もんじゅ燃料取り出し訓練で警報 作業中断、再開のめど立たず - 共同通信(2018年8月19日)

https://this.kiji.is/403726392007148641

東京電力福島第1原発で汚染水を浄化した後に残る放射性物質トリチウムを含んだ水に、他の放射性物質が除去しきれないまま残留していることが19日、分かった。一部の測定結果は排水の法令基準値を上回っており、放射性物質の量が半分になる半減期が約1570万年の長寿命のものも含まれている。
第1原発でたまり続けるトリチウム水を巡っては、人体への影響は小さいなどとして、処分に向けた議論が政府の小委員会で本格化し、今月末には国民の意見を聞く公聴会が開かれるが、トリチウム以外の放射性物質の存在についてはほとんど議論されていない。

基準値超の放射性物質検出、福島 トリチウム以外、長寿命も - 共同通信(2018年8月19日)

https://this.kiji.is/403827433298166881?c=39550187727945729

日本原子力研究開発機構は19日、高速増殖原型炉もんじゅ福井県敦賀市)の使用済み核燃料取り出しに向け「燃料貯蔵設備」に保管してある制御棒を燃料に見立てて取り出す訓練を始めたが、訓練中に警報が鳴り、作業を中断した。再開のめどは立っていないという。
機構によると、警報は19日午後1時半すぎに鳴り、同2時20分に作業の中断を決めた。作業中に密着していなければならない燃料出入機と別の装置との間に隙間ができ、内部の空気が漏れた可能性があるとみて、詳しい原因を調べている。

教室にエアコン 子どもを猛暑から守れ - 東京新聞(2018年8月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018082002000148.html
https://megalodon.jp/2018-0820-0836-29/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018082002000148.html

猛暑のたびに熱中症の危険性がいわれる。命を守るための適切な室温調整は今や常識だ。だが、小中学校の教室のエアコン導入はまだ不十分で、自治体間の設置率の差も大きい。早急に改善したい。
先月十七日、愛知県豊田市で、校外活動に参加した市立小学校一年生の男子児童が重い熱中症で死亡した。体調不良を訴え、学校に戻った男児が休息をとった教室にはエアコンはなかった。
午前中だったが、市内の気温は既に三〇度を超えていた。
この事故がきっかけになったといえよう。保護者や専門家から、学校の教室にエアコン設置を求める声が広まった。
文部科学省の二〇一七年度の都道府県別調査では、全国の公立小中学校の普通教室のエアコン設置率は、平均で49・6%だった。
北海道(0・3%)など涼しいとされる地域も含む値だが、実際に都道府県の格差は大きい。公立小中学校の設置者である市町村の設置率の差も同様だ。
たとえば、男児の事故が起きた豊田市がある愛知県の設置率は全国平均を下回る35・7%。このうち当の豊田市の市立小中学校の設置率は、一部を除いてほぼ0%。
愛知県に隣接する静岡県は相当低く7・9%。岐阜県は55・2%だが、“暑い町”としてよく知られ、今年も四〇度超えなど猛暑続きの多治見市は0%である。
ただ豊田、多治見両市ともに、エアコン導入の方針や計画を今春までに既に決めている。
設置率の高い自治体としては、たとえば東京都が99・9%。一〇年の猛暑を機に、国の補助金に上乗せして都が財政支援した。愛知県内でも名古屋市が一三〜一五年度にかけ、全校に配備した。
気象庁が今年七月の天候を「異常気象」と総括し、あえて地球温暖化にも触れ、高温傾向などは今後も増えると警鐘を鳴らす中、設置率が半分に満たない状況は何とか改善しなければなるまい。
教育現場の一部にはなお、部活動中に過度に走らせるなど高温の危険性を甘く見るケースもあるようだ。「我慢は美徳」という精神論は、この異常な猛暑の前ではナンセンスと言うほかない。そんな空気が空調整備の障害になっているなら、あらためたい。
文科省はエアコン設置費の三分の一を補助しているが、自治体から引き上げの要望もある。やはり格差解消を進めるには、補助率アップなど現行制度の見直しに踏み切ることも必要ではないか。

手のひらに憲法を 文京のデザイナー夫妻が冊子作成:東京 - 東京新聞(2018年8月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201808/CK2018082002000129.html
https://megalodon.jp/2018-0820-0835-24/www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201808/CK2018082002000129.html

