相沢記者が語る「森友事件の本質」と「移籍の思い」 - 大阪日日新聞(2018年9月28日)

http://www.nnn.co.jp/dainichi/news/180928/20180928087.html
http://archive.today/2018.10.01-141028/http://www.nnn.co.jp/dainichi/news/180928/20180928087.html

NHKを先月末に退職し、新日本海新聞社が発行する大阪日日新聞に移籍した相沢冬樹記者(55)は、森友学園への国有地売却問題を一貫して取材してきた。移籍後も、森友事件を追及しているが、そもそも、なぜ大手メディアから地方紙の記者に転身したのか。相沢記者は、「どこにもしがらみはなく、遠慮もいらない」(吉岡利固・新日本海新聞社社主)を基本とする報道姿勢に感銘を受けたと言う。森友事件の本質と移籍の思いを聞いた。

−NHK退職の経緯は。

突然、大阪の報道部から考査部へ異動を命じられました。私は森友事件を中心になって取材し、そのことはNHK内の誰もが認めていた。そして、異動が伝えられた5月は、財務省の背任事件に対する大阪地検特捜部の捜査がヤマ場を迎えていた時期で、しかも、いつ終わるか分からない。そんな時期に取材担当者を代えますか。異動先の考査部は番組を放送後に講評する部署です。これは私にとって左遷と言うより、記者という生きがいを奪う行為です。生きがいを奪われたから退職を決意しました。

−「森友問題スクープ記者を“左遷” NHK『忖度(そんたく)人事』の衝撃」と日刊ゲンダイに報じられたが。

組織内部のことは分かりませんが、森友事件で私が特ダネニュースを出した後に報道局幹部が激怒したこと、別の特ダネを出す際に圧力があったことは事実です。「近畿財務局が国有地売却前に森友学園側から、支払える上限額を聞き出し、その金額以下で売った」というニュースを放送しましたが、放送後、私の上司に報道局幹部から、なぜこのニュースを報じたのかという怒りの電話がかかってきました。
そして「財務省が学園側に対し、実際にごみを大量に撤去したように説明してほしいと口裏合わせを求めていた」というスクープニュースを出すに当たっては、報道局幹部の了解を取り付けるためにハードルの高い取材を求められ、全てをクリアして放送する直前に、情報が野党に漏れているという理由であやうく放送がボツになりかけました。しかも、特ダネなのにニュース7の一番最後の項目という扱いでした。何かに忖度したとしか言いようがありません。

−もともと、森友問題の取材を始めたきっかけは。

森友問題が明らかになったのは昨年2月8日。豊中市木村真市議が、森友学園に売却された国有地を巡り、国が売却額を明らかにしないのはおかしいと情報公開を求めて提訴したことがきっかけです。記者会見を聞いてみると、他の全ての国有地は売却額が公表されているのに、この土地だけ開示請求しても出てこない。そしてこの土地に建つ小学校の名誉校長は安倍昭恵首相夫人。その瞬間に何かある、話が大きくなると直感しました。そこから私の取材はスタートしました。
籠池泰典理事長(当時)は最初に各社のインタビューに答えた後、取材に応じなくなりましたが、その後、学園側から私に電話があり、単独インタビューに応じると伝えてきました。「相沢さんが信用できると思ったから」という話でした。理事長とのやりとりで信用されたのだと思います。

−森友事件をどう捉えるか。

二つの謎が残されたままです。一つは、なぜ、疑問のある小学校が認可されようとしていたのか。もう一つは、なぜ、国有地がごみの撤去費の名目で鑑定額から8億円以上も値引きされて売却されたのか。そもそもごみは撤去の必要があったのか。問題の土地は、森友学園の前に大阪音楽大が売買交渉をしていました。ここでは、ごみは問題にならず、大阪音楽大が数億円の買い取り価格を提示しても、折り合いませんでした。数億円で折り合わないものを、なぜ1億3400万円で売ったのか。おかしなことだらけです。

