<金口木舌>胸をなで下ろした人も多いだろう。山口県で行方不明だった2歳児・・・ - 琉球新報(2018年8月20日)


https://ryukyushimpo.jp/column/entry-785534.html
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胸をなで下ろした人も多いだろう。山口県で行方不明だった2歳児が3日ぶりに保護された。大分県から捜索ボランティアとして駆け付けた78歳の尾畠春夫さんが見つけた

▼営んでいた鮮魚店を65歳で閉じた後、奉仕活動に取り組む。東日本大震災、先月の西日本豪雨など全国の被災地を訪ね、復興を支援している。本人は至って謙虚。報道陣に返した言葉がいい。「人の命より重いものはない」
▼2歳児が見つかった日は15日の終戦の日。多くの人が不戦を誓った。嘉手納町の農林健児之塔でも慰霊祭があり、亡き友を悼む91歳の渡口彦信さんの言葉と姿が16日付本紙に掲載された
▼渡口さんはガス販売事業を手掛け、今は地域振興や防犯、福祉などの社会貢献に情熱を注いでいる。自宅のある読谷村嘉手納町、出身地の本部町などに寄付も続ける。口癖は「感謝こそ全て」
沖縄戦を体験し、ハワイで抑留された。友やハワイで命を落とした県人捕虜への思いが渡口さんの原動力だ。遺族の遺志を継ぎ50代半ばからハワイ捕虜の遺骨を探し続ける。その姿は人々と県を動かし昨年、現地で初の慰霊祭につながった
▼渡口さんは戦禍で焦土と化した沖縄を、尾畠さんは被災地を見詰めた。年を重ね、命を尊ぶ2人は同じ言葉を口にした。「社会に恩返しがしたい」。気取らず、いちずに。その生き方は人々を引き付ける。