(政界地獄耳)安倍3選なら反主流派生まれる火種 - 日刊スポーツ(2018年8月28日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201808280000208.html
http://archive.today/2018.08.28-043236/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201808280000208.html

自民党総裁選挙の情報戦も多勢に無勢で、首相・安倍晋三陣営の情報コントロールにメディアもまんまと乗っている状況だ。既に議員票405票のうち330票まで安倍陣営は固めたとし、石破陣営は50票に届かない情勢という。これを見せられた地方の自民党員はバンドワゴン効果(勝ち馬効果)が働いて地滑り的に安倍に流れるという算段だ。
★元幹事長・石破茂が掲げた「正直、公正」に個人攻撃だと難癖をつけた参院幹事長・吉田博美の言う「相手を攻撃するというような個人的なことでの攻撃ということについて嫌悪感を感じている」は出来の悪い模範解答のようなもの。「反安倍では支持できない」を演出したものだが、石破の出馬会見が野党の政権批判のようだったことを拡散させている。だが先の国会での首相とその周辺のしてきたことを吉田が認めてむきになった自爆のようなものだが、この吉田発言に賛同したという形で石破支持が首相派に寝返る口実にした。衆院議長からも先の国会対応の総括を求められている中で勝てば官軍ということなのだろうか。
★一方、安倍に冷や飯を食わされているベテラン・中堅議員も一部に安倍への反発を募らせる。「例の『反対派は干される』発言は彼らに火をつけた格好になる。今は安倍陣営対石破本人の戦いだが今後公然と石破支持を打ち出す議員が出てくるのではないか。その裾野は広いが、石破がこの路線で戦い続けることが条件だ」(ベテラン衆院議員)。堂々と干されてやると宣言する議員が生まれるということは、安倍1強のオール主流体制から反主流派が生まれることを意味する。これは今までの安倍政権にはなかった現象。安倍3選後、ひとたび何か起これば「干された側」は厳しい政権批判を展開するだろう。その芽を生むことが3選に付随する火種になる。(K)※敬称略

入国在留管理庁、来年4月に設置へ 入国管理局を格上げ - 朝日新聞(2018年8月28日)

https://www.asahi.com/articles/ASL8W671XL8WUTIL037.html
http://archive.today/2018.08.27-225835/https://www.asahi.com/articles/ASL8W671XL8WUTIL037.html

政府が進める外国人労働者の受け入れ拡大に対応するため、法務省は来年4月から入国管理局を格上げし、「入国在留管理庁」(仮称)を設ける方針を固めた。入国審査官らを約320人増員し、5千人超えの組織にする方針で、秋の臨時国会に関連法案を提出する。また、増員費用を含め、外国人の受け入れ拡大に伴う事業費として来年度予算の概算要求に約30億円を計上する。
法務省関係者によると、入国在留管理庁は長官をトップに次長や審議官2人を置くほか、「出入国管理部」「在留管理支援部」(いずれも仮称)を設ける方向で検討している。入管業務だけでなく、外国人の受け入れ環境の整備について関係省庁や自治体との調整も担う方針という。
留学生や技能実習生の増加に伴い、2017年末時点の在留外国人は約256万人と過去最多だった。政府はさらに、複数の分野の人手不足に対応しようと、一定の専門性や技能を持った外国人労働者を受け入れるための新たな在留資格を来年4月から設けることを決めており、在留外国人の人数は今後も膨らむ見通しだ。17年の訪日外国人旅行者数も過去最高の約2869万人を記録し、増加傾向にある。
こうした状況で、安倍晋三首相は7月、入国管理組織の抜本的な見直しを指示。法務省は現在の入国管理局のままで業務を進めることは困難だと判断し、組織の改編を検討していた。(浦野直樹)

まるい笑顔 輝いた 子どもの日常 絶妙な笑い - 東京新聞(2018年8月28日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201808/CK2018082802000137.html
http://archive.today/2018.08.27-234146/http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201808/CK2018082802000137.html