−問題の本質は何か。

誰が見てもおかしな土地取引なのに、財務省の担当者も、財務相も、首相も「問題ない」と言い切る。関係書類の提出を求めても「廃棄したからない」と言い切る。ところが後から出てくる。しかも改ざんされていたと分かる。誰が見てもきちんとした説明はされていないのに、「十分説明した。もう終わった」と、子どもでも分かるような嘘(うそ)を政治の力で押し通した。嘘を突き通せば嘘がまかり通ることを世の中に知らしめてしまった。多くの人が無力感、さらには政治への絶望を感じているのではないでしょうか。
森友事件は私がNHKを辞めて記者を続けようと思った大きな理由の一つです。この1年半、「自分はこの事件を取材するために記者になったのだ」と宿命的なものを感じながら取材してきました。先ほど挙げた二つの謎を解明するまで取材を続けるつもりです。

大阪日日新聞を移籍先に考えた理由は。

知人を介して7月下旬に、吉岡社主に初めて会いました。私が一通り話をする間、黙って聞いていた社主は最後にこう言いました。「こういう形で言論を封殺する不条理をわしは許せない。有為な人材をこんなことで埋もれさせてはならない。うちの会社はどこにもしがらみがないし、どこに遠慮もない。相沢さん、あんたには自由に取材して真実をどしどし書いてもらいたい。あんたはうちで面倒みる」。私はその言葉に深く感銘を受けました。強い者、権力者、スポンサーに遠慮し、忖度して、報道内容を左右しがちな今のメディア界にあって、こんな気骨のある人がいたことが大きな驚きでした。
その後、私は鳥取市新日本海新聞社を訪れ、社長にお会いしました。その時、社長の名刺に「代表取締役社長 記者」と肩書がありました。社長は「うちの会社は社長以下全員記者という心構えでやっています」と語りました。これもすごいことです。記者という仕事に限りない愛情と誇りを感じている私にとって、これほどふさわしい会社はないと思いました。

−今後の抱負を

森友事件は私にとって、読者の皆さまへの「取材公約」ですから、最優先で取り組みますが、やりたいことはたくさんあるんです。私はあと1カ月で56歳ですが、さらに修業を重ねて成長を続け、読者の皆さまに新たな視点の記事を送り届けたいと思っています。

あいざわ・ふゆき 1962年生まれ。宮崎県出身。87年にNHK入りし、山口放送局を皮切りに神戸、東京社会部、大阪府警キャップ・ニュースデスクなどを歴任。大阪局考査部副部長を最後にNHKを退職。9月1日から大阪日日新聞論説委員

(政界地獄耳)安倍首相「適材適所」意味ご存じない? - 日刊スポーツ(2018年10月3日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201810030000229.html
http://archive.today/2018.10.03-010405/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201810030000229.html

自民党総裁選での首相・安倍晋三の勝ち方、党員の視点、日露、日米、日韓と相次いで行われた首脳会談の内容、総動員選挙を繰り広げた沖縄知事選挙。そして今回の「適材適所」という党人事と内閣改造だ。総裁選から第4次改造内閣組閣までの間に安倍政権の評価はがらりと変わったのではないか。

★1つは、国民が内閣に全幅の信頼を置かなくなった。世論調査では見えてこない政権への不信感。外交では地球儀を俯瞰(ふかん)する外交を標榜(ひょうぼう)したが、相当額の税金を海外に投入。一方、災害の復興予算や貧困対策、暑さ対策としての小中学校へのエアコン導入に、海外にばらまくような鶴の一声はなかった。また各国首脳との個人的な関係を武器に外交を展開することを売り物にしていたが、露プーチン大統領、米トランプ大統領らに踊らされていることが露呈した。沖縄知事選ではこれでもかと人とカネをつぎ込み、公約に携帯電話を4割下げるなど、県民を愚弄(ぐろう)するような中央とのパイプさえあればといった中央集権化とお上意識で選挙戦を東京の理屈で押し通そうとした。

