近3年分で、これによって勾留はさらに長びく。
欧米メディアには内部通報と司法取引による摘発を日産の経営権にからむ陰謀のように報じる向きもある。「人質司法(ひとじちしほう)」などとかねて国内でも批判の強い長期勾留や自白偏重の捜査が、国際的に厳しい視線を浴びるのも当然であろう。
ことは江戸や明治の話でなく、グローバルな経済活動を支える法運用の透明性にかかわる問題だ。歴史や文化の違いを強調するより、普遍的な「法の精神」にもとづく捜査の公正に疑念をもたれないよう願う。

ゴーン前会長起訴・再逮捕 「裏報酬」の実体が焦点だ - 毎日新聞(2018年12月11日)

https://mainichi.jp/articles/20181211/ddm/005/070/122000c
http://archive.today/2018.12.11-003815/https://mainichi.jp/articles/20181211/ddm/005/070/122000c

裏の役員報酬を将来的に支払うことが確定していたのかどうか。そこが最大の焦点になる。
役員報酬を過少に記載したとして、日産自動車前会長のカルロス・ゴーン容疑者が起訴された。
2014年度までの5年間、高額報酬への批判を避けるため、約100億円だったゴーン前会長の役員報酬有価証券報告書への記載を約50億円にとどめた罪だ。残額は退任後に受け取る仕組みになっていた。
ゴーン前会長は、直近3年分の虚偽記載でも再逮捕され、報酬隠しの立件額は約90億円に上る見込みだ。
企業の役員は、業績などに応じて報酬を得るのがあるべき姿だ。有価証券報告書の記載によって、投資家は企業の姿勢をチェックする。10年から、1億円以上の高額報酬を得た役員の氏名と金額の開示が義務づけられたのは、そのためだ。
虚偽記載は投資家の判断を誤らせる可能性がある。倫理的に許されない行為である。
ただし、事件の構図はそう簡単ではない。
ゴーン前会長は、退任後に受け取る金額を一覧にした文書を毎年作成し、一部側近と共有し箝口(かんこう)令を敷いていた。東京地検特捜部は、文書の存在や、司法取引に応じた側近の証言を重要な証拠とみている。
一方、ゴーン前会長は、一部を退任後に受け取る計画があったと認めながらも単なる希望額だとし、受け取りは確定していないとの主張だ。裏報酬が実際には積み立てられていないことも指摘している。
このため、裏報酬が「将来得べかりし利益」と言えるかどうかが争点になる。役員報酬の虚偽記載がこれまで刑事事件になった例はない。ゴーン前会長には、自身を含めた役員報酬額を決める権限があったとされ、捜査のメスが入った意義はある。
事件を巡っては、長期にわたる勾留など日本の刑事手続きへの批判がフランスなど海外で起きた。
勾留期間の長さは、司法制度の違いに起因し、一概に日本が長いとは言えない。ただし、取り調べへの弁護人の立ち会いなど、欧米の先進国で認められていながら、日本では原則的に採用されていない取り組みもある。国際化が進む中で、刑事司法手続きも不断の見直しが必要だ。

改憲の20年施行目指す 首相、入管法を年内に総合対策 - 東京新聞(2018年12月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018121102000131.html
https://megalodon.jp/2018-1211-0938-22/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018121102000131.html