「『ありがとう』しかない恩人です」−。五十三歳で世を去った国民的漫画「ちびまる子ちゃん」の生みの親、さくらももこさんに、多くの人々から悲しみと感謝の言葉が寄せられた。さくらさんは初の新聞漫画として本紙に「ちびまる子ちゃん」を連載。その当時、本紙担当者らが接したのは、創作に真剣で誠実な素顔だった。

    ◇

さくらももこさんは二〇〇七年七月一日から一一年十二月三十一日までの四年半、本紙朝刊で四コマ漫画ちびまる子ちゃん」を連載した。すでにテレビアニメ化され国民的作品となっていたが、四コマを「自分の創作意識の新しい軸」として、意欲的に取り組んでいた。
まる子は、自身の子ども時代を投影した主人公。昭和の時代に育った人々が、共通の体験として記憶している小学生の「あのころ」が再現され、絶妙な笑いを誘う。小学生がふいに見せる冷静さや、大人の縮図のような学校の人間関係などを「あるある」と感じる人は多かっただろう。「エッセー漫画」のジャンルを切り開いてきた実力は、新聞連載でも発揮された。
連載開始前に本紙に掲載されたインタビューでは、まる子のことを「ちょっと照れ屋で明るい性格で、基本的にはまじめだけれど面倒くさがりだったりするという、ごく普通の女の子」と話し、子ども目線の楽しい漫画を描き続けた。
連載は二〇一一年三月十一日、東日本大震災で一つの転機を迎えた。それまで社会問題については「多くの方がそれぞれ意見をお持ちだと思うので」と、作品には反映しない方針でいたが、同月十八日には、被災者へのメッセージを込めた漫画を発表。まる子が、涙を浮かべながら「きっと大丈夫だよね。日本も」と語る内容だった。直後から約二週間休載。一一年末に連載を終了する時も、その時期が「本当につらかった」と、振り返った。
連載は「超売れっ子で、受けてもらえないのでは」と思いながらも、担当者が依頼したのが始まり。さくらさんの挑戦心と重なったのか、企画は思いがけずとんとん拍子に進んだ。親しい編集者以外に、人前に出ることはめったになかったが、打ち合わせで会った別の担当者は「和服姿で現れて、よく話しかけてくれた。気さくで気遣いがある人だった」と思い出を語る。関係者によると、連載当時から乳がんを患っていたという。
さくらさんの連載終了時のインタビューは、次のような読者への感謝の言葉でしめくくられている。
「皆さまからのご声援が心の支えでした。この四コマの仕事で得た力をこれからの創作活動にも役立てて、がんばってゆきたいと思っています」 (中村陽子)

◆早すぎる/エッセーに才能/思い出くれた
テレビアニメで主人公まる子の声を担当している声優のTARAKOさんは「早すぎます。まだまだやりたいこといっぱい、いっぱいあったと思います。ずっとお会いしていなかったので、私の中のももこ先生は、ずっと小さくて可愛(かわい)くてまあるい笑顔のままです。『ありがとう』しかない恩人です」とのコメントを発表した。

清水市(現静岡市清水区)出身のさくらさんと小学校時代(当時の清水市立入江小)に同級生だったFC東京の長谷川健太監督は「突然の訃報に驚いています。心よりご冥福をお祈り申し上げます」とコメント。「ちびまる子ちゃん」に登場するサッカー少年のケンタは、長谷川監督がモデルだった。
漫画家のちばてつやさんは「三十年ほど前、漫画賞の授賞式で初めてお会いした時、明るくて楽しくて、ちびまる子ちゃんが漫画の中から出てきたような人だと思った」と故人をしのびながら「漫画だけじゃなくて、エッセーもイラストも素晴らしかった。これからも、もっと活躍できたのに。日本の漫画界にとって大きな損失だ。本当にもったいない」と残念がった。
さくらさんと親交のある作家の吉本ばななさんは「青春を共に過ごしたももちゃん、闘病は知っていましたが、いつも元気にメールをくれるから回復を信じていました。言いがたいほど淋(さび)しく、残念です。友だちとして、たくさんの楽しい思い出をありがとう」と惜しんだ。

自民改憲案反対5割 9条生かす発想が大切だ - 琉球新報(2018年8月28日)


https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-791918.html
http://archive.today/2018.08.27-234348/https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-791918.html