★外交の責任者、河野太郎の外相留任。沖縄知事選の責任者と中枢にいた幹事長・二階俊博官房長官菅義偉の留任。副総理兼財務相麻生太郎は少なくとも財務相からは外れるべきだし、それがけじめだろう。加えて金銭疑惑で閣僚辞任した甘利明を選対委員長、加計学園からの献金疑惑がある首相側近・下村博文憲法改正推進本部長に据えるなど、適材適所の意味をご存じないのかと思うばかりの人事だ。彼らは会見義務のないポストだというのもミソだ。内閣の売りは入閣待望組の大量初入閣。共産党書記局長・小池晃はそれを「閉店セール」と評したが、その中には総裁選の時に「内閣にいるんだろ。石破さんを応援するんだったら辞表を書いてからやれ」と前農相・斎藤健に言い放ったご仁も論功行賞で入閣した。その程度の内閣改造だが、既に党内はオール安倍与党体制ではないことをお忘れなく。(K)※敬称略

野党、麻生氏留任に一斉反発=大量初入閣「閉店セール」−内閣改造 - 時事ドットコム(2018年10月2日)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018100200958&g=pol
http://archive.today/2018.10.03-013422/https://www.jiji.com/jc/article?k=2018100200958&g=pol

第4次安倍改造内閣が2日午後、発足した。文部科学相柴山昌彦党総裁特別補佐、厚生労働相根本匠元復興相を起用した。総裁選で安倍晋三首相(自民党総裁)と争った石破茂元幹事長が率いる石破派の山下貴司氏も初入閣させ、法相にあてた。首相は2日夜に首相官邸で開いた記者会見で「明日の時代を切り開くための全員野球内閣だ」と強調した。

「石破氏を応援するなら辞表を書け」 石破氏陣営が告発「安倍氏周辺から恫喝、圧力」発言のウラ 自民党総裁選 - 産経ニュース(2018年9月18日)
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/180918/soc1809180015-n1.html
http://archive.today/2018.10.03-012119/https://www.zakzak.co.jp/soc/news/180918/soc1809180015-n1.html

神戸新聞は12日付で、官邸幹部は西村康稔官房副長官だと報じた

首相「全員野球内閣」 第4次改造内閣発足、新任は12人 - 日本経済新聞(2018年10月2日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35998180S8A001C1MM0000/
http://archive.today/2018.10.02-100044/https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35998180S8A001C1MM0000/

第4次安倍改造内閣が2日午後、発足した。文部科学相柴山昌彦党総裁特別補佐、厚生労働相根本匠元復興相を起用した。総裁選で安倍晋三首相(自民党総裁)と争った石破茂元幹事長が率いる石破派の山下貴司氏も初入閣させ、法相にあてた。首相は2日夜に首相官邸で開いた記者会見で「明日の時代を切り開くための全員野球内閣だ」と強調した。

朝鮮学校判決 学びの保障を最優先に - 朝日新聞(2018年10月3日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13706216.html
http://archive.today/2018.10.03-001708/https://www.asahi.com/articles/DA3S13706216.html

高校授業料無償化の目的は、家庭の経済力にかかわらず学びを等しく保障することだ。国籍を問わず外国人学校の生徒も対象としている。朝鮮学校の生徒を除外するのは制度の趣旨に反するはずだ。
国が大阪朝鮮高級学校大阪府東大阪市)を無償化の対象から除いたことの違法性が争われた訴訟で、大阪高裁は国の処分を適法と判断した。違法として対象にするよう命じた昨年の大阪地裁判決を取り消した。
高裁は、朝鮮学校と、北朝鮮を支持する在日本朝鮮人総連合会朝鮮総連)の関係に焦点をあてた。幹部間の人事交流や、北朝鮮の指導者を礼賛する総連傘下の出版社の教科書を使っていることを挙げて、教育基本法が禁じる「不当な支配」を受けており、無償化の要件に合わないと指摘した。
朝鮮学校の前身は、朝鮮半島出身の人々が戦後、民族の言葉を学ぶ場として建てた国語講習所だ。民族教育として朝鮮総連が学校を援助してきたのは確かだが、生徒も保護者もすでに日本で生まれた世代になり、様々なニーズを受けて教育内容も変化している。
一審の大阪地裁は、法廷で卒業生や元教員の声を聞き、学校生活のビデオも見て教育の実情を検討した。その結果、歴史的背景から朝鮮総連の援助は不自然ではないとし、授業に北朝鮮を賛美する内容があるものの、補助教材で多様な見方を教えているため「教育の自主性までは失っていない」と判断した。
こうした生徒の立場に立った検証と判断が、司法に求められているのではないか。
政府が6年前、朝鮮学校を高校無償化の対象外とする方針を表明した際には、北朝鮮による拉致問題に進展がなく、国民の理解が得られないことを理由とした。日朝政府間で解決すべき問題と教育の機会保障とは、切り離して考えるべきだ。
国連の人種差別撤廃委員会は8月に懸念を示し、朝鮮学校の生徒を差別しないよう日本政府に求めた。この委員会を含めて国連機関から同様の勧告を再三受けているにもかかわらず、政府は応じないままだ。
朝鮮学校の卒業生は日本の様々な分野で活躍しており、社会を支える一員である。教育政策で朝鮮学校を排除し続ける国の姿勢が、生徒や卒業生を含む在日社会への偏見や憎悪感情を助長しかねない。学校関係者はそう危惧している。
政府は無償化制度の原点に立ち返り、朝鮮学校も対象とするべきだ。