日本国憲法の勉強会を開いてきた、それぞれデザイナーの夫妻、保田卓也さん(34)、三上悠里さん(33)=文京区=が、憲法全文を載せた手のひらサイズの冊子を作成した。読みやすさ、持ち運びやすさを追求したデザインで、昨年度のグッドデザイン賞(日本デザイン振興会主催)を受賞。一時は在庫がなくなったが増刷、「憲法を身近に感じて」と、現在も希望者に販売を続けている。 (中村真暁)
二十二ページの冊子は縦約十七センチ、横約八センチで、専用の紙の小袋とセット。若い世代に親しみやすい横書きで、章や条の数字は大小の洋数字にして目立たせ、探しやすい。閉じられていない蛇腹式なので、広げれば全文を一覧できる。主観が入らないよう、言葉遣いは原文通りにした。
政治や憲法を難しいと感じつつ、以前から関心があった二人。憲法関連などのイベントに顔を出すうち、集まりの主張が明確で、無関心な人にはハードルが高いように感じた。「理性的に語れるよう、憲法をちゃんと学びたい」と、特定の考え方を前提としない勉強会「憲法のきほん」を昨年三月末に千代田区内で始めた。
勉強会は半年で七回開催。憲法学者らを講師に招き、各国の憲法比較や自由と公共の関係などを学んだ。会員制交流サイト(SNS)などで広まり、延べ百二十二人が参加。冊子は勉強会で役立ててもらおうと、参加者に配布した。
デザイナーの表現力は勉強会でも生かされた。主権者についての回では、講師の石埼学・龍谷大教授の提案で、説明に使う図を事前に何度もやりとりして作成。法のヒエラルキー(序列)の図は、最高法規憲法の下に法律、政令などが続く。国会議員を選ぶ有権者などの「選ぶ側」を並べて表記すると、有権者、国会、内閣の順になる。
石埼教授は「内閣が国政の中心だとイメージされがちだが、国会が政治の意思決定をし、国会議員を選出するのは有権者だと分かる。二人のデザインの力で整理してもらい、好評だった」と振り返る。
二人は「民主主義には知識が必要だと活動を始めたが、勉強会では相手の意見に耳を傾け、自分が変わる余地を持つ姿勢が大切だとも学んだ。憲法をさらに深掘りしたい」とし、今後も憲法に関するイベントなどを企画していく。
冊子は一冊八百円(税込み)。購入は、「憲法のきほん」のホームページから。

百年の女 『婦人公論』が見た大正、昭和、平成 酒井順子 著 - 東京新聞(2018年8月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2018081902000181.html
https://megalodon.jp/2018-0820-0837-42/www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2018081902000181.html

◆権利・自由広げ 未来の選択は
[評者]与那覇恵子(東洋英和女学院大教授)
大正五(一九一六)年に「現代婦人の卑俗にして低級なる趣味を向上」させ、「穏健優雅なる実践的教養を鼓吹」する、という二大綱領を掲げて『婦人公論』は創刊された。本書は『婦人公論』の百年分を丹念に読み込み、日本女性の百年の歩みを照らし出した佳作である。誌上で展開される発言や論に対する酒井氏のコメントが秀逸だ。
女性の生と性、結婚、教育、職業など、綱領通りに女性の啓蒙(けいもう)を目指した雑誌だが、編集者も執筆者もほとんどが男性。女は男になぐってほしいという願望を持つ、男の世話をしたいと思っている、知能が劣る、といった現代ではパワハラやセクハラと見なされる「トンデモ」発言も。
しかし、著者は怒らない。前半世紀は、「男性側の忌憚(きたん)の無い感覚も披露」された「おじさんによる女権拡張雑誌」と喝破する。二十一世紀の現在も一部の男達(たち)の本音に繋(つな)がっていると、女性達へ注意を喚起する。
産め、働け、家にいろ、と時代によって期待される女性の役割にも注目。「産めよ育てよ国の為」という国策に忠実だった、戦時中の誌面。「日本はかつて、北朝鮮のような国だったのだなぁ…」という著者の感慨は、少子化を女性の晩婚化によるものと非難する最近の風潮を、やんわりとたしなめる。
さて雑誌の後半世紀は、初めて女性編集長が登場した一九五八年以降。戦後、女性は男性と同じ人間として同等の権利や自由を与えられたが、女性自らで勝ち得たものでなかった。誌面には多くの女性論者が登場し、その内実をめぐってバトルを繰り広げた。
ウーマン・リブフェミニズムの思想は女性の意識に大きな変革をもたらしたが、権利が当たり前になり、枯渇感も無くなった。とくに最近の誌面には、男に「所有」される方が「楽」と、思考や選択を男に委ねる傾向も見られるという。それらの現象も含め「未来を生きる女性達の生き様」が収まっていると語る。
改めて想起される論点も多く、未来を生きる人々に読んでもらいたい一冊である。(中央公論新社・2160円)