安倍晋三首相が秋の臨時国会自民党改憲案の提出を目指す意向を示したことに対して国民は批判的だ。共同通信社が実施した全国電世論調査によると、反対が49・0%と、賛成の36・7%を大きく上回った。
首相は26日、9月20日投開票の自民党総裁選への立候補を正式に表明し、憲法改正の在り方を巡って石破茂元幹事長と論戦を交わす構えだ。
9条を巡り首相は、戦力不保持と交戦権の否定を定めた1、2項を残し、別立ての9条2を新設して自衛隊保持を明記することを主張する。これに対し、石破氏は戦力不保持などを定めた2項を削除し、自衛隊を「戦力」と位置付ける全面改正が持論。一方で「9条は国民の理解を得て世に問うべきものだ」とも述べ、9条改憲は国民的議論どころか、理解すら得られていないという認識だ。世論調査の数字はそれを裏付けている。
昨年5月3日に首相の提案を受けた自民党憲法改正推進本部は今年3月、首相とほぼ同じ案を取りまとめた。共同通信世論調査では、この案への反対が賛成を大きく上回る傾向が続いている。首相はこうした世論をどう受け止めているのだろうか。
自衛隊保持の明記は憲法の平和主義の理念を具現化した9条の1、2項を空文化させると、憲法学者は指摘している。前文の決意も含めて日本国憲法の平和主義は単に自国の安全を他国に守ってもらうという消極的なものではない。平和構想を提示したり、国際的な紛争・対立の緩和に向けて提言したりして、平和を実現するために積極的な行動を起こすことを求めている。
ところが、安倍政権はそれに逆行する行動を取り続けている。憲法解釈による集団的自衛権の行使容認や安保法制、「圧力と制裁」一辺倒の北朝鮮非核化、6年連続の防衛費拡大など枚挙にいとまがない。
自民党改憲案は、国家権力の暴走を防ぐために憲法で国家を縛り付けるという考え方、いわゆる立憲主義に反する内容も目立つ。「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない」と国民に憲法を守ることを強いる点などだ。
日本国憲法の改定には国会議員3分の2以上の賛成と国民投票過半数の賛成を得る必要がある。他国と比べても変えにくい仕組みだ。憲法制定権を持つ国民の意思を尊重する国民主権の考えが根底にある。主権者である国民の間から改憲に反対する意見が多くある以上、秋の国会で改憲を発議するのは暴走と言わざるを得ない。
そもそも9条を変える必要は全くない。むしろ9条を生かす発想こそが大切である。防衛費を増やし、軍備を増強することで武力行使の「抑止」が働くとする「平和」は、日本国憲法が求める「平和」ではない。積極的な外交で紛争の火種を取り除き、なるべく軍備を減らせる環境をつくることを求めているのである。

<憲法を見つめて 住民投票の教訓>(下)与那国自衛隊配備 島に亀裂残ったまま - 東京新聞(2018年8月28日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201808/CK2018082802000136.html
https://megalodon.jp/2018-0828-0845-22/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201808/CK2018082802000136.html