安倍晋三首相は十日夜、臨時国会閉会を受け官邸で記者会見し、二〇二〇年の新憲法施行を目指す考えを改めて表明した。臨時国会では自民党改憲条文案の提示は見送られたが、二〇年施行は「今も、その気持ちには変わりはない」と明言した。外国人労働者の受け入れ拡大を目指す改正入管難民法の成立を踏まえ、受け入れの環境整備のための総合的対応策などを年内に策定する方針も強調した。
首相は改憲に関し、来年の通常国会以降、各党が憲法に関する考え方を国会に示して議論を深めるよう求めた。その上で「与党、野党といった政治的な立場を超えて、できるだけ幅広い合意が得られることを期待する」と訴えた。「その後のスケジュールは国会次第だ。予断を持つことはできない」とも指摘した。
外国人労働者受け入れ拡大については「介護や農業、建設業など、特に人手不足が深刻な分野に限って即戦力の外国人材を受け入れる」と意義を強調。来年四月に改正入管難民法などが施行されるのを前に、年内に、新たな制度の具体化に向けた基本方針や、受け入れ見込み人数を決めるための分野別運用方針も示すと説明した。
既存の技能実習制度で来日した外国人が劣悪な労働環境に置かれているとの指摘を念頭に「日本人と同等の職場環境、賃金面の待遇は確保したい」と強調。「受け入れる人数には明確に上限を設ける。(受け入れの)期間も限定する。いわゆる移民政策ではない」とも語った。 (中根政人)

強制不妊 救済法案一本化 与野党、謝罪主体は「国」避ける - 東京新聞(2018年12月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018121102000125.html
https://megalodon.jp/2018-1211-0941-07/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018121102000125.html

優生保護法(一九四八〜九六年)下での障害者らへの強制不妊手術問題で、自民、公明両党の合同ワーキングチーム(WT)と野党を含む超党派議員連盟が十日、それぞれ会合を開き、救済法案を一本化し、基本方針をまとめた。「(被害者が)心身に多大な苦痛を受けたことに対し、われわれは真摯(しんし)に反省し、心から深くおわびする」として、一時金を支給する。
与野党は来年四月ごろ、通常国会議員立法で法案を提出し、早期成立する見通し。「障害者差別に当たる」として旧法から「優生手術」の条文が削除されてから二十二年。非人道的な政策に対する救済がようやく実現する。一時金の額は与野党で協議し、法案提出までに決める。
「反省とおわび」は法案の前文に盛り込む。主体を被害者側が求めていた「国」ではなく「われわれ」としたことについて、与党WT、超党派議連は「議員立法で旧法を制定した国会や、旧法下で手術を進めた政府も含む」と説明。旧法の違憲性には触れなかった。
一時金の対象は手術を受けた本人で、配偶者らは対象外。形式的に手術に「同意」した例も含む。手術の公的記録が見つからない人も除外せず、専門家で構成する審査会を厚生労働省に設け、医師の所見などを基に手術を受けたかどうかを判断、厚労相が被害認定する。また子宮摘出など旧法で規定していない手術も救済対象とする。
被害認定の請求は法の施行日から五年以内とし、速やかな救済につなげるため、都道府県に相談窓口を設置。手術記録の確認や救済策の周知、広報などでも国との連携を促す。旧法制定の経緯や被害の実態を国会で調査することも検討する。
旧法下で手術を施されたのは約二万五千人。各地で国を相手に損害賠償を求める訴訟が起き、一月に仙台地裁に提訴された全国初の訴訟は、原告側によると来春にも判決が出る見通し。与野党は年明けに法案の細部を詰め、司法の判断を待たずに成立を目指す。