1966年生まれ。エッセイスト。著書『負け犬の遠吠え』『男尊女子』など。

◆もう1冊 
水無田(みなした)気流著『無頼化した女たち』(亜紀書房)。日本女子の今を分析。

(東京エンタメ堂書店)<江上剛のこの本良かった!>オウム事件 死刑執行13人の衝撃 - 東京新聞(2018年8月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/entamedo/list/CK2018082002000184.html
https://megalodon.jp/2018-0820-1441-25/www.tokyo-np.co.jp/article/book/entamedo/list/CK2018082002000184.html

地下鉄サリン事件などを起こした、麻原彰晃元教団代表ら十三人のオウム真理教の確定死刑囚の死刑が執行された。死刑賛成派も反対派も関心のない人も、十三人という人数には衝撃を受け、動揺したのではないだろうか。そこで今回は、死刑に関する三冊。

◆残忍さ解明
<1>佐木隆三著『慟哭(どうこく) 小説・林郁夫裁判』(講談社、品切れ、電子書籍あり)
地下鉄サリン事件の実行犯の中で死刑を免れた林郁夫受刑者のドキュメント。すごい本だ。十三人の死刑が執行された際、多くの人が「どうして彼らのような優秀な人が、これほど残忍な事件を起こしたのか、何も解明されていない」と批判した。しかし本書を読むと、かなりの部分が理解できるのではないか。佐木隆三という優れたドキュメンタリー作家の想像力が不明な部分を補ってくれる。
林は、慶大医学部卒の心臓外科医で国立病院の医局長まで務め、患者に慕われる優秀な医師だったが、オウムに全財産を寄進して家族全員で入信し、治療省大臣となる。
別件で逮捕された林を取り調べた警部補は「林先生」と呼ぶ。入信する前の気持ちに戻ってくれるかもしれないと期待したからだ。林は警部補に心を開き、自分の罪を認め、地下鉄サリン事件について詳細な供述を始める。そのおかげで事件の全容が解明され、麻原を含む関係者の逮捕につながる。林は裁判でも麻原と対決し、彼の「まやかしを明らかにする」べく闘う。
なぜ事件を実行したか。「考えるということを麻原に預けて」いたといい、入信は「医療では救えない」という問題に深く悩んだ結果だという。圧巻は、亡くなった高橋さんと菱沼さんの妻、シズヱさんと美智子さんの証言だろう。お二人は悩み抜いた結果、林の死刑を望まなかった。結果、林は無期懲役の判決を受ける。
私の能力ではこの場で紹介しきれないほど濃い内容である。私に言えることは悪い師(リーダー)に逢(あ)えば、だれでも林のように罪を犯してしまう可能性があること。そして今も麻原を信じている人たちは、本書を読んで目を覚ましてほしい。これは林も望んでいる。林は、死刑を執行された麻原や他の信者たちのことを獄中でどう思っているのだろうか。自分の死刑を回避したいと考えていなかっただけに、つらい思いで報道を聞いたのではないか。