自衛隊基地反対 島の元気をみんなでつくろう」と書かれた看板はすっかり色あせていた。日本最西端の与那国島沖縄県与那国町)。二〇一五年二月、陸上自衛隊配備の賛否を問う住民投票が実施され、誘致賛成が上回った。
政府は海洋進出を強める中国を念頭に、与那国を離島防衛の要と位置づける。配備に反対した町議の田里千代基(60)は、島を二分した問題をこう振り返る。「住民投票という手法は間違っていない。だが、住民投票条例が成立した時には既成事実ができて、住民にあきらめムードが漂っていた。それでもやらんといけないということでやった」
〇七年六月、米海軍佐世保基地所属の掃海艦二隻が与那国島に寄港した。翌〇八年一月、地元有志が与那国防衛協会を結成し、自衛隊誘致運動を始めた。米軍が自衛隊の露払い役を果たした格好だ。
反対派は一二年、住民投票条例の制定を請求したが、誘致派が多数を占める町議会は否決。一四年九月の町議選で誘致派と反対派の議席が拮抗(きっこう)した結果、同年十一月に条例案が可決されたものの、同年春には陸自駐屯地の造成工事が始まっていた。田里は「請求した時に住民投票が実現していれば勝っていた。結局、誘致派の工程表で配備が進んでしまった」と悔しがる。
一六年三月に陸自駐屯地が開設され、二年半が経過した。島には亀裂が残る。カフェを営む猪股哲(41)は反対運動を続けるが、嫌がらせが絶えないという。「店の看板が壊されたり、スプレーで塗りつぶされたりした。地域の行事にも呼ばれなくなった。島からゆいまーる(助け合い)がなくなってしまった」
反対グループ「与那国島の明るい未来を願うイソバの会」共同代表の山口京子(59)は「既成事実を積み重ねられ、追い込まれた末の住民投票だった。嫌気が差して島を出た反対派の住民も多い。国にあらがうことの無力感を覚える」とため息をつく。
誘致派は住民投票をどう総括しているのか。与那国防衛協会会長で副町長の金城信浩(きんじょうしんこう)(74)は「不安はあったが、やってよかった。衰退する島を活性化する道はほかになかった。住民投票後、反対派は動けなくなった」と言い切る。
自民党は、九条に自衛隊の存在を明記する憲法改正案を掲げる。この案が国民投票に持ち込まれると、与那国島住民投票と同様、自衛隊の問題を直接民主制で決めることになる。
金城は「自民党の改正案に賛成だ。勝っても負けても、国民が一票を投じて決めた方がすっきりする」と国民投票を歓迎する。
一方、田里は不安を隠さない。「自衛隊の明記には反対だ。安倍政権は集団的自衛権を解釈で容認するなど既成事実をつくっている。『米軍はダメだが自衛隊ならOK』と言う人もいるが、甘い。自衛隊の基地があれば必ず米軍が来る。いずれ与那国の駐屯地も、米軍にいいように使われるに違いない」 =敬称略(佐藤圭)

(筆洗)米劇作家のニール・サイモンさん。二十六日、九十一歳で亡くなった - 東京新聞(2018年8月28日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018082802000145.html
https://megalodon.jp/2018-0828-0847-07/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018082802000145.html

笑い声のない家で少年は育った。父親はたびたび家を飛び出し、母親は泣いてばかりいた。息苦しい生活のなか少年が見つけた数少ない楽しみはチャプリンの映画だった。
笑いを商売にする人間は必ずしも笑いの絶えぬ家庭で育つものとは限らぬらしい。少年はやがて世界中に笑いを売るようになる。米劇作家のニール・サイモンさん。二十六日、九十一歳で亡くなった。
「サンシャイン・ボーイズ」「おかしな二人」「裸足(はだし)で散歩」。数々の傑作で世界中を笑わせ、ちょっと泣かせ、そして幸せな気分にした。
笑いへのこだわりは暗い少年時代の日々と関係があると書いている。「観客の笑い声を聞けば聞くほど、もっと聞きたくなった。これで十分ということはなかった」。少年時代に聞きたかった笑い声を少しでも取り戻そうとしていたのか。おかげでわれわれはおなかをよじらせたわけだが、切ない裏話でもある。
人を笑わせるのは難しい。自信作があった。書いている途中で自分で噴きだすほどにオカシイ。「わたしは書きながら笑い、稽古で笑った。だが笑ったのはわたしだけだった」。作品は短期間で打ち切られた。
書き直しをいとわぬ人でデビュー作の「カム・ブロー・ユア・ホーン」は二十二回書き直した。何度でも書き直す。求めていたのはより大きな笑い声。その旅立ちは寂しいが、拍手と感謝の笑い声で送る。

(私説・論説室から)琉球アイデンティティー - 東京新聞(2018年8月27日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2018082702000158.html
http://web.archive.org/web/20180827045122/http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2018082702000158.html