教育勅語を現代的に 文科相「検討に値する」 - 東京新聞(2018年10月3日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201810/CK2018100302000148.html
https://megalodon.jp/2018-1003-0911-47/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201810/CK2018100302000148.html

柴山昌彦文部科学相は二日の就任記者会見で、教育勅語を巡って同胞を大切にするといった基本的な記載内容を現代的にアレンジして教えていこうという動きがあるとして「検討に値する」と述べた。「アレンジした形で、今の道徳などに使えるという意味で普遍性を持っている部分がある」とも語った。
政府は昨年三月の閣議で、戦前の教育の基本理念を示した教育勅語を学校で扱うことに関し「教育の唯一の根本とするような指導を行うことは不適切」とした上で、憲法教育基本法に反しない形での教材使用は否定しないとの答弁書を決定した。
野党や教育学者などからは「教育勅語の排除・失効を決めた国会決議に反する」「戦前回帰の動きだ」といった批判や懸念が出ていた。

安倍改造内閣が発足 改憲より信頼回復だ - 東京新聞(2018年10月3日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018100302000169.html
https://megalodon.jp/2018-1003-0913-28/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018100302000169.html

自民党新執行部と改造内閣が発足した。新体制の下、これまでの強引な政権・国会運営を転換できるのか。政治への信頼回復に最優先で取り組むべきだ。
自民党総裁選で連続三選されたことを受けて、安倍晋三首相がきのう自民党役員人事と内閣改造を行った。安倍氏にとっては最後の三年間の始まりである。
まず、注目したいのは憲法改正に向けた自民党の布陣だ。
党の改憲原案を取りまとめる党憲法改正推進本部長には下村博文文部科学相を、原案を国会提出する際、了承が必要な総務会を取り仕切る総務会長には、加藤勝信厚生労働相を起用した。

◆今秋の提出に反対多数
下村氏は首相出身の細田派に所属し、首相との関係も近い。加藤氏は総裁選で一部が石破茂元幹事長を支持した竹下派所属だが、二〇一二年の第二次安倍内閣発足以来、官房副長官厚労相として一貫して首相を支えてきた盟友だ。
首相は、憲法九条に自衛隊の存在を明記するなどの改憲案を主張し、改造後の記者会見でも、秋に召集予定の臨時国会自民党改憲案の提出を目指す意向を示した。
自らと近い関係にある二人を改憲手続きの要となる職に就け、改正憲法の二〇年施行に向けた環境を整えようとしているのだろう。
しかし、改憲は、その是非を最終的に判断する国民が切望している状況とは言い難い。
党総裁選での連続三選を踏まえて行われた共同通信社の全国電世論調査では、秋の臨時国会への党改憲案提出に「反対」とする回答は51・0%に上り、「賛成」は35・7%にとどまった。
安倍内閣が最も優先して取り組むべき課題でも、改憲は下位にある。与党の公明党の理解すら得られない改憲を、強引に、拙速に、進めるべきではない。