◆赦しと改心
<2>堀川惠子著『教誨師(きょうかいし)』(講談社文庫、七七八円)
教誨師とは確定死刑囚と「唯一自由に面会することを許された民間人」。死刑囚と対話を重ね、心の平安を保ち、執行にも立ち会う無報酬のボランティアである。その役割を半世紀にわたって続けているのが、浄土真宗僧侶の渡邉普相(わたなべふそう)だ。本書は渡邉の人生を追い、死刑囚の人生を重ね合わせる。
さまざまな死刑囚が登場する。その一人、山本勝美(仮名)は酒を飲みたいばかりに刑務官を殺害し脱走した。山本は教誨で、歎異抄(たんにしょう)の「悪人こそ往生する」との親鸞悪人正機説に出会い、浄土真宗に理解を深めていく。その姿を見て渡邉は「赦(ゆる)しこそ反省や更生を促す特効薬」なのかもしれないと思う。すっかり改心した山本にも最後の日が訪れ、刑場への移送車の中で「先生、あれ、あの店です!」と叫ぶ。それは殺人を犯してまで脱走し酒を飲んだ店。飲んだのは一合だけ。「たった一合のために死刑かよ」と渡邉はやりきれない思いを吐露する。
死刑を単なる「人殺し」の現場にしないために宗教者の役割があるのだと、渡邉は言う。改心した人間を殺していいのか、と考えさせられる。

教誨師 (講談社文庫)

教誨師 (講談社文庫)


◆刑場の実態
<3>坂本敏夫著『死刑と無期懲役』(ちくま新書、七七八円)
本書は、元刑務官が書いた死刑の現場の実態だ。保安課長という責任者として、死刑囚AとBの死刑を初めて執行する様子が赤裸々に書かれている。前夜から著者は死刑囚が息を吹き返す悪夢に悩まされる。予定通り執行しなければならない責任感と不安からだ。刑場の扉を開けると生ぬるい空気の塊が吹き出す。係長はこれを成仏できない霊だと言う。
「どうしても死刑の真実の本を書かなければ!」という切羽つまった思いで書き「二十一世紀に人を殺す職業があることがあまりにも悲しい」と言う。刑務官の苦悩が全ページから溢(あふ)れ出てくる。

死刑と無期懲役 (ちくま新書)

死刑と無期懲役 (ちくま新書)


  (えがみ・ごう=作家)

(書く人)事実を曲げた、知の商品 『歴史修正主義とサブカルチャー 90年代保守言説のメディア文化』 社会学者・倉橋耕平さん(36) - 東京新聞(2018年8月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/kakuhito/list/CK2018081902000183.html
https://megalodon.jp/2018-0819-1311-03/www.tokyo-np.co.jp/article/book/kakuhito/list/CK2018081902000183.html

歴史修正主義はなぜ支持されるのか。専門家らがデマだと否定し、反知性主義と突き放しても、関連本は書店の売れ筋となり、会員制交流サイト(SNS)では「ネトウヨ」的つぶやきが跋扈(ばっこ)する。誰もが問題視しながら答えが出せなかった問いの背景を、丁寧に分析した。
愛知県蒲郡市出身で、立命館大などで非常勤講師を務める。学生時代の二〇一一年、慰安婦問題を扱ったNHKの番組改変問題を博士論文で研究。その後、在日コリアンの知人がヘイトスピーチの被害に遭う経験などを通じ、問題は身近に迫っていると実感した。
「どうしてこんな考え方が広がるのか。彼らが考えていることは何か」。彼らには彼らなりの「知の形式」がある。ただ批判したり無視するのでなく、その仕組みに向き合おうと試みた。
成果の一端をひもとくと−。歴史修正主義は決してネット時代の現象ではなく、一九九〇年代には仕組みがあった。ルーツの一つが「新しい歴史教科書をつくる会」。歴史の専門家ではない「アマチュア」知識人が中心を担った。右肩下がりの出版界で彼らの主張は「商品」として、論壇誌、漫画など複数のメディアを横断しながら拡散された。<「売れれば」いいという消費文化の論理で展開され、熱心な「お客様」を手放さないよう扱うなかで作られた言論>というわけだ。
空恐ろしいのは、こうした言説が上からの押しつけではなく、それを心地良いと思う消費者がいて、双方のキャッチボールの中で強化されていった点にある。
彼らの思考法が端的に現れているのが、やはり九〇年代に浸透したディベート。二項対立で問題を設定し、どちらに説得力があるかを競う。SNSなどで「論破」に執着する人に出くわしたことはないか。相手を言いくるめることを優先し、「事実かどうか」は後回し。だから「デマだ」という指摘は彼らの胸には刺さらない。
その様を「彼らは私たちと全く異なる水準のゲームをしている」と喝破する。「基本的に彼らがやっているのは事実をゆがめること。それを論壇誌などのメディアを通じ、理性的な形で見せようとしているだけです。相手の土俵に乗るのではなく、君の議論のやり方はおかしいと指摘していくことが大切だと思います」 青弓社・一七二八円。 (森本智之)