東京・六本木のサントリー美術館で開かれている「琉球 美の宝庫」を見た。海上交易で日本や中国、東南アジアの文化が交じり合って生まれた独自の美。紅型(びんがた)などの染織や絵画、漆の工芸は至宝といってもいい。
今では県の一つだが、沖縄には日本とは別の国家だった歴史がある。十五世紀の統一で生まれた琉球国は、江戸期の薩摩藩による侵攻後も明治政府の琉球処分まで四百年以上、存在した独立国だ。数々の美術品は琉球国がこの地に存在したことの確かな証しだろう。
琉球は日本の国家に組み入れられてから、苦難の連続だった。太平洋戦争では大規模な地上戦の舞台となり、当時の県民の三分の一が犠牲になったとされる。琉球の美術品も多くが失われた。戦後は本土から切り離され、苛烈な米軍統治下に置かれた。施政権の日本への返還後も、在日米軍専用施設の70%という重い基地負担を強いられている。
先日亡くなった翁長雄志知事が沖縄のアイデンティティーを強調していたのも、独立国家として独自の文化を育んだ誇りと、過重な負担への反発から発しているのだろう。
九月の沖縄県知事選では、名護市辺野古への米軍基地新設の是非が最大争点になるとみられるが、国家の安全保障のためにアイデンティティーを踏みにじるようなことはやめるべきだ。地域の歴史や文化の独自性や多様性を認め合う社会でありたい。 (豊田洋一)

大阪市長 学力調査を乱用するな - 朝日新聞(2018年8月28日)


https://www.asahi.com/articles/DA3S13653441.html
http://archive.today/2018.08.27-233407/https://www.asahi.com/articles/DA3S13653441.html

小6と中3が対象の全国学力調査の成績を、校長や教員の人事評価とボーナスに反映させる。各学校への予算配分も、結果にあわせて増減させる。
大阪市の吉村洋文市長が、こんな方針を打ち出した。
学力を底上げするのが狙いだというが、理解できない。成績が振るわない学校・地域を置き去りにし、格差を広げかねない。子どもの弱点をつかんで授業の改善に役立てるという調査の趣旨を逸脱し、過度な競争や序列化を招く恐れが強い。
市長は方針を撤回すべきだ。
大阪市は、全国20の政令指定都市のなかで、学力調査の平均正答率が2年続けて最下位だった。市長は危機感を示し、順位を上げると宣言。人事評価の具体的な仕組みは市教育委員会とともに協議するとしているが、数値目標を示し、達成したかどうかを目安にする考えだ。
あまりに短絡的で乱暴だ。
子どもの学力は家庭の経済状況と強い関係があることが、学力調査に伴う研究でわかっている。行政による支援は、貧困や不登校といった問題を抱える児童・生徒が目立つ学校や地域にこそ手厚くする必要がある。
大阪市は昨年度、学力調査で課題があると判断した小中70校を対象に、独自の支援策を始めた。それを改善・充実させていくことに集中するべきだ。
そもそも、学力調査で把握できるのは学力の一つの側面にすぎない。結果を絶対視すれば、さまざまなゆがみを生む。
かつて東京都足立区では、都や区の試験中に先生が誤答している児童に合図をしたり、障害児の成績を集計から外したりする不正が生じた。その背景には、学校同士を競わせ、成績の伸び率を各校への予算配分に反映させる仕組みがあった。
吉村市長は「結果に責任を負う制度に変える」「市長の予算権をフルに使って意識改革したい」と語った。
しかし、テストの点数で先生を競争させるような仕組みを入れると、先生は教科指導に集中できる学校に赴任したがり、様々な課題に直面している学校を嫌う風潮を強めかねない。多様な子どもたちと粘り強く向き合う、そんな数値では測りにくい努力を軽視すれば、教育の根本が危うくなる。
市長の方針に対し、学校の現場からは懸念や反発が噴き出している。当然だろう。
まずはその声に耳を傾ける。学力調査の目的を再確認した上で、必要な対策を検討するよう指示する。
それが市長の役割だ。

日本と北朝鮮 人道問題進展へ対話を - 朝日新聞(2018年8月28日)


https://www.asahi.com/articles/DA3S13653444.html
http://archive.today/2018.08.27-235008/https://www.asahi.com/articles/DA3S13653444.html