◆「森友」責任とらず続投
次に、閣僚の顔触れを見てみよう。麻生太郎副総理兼財務相菅義偉官房長官河野太郎外相、茂木敏充経済再生担当相、世耕弘成経済産業相公明党石井啓一国土交通相の六閣僚が留任した。
首相が政権の「土台」と位置付ける主要閣僚を閣内にとどめ、政権安定を優先させたのだろう。
ただ麻生氏は、森友学園を巡る決裁文書の改ざんや、事務次官が辞任に追い込まれたセクハラ疑惑を巡り、財務省のトップとしての責任をとるべき立場にある。
にもかかわらず、続投とは、首相が一連の政権不祥事を軽視しているとしか思えない。自らの任命責任を回避するために、閣僚の責任をあえて問わないのだろうか。
同様に、首相の盟友である甘利明元経済再生相の党選挙対策委員長への起用にも苦言を呈したい。
秘書や自身の現金受領問題で閣僚を辞任した甘利氏は、あっせん利得処罰法違反容疑などで告発されたが不起訴とされ、その後の衆院選でも当選を果たしてはいる。
とはいえ、大臣室で現金を受け取る行為への不信感は拭えず、説明を十分果たしたとは言い難い。
国会で野党の追及にさらされる閣僚起用は見送られたが、来年の統一地方選参院選を仕切る選対委員長は党四役の一角だ。要職起用を免罪符としてはならない。
十九閣僚のうち初入閣は半数を超える十二人に上る。総裁選で争った石破氏の派閥から衆院当選三回の山下貴司氏を法相に起用したが、ほとんどは衆院当選六〜八回のベテラン議員で、新味にかけることは否めない。
首相は、総裁選で支援を受けた各派閥に配慮して、閣僚待機組を起用したのだろう。
その余波なのだろうか、女性閣僚が片山さつき地方創生担当相一人の起用にとどまることが気掛かりだ。
一四年九月に発足した第二次安倍改造内閣は「女性の活躍推進」を掲げ、五人の女性閣僚を登用した。野田聖子総務相上川陽子法相の女性二閣僚を起用した昨年八月の内閣改造と比べても、後退した印象は否めない。
首相が「女性活躍」の旗を引き続き掲げるのなら、党内にこだわらず、民間からの女性登用も含めて検討すべきではなかったか。

◆強硬な政治姿勢は慎め
共同通信社の全国電世論調査によると、安倍内閣が最も優先して取り組むべき課題は「年金、医療、介護」「景気や雇用など経済政策」「子育て・少子化対策」の順に多い。いずれも暮らしに密接に関わる政策課題ばかりだ。
政権が一丸となって全力で取り組むのは当然としても、その前提となる政治、行政への信頼回復も急務である。信頼を欠けば、国民の理解や協力は得られない。
そのためには国民の声や野党の言い分にも真摯(しんし)に耳を傾け、これまでのような強硬な政治姿勢をまず改める必要がある。自説を言い募るだけでは信頼回復など望めない。信なくば立たず、である。

(余録)沖縄の古謡集「おもろさうし」には「セジ」という言葉が… - 毎日新聞(2018年10月3日)

https://mainichi.jp/articles/20181003/ddm/001/070/176000c
http://archive.today/2018.10.03-001819/https://mainichi.jp/articles/20181003/ddm/001/070/176000c

沖縄の古謡集「おもろさうし」には「セジ」という言葉がよく出てくる。国王がセジを得るように祈る歌には「戦(いくさ)セジ」「百(ひゃく)歳(さ)セジ」「世添(よそ)うセジ」などさまざまな種類がある。このセジ、霊力のことなのだ。
戦セジとは戦勝をもたらす霊力、百歳セジは永遠の命を保つ霊力、そして世添うセジとは世を保護し支配する霊力という。セジは人や物がもともと備えているのではない。天と地の間にあって、何かの拍子に人や物に宿る霊力なのだ。
先日の沖縄県知事選では翁長雄志(おなが・たけし)氏から基地移設反対を引き継いだ玉城(たまき)デニー氏へ、世添うセジはすんなり移行した。地域振興策を人質に基地の移設を進める政府に対し、沖縄の誇りと意地を掲げて霊力を蓄えた翁長氏の遺産である。
ひるがえって自民党総裁選で3選を果たしたばかりの安倍晋三(あべ・しんぞう)首相には出だしからのつまずきである。総裁選での党員票の伸び悩みもこれあり、来年の参院選をにらんで首相の政治的霊力を値踏みする党内外の視線も厳しさを増そう。
その第4次改造内閣財務相官房長官らの骨格は維持しながら12人が初入閣、女性は何と1人の陣容となった。各派閥の入閣待機組の受け入れや盟友・側近重視の人事は、党内に潜むリスクを避けて霊力の消耗を防ぐ狙いのようだ。
つまりは参院選、また改憲を狙った布陣だろうが、野党も新閣僚の資質や女性1人の陣容など突っ込みどころには困るまい。むろん参院選セジの宿り先を決めるのは、その間の一切を見つめる国民である。