歴史修正主義とサブカルチャー (青弓社ライブラリー)

歴史修正主義とサブカルチャー (青弓社ライブラリー)

(筆洗)アレサ・フランクリン。七十六歳。 - 東京新聞(2018年8月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018082002000138.html
https://megalodon.jp/2018-0820-0838-25/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018082002000138.html

ジャズ歌手のサラ・ボーンがある日、やはり歌手のエタ・ジェイムスにこんなことをこぼしたそうだ。一九六〇年代前半のことだろう。「あの娘の『スカイラーク』(ジャズスタンダード曲の一つ)を聞いたかい。ああ、あたしはもう、あの歌を歌わないよ」
名ボーカリストの自信を失わせるほどの歌唱力に恵まれた「あの娘」。やがて「ソウルの女王」となる。グラミー賞十八回受賞。ヒットチャートの一位は二十曲を数える。米大統領自由勲章受章。輝かしい栄光とともに女王がこの世を後にした。アレサ・フランクリン。七十六歳。
その黒人音楽の一つのジャンルをなぜソウル(魂)と呼ぶのか定かではないが、圧倒的な歌唱力に加えて歌声に魂を込める卓越した能力が人々の心を高揚させ、慰めた。まさに女王だった。
父親は牧師でキング牧師とも親しい公民権運動の活動家。その影響だろう。差別を憎み、ヒット曲「リスペクト」は苦しい立場にあった当時の黒人や女性にリスペクト(敬意)を払いなさいという歌である。
「シンク」で歌ったのは、横暴な男性への女性の不満だった。その歌声と魂はいつも嘆き悲しむ側に寄りそった。
ビートルズの「レット・イット・ビー」。ポール・マッカートニーはこの人に歌ってほしいとこの曲を書いた。もしも、アレサなかりせば、あの名曲も生まれなかったかもしれない。

(私説・論説室から)「納める」でなく「預ける」 - 東京新聞(2018年8月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2018082002000149.html
https://megalodon.jp/2018-0820-0839-46/www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2018082002000149.html

高福祉だが税金も高い。
付加価値税25%に所得への課税は50%前後。そこで暮らす人々は高い税をどう思っているのだろう。それを聞く機会を得た。北欧のスウェーデンフィンランドを訪れた。
日本人は税は「納める」という意識ではないか。政府のお金であって自分のものではない。使われ方もよく分からない。北欧では「預ける」と考えている。いずれ国民に返ってくる「貯蓄」「投資」といった感覚だろうか。
スウェーデンエコノミストに聞くと「その見方はそうだね。人は生まれれば税で賄われる教育を受ける。そして働いて税を払い老後はそれをもらう。人生を通してみるとそういうことになる」と話した。
聞いたのは数人だったが「高い税は嫌だ」と言う人はいなかった。「社会保障がちゃんと人生を支えてくれることが分かっているから納税する」という答えが共通していた。
フィンランドでは、自宅で子どもたちを預かる「保育ママ」に自身の所得税率を聞いたら即答した。聞いた私はすぐ答えられない。
税が高くても必要な支えは得られると実感している。負担と給付の関係が明確だ。日本は増税分を社会保障の財源にと消費税を8%に引き上げたが、かなりの部分を制度維持の借金返済に回し、増税が給付の充実感に結びついていない。受益感を持てない増税は難しい。日本の課題を実感した。 (鈴木 穣)

貧困が生む健康格差 深刻さが知られていない - 毎日新聞(2018年8月20日)

https://mainichi.jp/articles/20180820/ddm/005/070/005000c
http://archive.today/2018.08.19-234032/https://mainichi.jp/articles/20180820/ddm/005/070/005000c

