(教員の働き方)抜本的対策が見えない - 沖縄タイムス(2018年12月11日)

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応急的な対応にとどまり、実効性への疑問が拭えない。
長時間労働が深刻な先生の働き方改革を巡り、中央教育審議会の特別部会が指針案を示した。
6月に成立した働き方改革関連法の上限に沿う形で、公立学校の教員の残業時間の目安を原則「月45時間以内」「年360時間以内」とする内容だ。
長時間労働が社会問題化する中、これまで明確な基準がなかった教員の残業時間に上限を設定したことは一歩前進といえる。
しかし指針案には特別な事情がある場合「月100時間未満」とする例外規定も含まれている。さらに働き方改革関連法にある罰則の導入は、公務員の扱いに合わせ、設けない方針という。 
文部科学省が昨年公表した教員勤務実態調査では、中学校教諭の6割近く、小学校教諭の3割強が「過労死ライン」とされる月80時間以上の残業をしていた。
経済協力開発機構OECD)や民間の調査でも、日本の教員の過重労働は問題視されている。 
看過できない深刻な事態であることは確かだが、人員増といった抜本的対策を示さないまま、現場にやりくりを迫るようなやり方は、自宅に仕事を持ち帰る「隠れ残業」を増やすだけではないか。
例外とされる「特別な事情」の拡大解釈にも懸念がつきまとう。
罰則がないことを疑問視する声も多く、絵に描いた餅に終わらないか心配だ。

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特別部会では、長時間勤務の縮減策などを盛り込んだ答申素案も示され、自治体の判断で労働時間を年単位で調整する「変形労働時間制」も提言された。
時期により繁忙、閑散度の差が大きい職場では、忙しさに応じて労働時間を変えることができる制度である。
文科省は学期中の勤務時間を引き上げる一方、夏休み中の学校閉庁日を増やし長期休暇を取りやすくするなど、1年を通して残業時間を調整することを想定しているようだ。
指針案で残業は「月45時間以内」と決めながら、それを守らなくてもいいという矛盾する提言である。
そもそも忙しいからと残業が集中すれば教員の負担は重くなる。「月100時間未満」の例外を含め、過労死ラインまで働かせることにお墨付きを与えることにもなりかねない。

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今月初め、現場の教員らが文科省を訪れ、教職員給与特別措置法(給特法)の改正を求める3万人余りの署名を提出した。
本給に一律4%を上乗せする代わりに、時間外手当の支給を認めないこの特殊な制度が、長時間労働の一因とされているからだ。
労働実態がつかみにくい分、教員一人一人の健康管理もなおざりになりがちという。
今回、特別部会は給特法の見直しには踏み込んでいないが、避けて通れない課題である。制度見直しを含めた抜本的対策を求めたい。