(大弦小弦)16年前、沖縄市の狭い路地にある飲み屋でのこと… - 沖縄タイムス(2018年10月3日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/324435
https://megalodon.jp/2018-1003-0916-00/www.okinawatimes.co.jp/articles/-/324435

16年前、沖縄市の狭い路地にある飲み屋でのこと。その人は地方自治や政治家について熱っぽく語った。先輩記者と一緒に話を聞いた相手は、新知事に選ばれた玉城デニーさん

▼ラジオのパーソナリティーなどで活躍する中、意外な気もしたが、市民参加型の街づくりや若者が活躍し、子どもやお年寄りに優しい社会にしたいという庶民目線が印象的だった

▼その後、沖縄市議、衆院議員と政治の道へ。政治家になってからも地元のラジオ局で番組を持ち、好きなロッカー風のいでたちで地元を歩く姿は、庶民派そのものだった

▼知事選でも有権者目線を重視し、「だれ一人取り残さない社会」を掲げた。このメッセージで思い出したのは、普天間第二小学校に米軍ヘリの窓が落下した事故を取材したときの市民の声だ

▼「死人が出ないと、この国は分からないのか」。乱暴な言い方かもしれないが、多くの保護者が口にした。相次ぐ米軍機の事故で、子どもの命が脅かされる現状を変えられない政府への怒りとそれが届かないむなしさを表していた

▼玉城さんを知事に押し上げたのは、騒音や過重な基地負担など日常の問題を解決できない政府への積もり積もった抗議であり、取り残されてきた声でもある。玉城県政はあすスタートする。生活者の声を第一に県政のかじを取ってほしい。(赤嶺由紀子)

<金口木舌>心の中の宝物 - 琉球新報(2018年10月3日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-812843.html
http://web.archive.org/save/https://ryukyushimpo.jp/column/entry-812843.html

首里城は大正時代に取り壊されそうになった。すんでのところで止めたのは沖縄文化の研究者の鎌倉芳太郎らだ。作業の着手直後に中止になったという。その後、戦災で失われた

▼鎌倉が大正期などに撮った沖縄の写真が1972年、琉球政府立博物館で展示された。復帰を3カ月後に控え、かつての沖縄を目にとどめたいとの思いからか多くが詰め掛けた
▼さかのぼること15年。同じ首里の博物館で螺鈿(らでん)漆器の美しさに心を奪われた少年がいた。社会見学で中城村から訪れた当時6年生の宮城清さん(73)=県指定無形文化財琉球漆器」保持者。1年生の時の焼夷弾発火事故で、顔には痕が残る
▼いじめに遭い、中学では教師から理不尽な暴力を受け「生きていても意味がない」とまで言われた。人間不信の中で将来を考え、思い出したのが螺鈿漆器だった。「人と関わらず生きるにはこれだ」と沖縄工高漆工科に進み、才能を開花させた
▼地元の中城で先ごろ、初の展示会が開かれ、多くの反響があった。「善意に包まれていた」。人との関わりを絶とうと入った世界。集大成の個展で多くの支えを改めて感じたという
▼ことしは鎌倉の生誕120年、没後35年。日本の伝統工芸には保持者減少で存続が危ぶまれるものもある。宮城さんは会場で漆の道を志す若者と出会った。琉球の技法を継承する作品がまた誰かの心の支えとなる。