所得が低かったり、非正規労働者だったりする人は、そうでない人より健康を害しやすい。いわゆる「健康格差」の問題が指摘されている。
これを裏付けるデータの報告は相次いでいる。全日本民主医療機関連合会(民医連)が、生活習慣が原因といわれる「2型糖尿病」について2011〜12年に40歳以下の782人を調査したところ、年収200万円未満が6割近くを占めた。バランスのいい食事を取ることが少ないためとみられる。
また、低所得層は高所得層に比べ、うつ状態の割合が5倍に上るという調査もある。経済的・社会的なストレスを抱えると心身の健康がむしばまれやすいとされる。
経済的・社会的要因が健康状態まで左右する深刻な実態に、政府や自治体はもっと目を向けるべきだ。
世界保健機関(WHO)は09年、加盟国に対し、健康格差是正に向けた取り組みを推進するよう勧告した。厚生労働省も12年、生活習慣病などを予防する13〜22年度の「国民健康づくり運動プラン」に、所得や地域差などを要因とする「健康格差の縮小」を初めて明記した。
中でも子供の健康格差は深刻だ。東京都足立区は15年、区立小学校に在籍する全ての小学1年生5355人を対象に健康状態や家庭の状況を調査した。
それによると、世帯収入が300万円未満など「生活困難」の条件に該当する家庭の子供は、虫歯が5本以上ある割合が、そうでない家庭の子供の約2倍に上った。麻疹・風疹の予防接種を受けていない割合も、生活困難世帯の子供が同様に約2倍だった。
区の報告書は「子供の医療費が公費負担であることを踏まえると、経済的な理由だけでなく、保護者が子供の健康に関心があるか否か、そのための時間を確保できるかなどの要因も考えられる」と指摘する。
健康格差対策は医療面だけでなく、雇用や社会保障、貧困家庭への支援など多岐にわたる。英国では首相官邸や各省庁から企業、ボランティア組織まで含め、社会全体でこれらに取り組んでいる。
日本政府も子供の健康格差をはじめとして、実態把握をした上で総合的な対策を打ち出すべきだ。

(余録)少子化でこどもが減り、小学校が地域で役目を終え、廃校となるケースが近年は多い… - 毎日新聞(2018年8月20日)

https://mainichi.jp/articles/20180820/ddm/001/070/069000c
http://archive.today/2018.08.19-234211/https://mainichi.jp/articles/20180820/ddm/001/070/069000c

少子化でこどもが減り、小学校が地域で役目を終え、廃校となるケースが近年は多い。その際、自治体の悩みの種となるのが校舎や跡地の使い道だ。なじみの深い場所だけに、住民の関心も高いためだ。
そんな「廃校」がここにきて再利用で存在感を発揮している。千葉県鋸南(きょなん)町の場合、4年前に廃校になった小学校を改装して「道の駅 保田小学校」を開設した。校舎のたたずまいを残しつつ、宿泊可能な複合型施設にしたところ、町内有数の集客施設となった。
二宮金次郎像の隣に「cafe金次郎」があり、泊まり部屋には2階の教室部分を使い、食堂のメニューは給食風といった具合だ。廃校の再利用が成功したケースの多くは、校舎の持つレトロさをむしろ積極的に生かしている。
高知県室戸市にある再利用施設はその名も「むろと廃校水族館」。小学校にあった屋外プールをウミガメの水槽に使うなど校舎を水族館化した展示が人気を呼び、春の開館以来6万人以上が訪れている。
ウミガメを研究、保護しているNPO法人「日本ウミガメ協議会」が運営している。館長の若月元樹さんによると、市側が当初提案した名称は「海の学校」だったが、「わかりやすく」と「廃校」にこだわったという。
自治体によっては千葉県鴨川市のように、廃校の使い道を住民の協議によって決めようとしている例もある。人口減少の波は逆らいがたい。それでもかつての学びやが再生してにぎわう光景は、住民にとって、大きな励みになるはずだ。

(介護ハラスメント)現場の悲鳴が聞こえる - 沖縄タイムズ(2018年8月20日)


http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/300851
https://megalodon.jp/2018-0820-0842-09/www.okinawatimes.co.jp/articles/-/300851

