(土砂搬出 作業再開) 度を越す 強行一点張り - 沖縄タイムス東京新聞(2018年12月6日)

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法令の運用や解釈を都合よく変更し、反対行動を力ずくで排除して、しゃにむに埋め立てを進める。強引なその手法は、数のおごり以外の何物でもない。
防衛省は5日午後、名護市安和にある琉球セメントの桟橋を使い、埋め立て用土砂の船への積み込み作業を再開した。
県は、防衛省が搬出作業に着手した直後の3日、関係法令に違反する疑いがあるとして、作業に待ったをかけた。
県の公共用財産管理規則では、桟橋の設置工事について工事完了の届け出をしなければならないが、それが行われていなかった。
県は3日に琉球セメントに立ち入り検査を申し入れている。県赤土等流出防止条例に基づく事業行為の届け出も行っていなかったという。
県の指摘で防衛省は4日、土砂積み込みを一時中断したが、5日になって、桟橋工事の完了を届け出たとして積み込み作業を再開した。
赤土条例に基づく届け出については、県との認識の違いがあり、届け出を当面見送る考えを示した。
玉城デニー知事が指摘するように、少なくとも立ち入り検査が完了するまで積み込み作業を止めるのがまっとうなやり方である。
だが、辺野古埋め立てを巡っては一事が万事、こんな調子である。一体、この国で、政府による強権の行使をチェックするのは誰なのか。
立法や司法がチェック機能を高めなければ三権分立の形骸化は止められない。

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5日に控訴審判決が出た辺野古埋め立て訴訟で問われたのも、行政による法令の運用・解釈の変更が妥当かどうか、という点だった。
だが、司法は県が求めた判断を回避し、県の敗訴を言い渡した。
埋め立てのため海底の岩礁を破砕する場合、県漁業調整規則に基づいて県の許可を得る必要がある。
なのに無許可で岩礁破砕を伴う工事を実施したとして、国を相手に工事の差し止めを求める裁判を起こした。
福岡高裁那覇支部は、「裁判所の審理対象ではない」と県の訴えを棄却した。一審同様の敗訴である。
「地元漁協が漁業権を放棄しているので県の許可は必要ない」というのが国側の主張だ。
県の主張は退けられたが、福岡高裁の判決は、県の許可が必要な事案かどうかという肝心な点については触れていない。

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3月の那覇地裁判決は、最高裁判例を引用し、「県の訴えは不適法」と却下した。那覇高裁も同じ論法で、実質的な判断を避けたのである。
岩礁破砕の許可を巡っては、水産庁が従来の見解を変更したいきさつがある。県が強い不信感を抱いているのはそのためだ。
国は、国民の権利利益の救済を目的とした行政不服審査法を使って、県知事が行った埋め立て承認撤回の効力を一時的に停止し、司法判断を待たずに工事を再開した。
解釈権の乱用による工事の強行は度を越している。