朝鮮半島をめぐる各国の対話が続いていることに伴い、北朝鮮の人道に関する問題にも徐々に動きが出てきた。
日本も、北朝鮮に残る多くの人びとの問題を抱えている。拉致被害者をはじめ、戦後に日本に戻れなくなった残留日本人。そして、80年代半ばまで続いた在日朝鮮人の帰還事業で渡った日本人配偶者もいる。
日本政府はこの機運を逃すことなく、対話で事態を動かし、進展を待ちわびる人びとの思いにこたえる必要がある。
南北朝鮮の間では先週、朝鮮戦争などで生き別れた離散家族が再会した。北朝鮮景勝地金剛山に数百人が集い、六十余年ぶりの対面にむせび泣いた。
韓国の歴代政権は人道問題として離散家族の再会を求め続けているが、北朝鮮側は政治交渉の一環として扱ってきた。今回も、平昌五輪以降の融和を受けて約3年ぶりに実現した。
北朝鮮は米国に対しても、人道問題を政治カードに使う。
6月の米朝首脳会談の前に、スパイ容疑などで拘束していた米国人3人を解放したほか、先月には朝鮮戦争時の米兵の遺骨の一部を返した。トランプ政権との交渉を穏便に進めたい意図があったのは明らかだ。
北朝鮮メディアは一昨日夜、やはり拘束中だった1人の日本人観光客を「国外追放する」と伝えた。詳細は不明だが、日本側に向けた何らかのメッセージである可能性は排除できない。
4年前に日朝両政府が発表した「ストックホルム合意」で北朝鮮側は、拉致被害者や行方不明者問題をはじめ、すべての日本人に関する調査を包括的に実施すると約束した。
そこには、帰還事業での約1800人とされる日本人配偶者の問題や、1945年前後に北朝鮮域内で亡くなった日本人の遺骨の調査なども含まれる。
配偶者のうち日本への帰国を望む人びとの一時帰国は、かねて日本政府が求めてきた。2000年までに3回にわたり43人が里帰りし、それっきりだ。
拉致問題について、北朝鮮に誠意ある対応を求め続けるのは当然だ。同時に、他の人道問題も、日本政府が粘り強く取り組まなければ前進しない。残された時間の少なさに焦りを感じる関係者は数多い。
核をめぐる米朝交渉の先行きは見通せない。一方、本格的な日朝協議はその兆しすら見えていない。米国や韓国とも調整しつつ、日朝間の対話の可能性を探るべきだ。
長年にわたり積み重なる人道問題を放置してはならない。

<金口木舌>「社会に役に立つ仕事をしたい」と考える若者が一昔前に比べ増え・・・ - 琉球新報(2018年8月28日)


https://ryukyushimpo.jp/column/entry-791917.html
http://archive.today/2018.08.27-235251/https://ryukyushimpo.jp/column/entry-791917.html

「社会に役に立つ仕事をしたい」と考える若者が一昔前に比べ増えているという。哲学者の内山節さんは「修業と貢献に意味を見いだす日本の伝統的な労働観が回復しつつある」と分析する

▼技量を身に付け、いつかお返しするとの労働観だ。農民の考え方が職人や商人にも重んじられるようになったそうだ。ホームページ制作の琉球オフィスサービスが児童養護施設への支援を始めて3年目になる
▼高3までしかいられない施設を出て、進学する生徒の住居費を毎月4万円まで支援する。顧客の協力も得て、本年度は10人分、480万円を負担中。従業員は約30人で多くに子どもがいる
▼同じく子育て中の藤本和之代表が仕事で養護施設に関わり「いつも親に甘えられる子どもとの不公平」を知ったことがきっかけ。感じた「後ろめたさ」が根本にあると打ち明ける
▼「だから社会貢献というより、やりたくてやっていること」と飾らない。独り立ちせざるを得ない養護施設の生徒は高等教育への進学率が低い。夢をついえさせない活動で、社会貢献に他ならない
公民権運動を指導したキング牧師が「私には夢がある」と講演したのは55年前のきょう。差別撤廃と自由の実現に向け、世界は少しずつ進んできた。「社会に役立ちたい」と夢を抱き、高等教育を希望する全ての生徒が進学できる社会はいつ実現するだろうか。

ニセ電話詐欺 10月から新宿区、警察署に65歳以上の区民名簿:東京 - 東京新聞(2018年8月28日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201808/CK2018082802000150.html
https://megalodon.jp/2018-0828-0852-36/www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201808/CK2018082802000150.html


