ゴーン氏起訴 検察は世界に説明を - 東京新聞(2018年12月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018121102000138.html
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日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者が起訴・再逮捕された。退任後に受け取る巨額の報酬を巡り不正があったとされる。世界を駆け巡るニュースだけに検察側は詳細な説明が求められよう。
世界を驚かした経済事件だ。有価証券報告書に記載すべき報酬が二〇一五年期までの五年間で約五十億円少なかった−これがゴーン被告の起訴事実である。再逮捕の容疑は一八年期までの三年間でも約四十億円を過少記載した疑いだ。
いずれもゴーン被告が日産自動車を退任後に受け取る性格の報酬だった。東京地検はこの退任後の報酬をめぐり、ゴーン被告のサインのある書面を押収しており、支払いは確定事項だと考えている。
その一方でゴーン被告は「退任後の支払いは確定していない」と否認しているようだ。両者の間には認識の溝がある。検察がどう証明するのか、ゴーン被告側がどう防御するのか、冷静に見守る必要がある。
もっとも複雑な背景事情があるとの見方も出ている。フランスのルノーと提携関係がある日産は、既にフランス政府の雇用・産業政策に組み込まれている。その主導権争いが絡むのではと…。日産の電気自動車技術の行方が絡んでいるのでは、との見立てもある。
東京地検が司法取引を使ったせいもあろう。今年六月から施行された新ルールで、他人の犯罪の解明に協力すれば検察官から不起訴などの見返りを得られる。
日産の誰との司法取引だったのか。どんな内容だったのか。国民や各国のメディアなどに伏せられているため、この事件の意味を誰もがつかみかねている。さまざまな謎めいた風評も立つ。
検察は従来「公判で明らかにする」とのみ語ってきた。そのような沈黙の姿勢でよいのか。これだけ国際的な論評を受ける事件では、むしろ積極的に検察の意図を語るべきではないのか。
逮捕されても弁護人の立ち会いが認められない、と奇異の目で海外で受け止められた。拘置所の小部屋に閉じ込められるのは拷問だという指摘さえある。
被疑事実の時期をずらしただけで、勾留期間は最長で計四十日にもなる。否認すれば、起訴後の勾留ももっと長くなるかもしれない。この「人質司法」と呼ばれる日本独自の刑事司法の現状に世界から批判もあろう。世の中は世界水準で動く時代だ。この事件を機に改めてほしい問題である。