訪問介護や看護の現場でのハラスメント被害を浮き彫りにする調査結果が相次いで公表された。女性が多い職場であり、特にセクハラ被害は深刻だ。
介護業界で働く人たちでつくる労働組合「日本介護クラフトユニオン」の発表では、介護職員の7割以上が利用者やその家族からセクハラやパワハラを受けていた。
セクハラでは「不必要に体に触れる」「性的冗談を繰り返す」などの回答が多く、犯罪に近い被害もあったという。
全国訪問看護事業協会が実施した調査でも、回答者の約半数が訪問先で心身の暴力やセクハラを受けた経験があると答えていた。
介護現場同様、「体を触られた」や「アダルトビデオを流された」といった訴えが目立つ。
介護職員が自宅を訪ね、食事や入浴、排せつなどの介助をする訪問介護は、お年寄りの生活を支える大切なサービスだ。ただ仕事の内容上、利用者と二人きりになることが多く、被害に遭いやすい。
自宅で最期まで暮らせるよう療養生活を支援する訪問看護師の役割も拡大しているが、常に密室のリスクを抱える。
これまで被害が表に出にくかったのは「病気に伴う症状だから仕方がない」「相談しても変わらない」と泣き寝入りするケースが多かったからだろう。
「#MeToo」運動の流れの中で顕在化してきた被害でもある。女性の人権を侵害するこれら言動は到底許されない。

■    ■

男女雇用機会均等法は、職場におけるセクハラ対策を雇用主に義務づけている。均等法が規定する「職場」には、取引先の事務所や顧客の自宅も含まれる。
声を上げられず我慢を強いられてきた状況にピリオドを打つためにも、業界全体で「セクハラは悪質な人権侵害だ」というメッセージを発信することが大切だ。利用者や家族への周知・啓発はもちろん、相談窓口の設置など体制づくりも不可欠である。
この問題を巡って、厚生労働省は実態調査を実施し、本年度中に事業者向けの対策マニュアルを作成することを決めた。
労組側は2人体制で訪問介護ができるよう国の補助などを要請しており、前向きに検討すべきである。介護保険制度の再構築も含め、実効性のある対策を求めたい。

■    ■

団塊の世代が全員75歳以上になる2025年度には、全国で約34万人の介護職員不足が生じると推計される。
一方、介護職員の離職率は、ここ数年16%台で推移し、他産業より高い状態が続く。セクハラなどの問題と定着率の悪さは無縁ではない。
余生はできるだけ住み慣れたわが家でと思い描いている人は多いが、医療や介護サービスが行き届かなければ自宅には居続けられない。
介護や看護といった尊い仕事へのやりがいを持続させるためにも、社会全体で問題に向き合い、現場で働く人の尊厳を全力で守る必要がある。

<金口木舌>胸をなで下ろした人も多いだろう。山口県で行方不明だった2歳児・・・ - 琉球新報(2018年8月20日)


https://ryukyushimpo.jp/column/entry-785534.html
http://archive.today/2018.08.19-234447/https://ryukyushimpo.jp/column/entry-785534.html

胸をなで下ろした人も多いだろう。山口県で行方不明だった2歳児が3日ぶりに保護された。大分県から捜索ボランティアとして駆け付けた78歳の尾畠春夫さんが見つけた

▼営んでいた鮮魚店を65歳で閉じた後、奉仕活動に取り組む。東日本大震災、先月の西日本豪雨など全国の被災地を訪ね、復興を支援している。本人は至って謙虚。報道陣に返した言葉がいい。「人の命より重いものはない」
▼2歳児が見つかった日は15日の終戦の日。多くの人が不戦を誓った。嘉手納町の農林健児之塔でも慰霊祭があり、亡き友を悼む91歳の渡口彦信さんの言葉と姿が16日付本紙に掲載された
▼渡口さんはガス販売事業を手掛け、今は地域振興や防犯、福祉などの社会貢献に情熱を注いでいる。自宅のある読谷村嘉手納町、出身地の本部町などに寄付も続ける。口癖は「感謝こそ全て」
沖縄戦を体験し、ハワイで抑留された。友やハワイで命を落とした県人捕虜への思いが渡口さんの原動力だ。遺族の遺志を継ぎ50代半ばからハワイ捕虜の遺骨を探し続ける。その姿は人々と県を動かし昨年、現地で初の慰霊祭につながった
▼渡口さんは戦禍で焦土と化した沖縄を、尾畠さんは被災地を見詰めた。年を重ね、命を尊ぶ2人は同じ言葉を口にした。「社会に恩返しがしたい」。気取らず、いちずに。その生き方は人々を引き付ける。