◆被害者憤り「国が謝罪を」 訴訟継続の意向も
「命ある限り国と闘う」「首相が直接謝罪を」。被害者を救うための法制定へ大きな一歩のはずが、国の責任は明記されず、当事者からは逆に憤りや不安の声が。国家賠償請求訴訟を続行する意向も示された。
十日午後の参院議員会館。自民、公明両党の合同ワーキングチーム(WT)に続き、野党を含む超党派議員連盟の会合が開かれた。不妊手術を強いられたとして東京地裁に国賠訴訟を起こした原告の男性(75)も傍聴。今月設立された「優生手術被害者・家族の会」の共同代表でもある。
小柄な体を丸め、厳しい表情のまま配布された法案の基本方針に「死んでも死にきれません」と自身の思いを記した。特に納得できないのは反省とおわびの主語が「われわれ」とされた点。「誰が『われわれ』なのか。国の人たちが謝罪するまで、命ある限り闘っていく」と、国賠訴訟を続ける考えを表明した。
最も早く提訴した仙台訴訟原告の六十代女性の義姉は、違憲性に触れなかった点に「認めてほしい。そのためにも裁判は闘い抜く」と決意を新たに。対象者を手術記録の有無だけで認定しないことは評価した一方、申請漏れを防ぐため被害者に個別通知する制度を要望した。
札幌訴訟原告の小島喜久夫さん(77)も「われわれ」に反対の立場。救済は遅すぎたと感じるものの、このまま法案作成が進むことに不安も抱く。「急ぐのも大事だが、私たち当事者ときちんと話し合う場をもっと設けてほしい」。神戸訴訟の原告で聴覚障害がある小林喜美子さん(86)と夫宝二さん(86)は手話で取材に応じた。喜美子さんは「首相が直接謝りに来ないと納得できない」。宝二さんは「子どもがいないことで高齢になるほど将来の不安が増している」と被害者の現状を知る努力を求めた。
全国被害弁護団の一人は、対象者を法施行時点の生存者としている点に強く反発。「既に亡くなった多くの当事者はどうなるのか」と述べた。

(教員の働き方)抜本的対策が見えない - 沖縄タイムス(2018年12月11日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/357567
https://megalodon.jp/2018-1211-0942-09/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/357567

応急的な対応にとどまり、実効性への疑問が拭えない。
長時間労働が深刻な先生の働き方改革を巡り、中央教育審議会の特別部会が指針案を示した。
6月に成立した働き方改革関連法の上限に沿う形で、公立学校の教員の残業時間の目安を原則「月45時間以内」「年360時間以内」とする内容だ。
長時間労働が社会問題化する中、これまで明確な基準がなかった教員の残業時間に上限を設定したことは一歩前進といえる。
しかし指針案には特別な事情がある場合「月100時間未満」とする例外規定も含まれている。さらに働き方改革関連法にある罰則の導入は、公務員の扱いに合わせ、設けない方針という。 
文部科学省が昨年公表した教員勤務実態調査では、中学校教諭の6割近く、小学校教諭の3割強が「過労死ライン」とされる月80時間以上の残業をしていた。
経済協力開発機構OECD)や民間の調査でも、日本の教員の過重労働は問題視されている。 
看過できない深刻な事態であることは確かだが、人員増といった抜本的対策を示さないまま、現場にやりくりを迫るようなやり方は、自宅に仕事を持ち帰る「隠れ残業」を増やすだけではないか。
例外とされる「特別な事情」の拡大解釈にも懸念がつきまとう。
罰則がないことを疑問視する声も多く、絵に描いた餅に終わらないか心配だ。

    ■    ■

特別部会では、長時間勤務の縮減策などを盛り込んだ答申素案も示され、自治体の判断で労働時間を年単位で調整する「変形労働時間制」も提言された。
時期により繁忙、閑散度の差が大きい職場では、忙しさに応じて労働時間を変えることができる制度である。
文科省は学期中の勤務時間を引き上げる一方、夏休み中の学校閉庁日を増やし長期休暇を取りやすくするなど、1年を通して残業時間を調整することを想定しているようだ。
指針案で残業は「月45時間以内」と決めながら、それを守らなくてもいいという矛盾する提言である。
そもそも忙しいからと残業が集中すれば教員の負担は重くなる。「月100時間未満」の例外を含め、過労死ラインまで働かせることにお墨付きを与えることにもなりかねない。

    ■    ■

今月初め、現場の教員らが文科省を訪れ、教職員給与特別措置法(給特法)の改正を求める3万人余りの署名を提出した。
本給に一律4%を上乗せする代わりに、時間外手当の支給を認めないこの特殊な制度が、長時間労働の一因とされているからだ。
労働実態がつかみにくい分、教員一人一人の健康管理もなおざりになりがちという。
今回、特別部会は給特法の見直しには踏み込んでいないが、避けて通れない課題である。制度見直しを含めた抜本的対策を求めたい。