新宿区は10月から、区内にある牛込、新宿、戸塚、四谷の4警察署に65歳以上の区民の住所や氏名、生年が入った名簿を提供する。警察官が高齢者宅を戸別訪問、ニセ電話詐欺(特殊詐欺)被害の注意喚起をするのが目的だ。名簿は事前に高齢者に通知し、提供を希望しない人の意思を確認して作成するとしている。だが、法曹関係者らからは「プライバシーを侵害する」と反対の声がある。 (増井のぞみ)
警察署への名簿提供は今年六月の区情報公開・個人情報保護審議会が賛成多数で承認した。名簿の提供に関する四署との協定書は今月二十三日に締結。区によると昨年の区内でのニセ電話詐欺被害の認知件数は百三十件、金額は約二億九千万円と多く、被害者の86%は六十五歳以上という。吉住健一区長は「防犯活動に接する機会が少ない方にも警察官が直接注意喚起できる」と名簿提供の効果を期待した。
九月には、対象者約六万七千人にチラシと、名簿の提供を希望しない場合の回答書を郵送する。希望しない人を除外した名簿を作成、十月中旬に四警察署に提供する。
四署は名簿を基に署員が全戸訪問。本人の了承を得て電話機の留守番電話機能の設定や、自動通話録音機計八百台の貸し出しを行う。
一方、名簿提供には批判もある。人権擁護団体「自由人権協会」は、「プライバシー権を侵害し違憲」と反対声明を出した。「戸別訪問により特殊詐欺を効果的に防止できるとは、何ら客観的に明らかにされていない」とも指摘。第二東京弁護士会も、高齢者名簿の提供を直ちに中止することを求める会長声明を出し「区報やチラシのポスティングなどの代替手段がある」と指摘した。
◆「犯罪被害防止以外、使用しない」警視庁
ニセ電話詐欺対策で高齢者名簿を活用する必要性について、警視庁犯罪抑止対策本部の金井貴義副本部長(27日付で総務部参事官)は「詐欺被害を自分の事と思わず、『うちは大丈夫だ』と考える人は多い。戸別訪問で地道に呼び掛ける必要がある」と理解を求める。
街頭啓発では具体的な対策を取ってもらいづらいとして、昨年4月から、戸別訪問を全署で強化している。
主な対象は、平日昼間に電話に出る高齢者。だが、同庁には地域の高齢者を網羅した名簿はなく、自治体に協力を求めている。金井副本部長は「犯罪被害防止の目的以外に使用しないなど最大限の配慮をする」と述べた。 (福岡範行)

◆世田谷・墨田区 本人通知せず  23区 新宿含め6区提供
防犯目的での高齢者名簿の警察提供について本紙が二十三区に取材したところ、十月に始める新宿を含め六区が提供。世田谷と墨田は、本人に通知せず、地元警察署から依頼があれば名簿を提供していた。
世田谷は、高齢者の犯罪被害防止と交通事故防止を目的に二〇〇七年から昨年まで提供。七月時点で、区内の高齢者は約十八万人いる。
墨田は、ニセ電話詐欺被害を防ぐためとして一六年に約六万人分を提供した。担当者は「(区や警察の動きが公になると)警察の名前をかたった新たな詐欺を助長するおそれがあるので本人への通知は省略した」と説明。このほか、中野は新宿と同様、提供を希望しない人を除いた名簿を作り、目黒、江戸川は本人の同意を得た人のみ名簿に載せていた。
各区の個人情報保護条例では、審議会の意見を聴いて区が「必要」や「特に必要」と認めれば、本人の同意を得なくても個人情報を外部提供できる。
ただ、同意なしの名簿提供は過去に問題も起きている。千葉県野田市は一二〜一五年、警察に六十五歳以上の名簿を提供したが、市民からの異議申し立てを受け、提供を中止した。
狛江市も一四年、六十歳以上のみ世帯の名簿を調布署に提供したと広報紙で報告すると、苦情約百件が寄せられ、市は名簿をいったん回収。提供を希望しない人を除いた名簿を再提出した。

新宿区による高齢者情報の警察への提供を直ちに中止することを求める会長声明 - 第二東京弁護士会ひまわり(2018年8月22日)

http://niben.jp/news/opinion/2018/180822164722.html

2018年(平成30年)8月22日
第二東京弁護士会会長 笠井 直人
18(声)第11号

1. 新聞報道によれば、新宿区(以下「区」という)は、特殊詐欺被害根絶対策の実施のためとして、65歳以上の区民約6万7000人の氏名、フリガナ、住所及び生年(以下「本件個人情報」という。)を記載した名簿を作成し、その名簿を、区内4警察署(新宿署、四谷署、牛込署、戸塚署)に対し提供する方針を決め(以下「本件提供」という。)、新宿区情報公開・個人情報保護審議会に諮問し、本年6月28日にその承認を得たとのことである。
 区は、本年8月23日に、本件提供に関する警察との調印及びプレスリリースを行い、本年10月1日から本件提供を開始するとしている。そして、警察官が、65歳以上の区民宅の戸別訪問を行い、特殊詐欺被害を防止するための留守番電話機能活用の注意喚起や、自動通話録音機800台の貸出事業を行うとしている。

2. 本件個人情報は、その性質上、本人が、自己が欲しない他者にはみだりにこれを開示されたくないと考えるのは自然なことであり、そのことへの期待は保護されるべきであるから、プライバシーに関する情報として法的保護の対象になる(最高裁判所第二小法廷平成15年9月12日判決も同旨)。本件個人情報を本人の同意無くみだりに他者に開示することは許されず、これに反するときは、プライバシーを侵害するものであり、原則として違法となる。

3. 新宿区個人情報保護条例(以下「条例」という。)第12条第2項は、区長など実施機関は、審議会の意見を聴いて、実施機関が特に必要があると認めたときは、(1)本人の同意があるとき、又は本人に提供するとき、(2)法令等に定めがあるとき、(3)人の生命、身体又は財産の保護のために緊急に必要があるとき、(4)前3号に掲げるもののほか、審議会の意見を聴いて、実施機関が特に必要があると認めたときは、保有個人情報を区の機関以外のものに提供することができる、としている。区は、同項(4)に基づき、本人の同意無く個人情報を提供しようとするものである。
 しかし、本件個人情報の提供については、まず同項(1)の本人の同意を得る方法によるべきであり、これが困難であるといった特別の事情は伺われない。
 この点に関し、区は、特殊詐欺被害を防止するために警察官が戸別訪問を行なうこと及び警察への個人情報提供を希望しない方は、9月30日までに連絡するように案内する印刷物を投函し、個人情報の提供・利用の停止を求める申し出があった場合は、当該高齢者に係る個人情報を名簿から削除するとしている。これは、いわゆるオプトアウト類似の方式をとろうとするものであるが、行政機関個人情報保護法にはオプトアウトの規定はなく、条例にも根拠となる規定はないから、対象区民から連絡がなかったとしても、本件個人情報の提供に関する同意があったことにはならない。

4. 仮に本人の同意を得ることが困難であるなどの事情により、条例第12条第2項(4)に基づいて、本件個人情報の提供が許される場合がありうるとしても、同号の「特に必要がある」との要件の適用については、実施機関の恣意的な判断によることは許されず、提供の目的が正当であること、当該目的に照らして、同意無き個人情報の提供を正当化しうるほどの必要性が、客観的かつ合理的に認められなければならないというべきである。
 本件提供の目的は、特殊詐欺被害を防止するためとのことであり、それ自体は正当性があるものとして首肯できる。しかし、特殊詐欺被害防止のために留守番電話機能の活用を周知することや、自動通話録音機800台の貸出しを行なうといった事業は、区報やチラシのポスティング等の広報その他の代替手段により実施しうるものであり、高齢の区民約6万7000人分もの個人情報を、一括して警察に提供することの必要性が、客観的かつ合理的に認められるといった事情はうかがわれない。

5. 以上のとおり、本件個人情報に関する本件提供を、本人の同意無く実施することの必要性はなく、これを正当化する根拠は認められない。本件提供は、プライバシーを侵害するものとして違法であるといわざるを得ないものであるから、直ちに中止すべきである。