(本音のコラム)斎藤美奈子さん K君とY君 - 東京新聞(2018年7月18日)


K君は人気者だ。評論家よろしく身内の批判もするので、メディアはK君の発言に群がる。
Y君は一部を除いて不人気だ。政権批判を臆せずするので、メディアはY君を煙たがる。
十二日、Y君は参院内閣委員会で西日本豪雨災害の被害が深刻であることを取り上げ、国会審議を一時中止し、行政の災害対応に注ぐべきだと訴えた。「ばくち解禁法案の成立が秋の臨時国会に先延ばしになっても被災者は困りません」
同じ十二日、K君は自身が事務局長を勤める会で、かねて提案していた国会改革の具体策を提示した。夜間の党首討論の定例開催、タブレット端末の活用による国会審議のIT化推進、などだそうである。「平成のうちに、一つでも実現できるように議論したい」
同日、Y君は災害の状況を説明し、土砂を除去する小型重機を配備できないかと要望した。石井国交相は検討を約束。翌日、百台の小型油圧ショベルが緊急派遣された。Y君の金星である。
他方、K君は豪雨災害を見て気象予報を含めた衛星の力を再認識したといい、宇宙ゴミ除去に向けた提言をした。災害ゴミより宇宙ゴミ!?
Y君はいつもド真ん中狙いだが、K君はズレまくりだ。K君とは小泉進次郎氏、Y君とは山本太郎氏。一目瞭然、与党のK君より少数野党のY君のほうがずっと頼りになるやん。 (文芸評論家)

砂川事件、最高裁も再審認めず 元被告らの特別抗告棄却 - 朝日新聞(2018年7月19日)

https://www.asahi.com/articles/ASL7M46J7L7MUTIL02S.html
http://archive.today/2018.07.19-064438/https://www.asahi.com/articles/ASL7M46J7L7MUTIL02S.html

東京都砂川町(現・立川市)にあった米軍基地の拡張計画に反対する学生らが1957年、基地に入った「砂川事件」で、最高裁第二小法廷(菅野博之裁判長)は、日米安保条約に基づく刑事特別法違反で有罪となった4人の元被告について、再審開始を認めない決定をした。18日付の決定で、元被告らの特別抗告を棄却した。今回の請求で再審が開かれないことが確定した。
この事件では一審が「米軍の駐留は憲法9条に反する」と無罪を言い渡したが、最高裁大法廷が1959年に「日米安保条約のような高度に政治的な問題に司法判断はしない」などとして破棄した。当時の田中耕太郎・最高裁長官が、米国側に裁判の見通しなどを伝えたとする米公文書が2008年以降に相次ぎ見つかったことを機に、元被告らは「公平な裁判を受ける権利を侵害された」と主張し、再審を求めていた。
東京地裁は16年3月の決定で、公文書の内容を検討したうえで、「刑事手続きの一般的事項を述べたにとどまる」と認定。最高裁長官は裁判所を代表して外部と交際することがあり、米国大使館関係者と面会したことで不公平な裁判をする恐れが生じたとはいえないとして再審請求を棄却。東京高裁決定も昨年11月の決定で、地裁の結論を支持した。最高裁は今回の決定で、田中元長官の行動については言及しなかった。
再審請求したのは当時、学生だった土屋源太郎さん(83)ら4人。最高裁が一審の無罪判決を破棄した後の差し戻し審で罰金2千円の逆転有罪となり、確定した。(岡本玄)

「反日」中傷 横行を考える 是枝監督「今日性浮き彫り」 - 毎日新聞(2018年7月18日)

https://mainichi.jp/articles/20180719/k00/00m/040/099000c
http://archive.today/2018.07.18-234324/https://mainichi.jp/articles/20180719/k00/00m/040/099000c


公権力と一線を画した表現や研究は「反日」なのか。カンヌ国際映画祭の最高賞を受け、政府の祝意を断った是枝裕和監督が「国の助成金を利用したのに非礼だ」「映画は反日的内容」などバッシングされた。「反日」というレッテル貼りが横行する背景を考える。【中川聡子/統合デジタル取材センター】
文化は国を超える
文化庁に2000万円の助成を受けた是枝さんが「万引き家族」で最高賞を受けた直後の先月、国会で林芳正文部科学相が是枝さんに祝意を伝える考えを示した。これに対し、是枝さんは「映画が国益や国策と一体化して不幸を招いた過去の反省に立ち、公権力とは距離を保つ」との見解を公表。辞退の意向に批判が噴出した。
是枝さんの見解には助成金への謝意も書かれている。「読んでいないのか、意図的な誤読なのか、『反日だ』『韓国に帰れ』と中傷がエスカレートしていった」と、是枝さんは取材に振り返った。
文化庁の助成は「政府関係者のポケットマネーではなく国民の税金。映画の多様性に資する再分配と理解している」と語る。「文化が『国』を超えるという意識があれば、文化への助成が国益と単純に重ならないことが分かる。世界を豊かにすることが、必ずしも今の日本を豊かにすることに直結しないこともある。そんな(国益にこだわらぬ)発想が『反日』と言われるのだろう」と見る。
国益の先に「国策映画」
映画「万引き家族」で主人公たちは自身の思いをよそに、周囲から「犯罪者」とみなされる。「終盤であの家族に向けられる世間のまなざしが、今回の件で私や私の映画に向けられているのではないか。祝意の件でそのまなざしが可視化されたとすれば、残念ですが、それがこの映画の今日性かもしれない」
カンヌ映画祭は仏政府主催だとして「公権力と距離を保つ」との表明を批判する声もある。是枝さんは「カンヌを含む主要な国際映画祭は、政府の主催でも国益ではなく映画文化の利益を優先する。『公権力は金を出すが口は出さない』という価値観が共有されている」と反論する。
日本の為政者の映画観はどうか。菅義偉官房長官は最高賞受賞について「日本のコンテンツの海外展開に弾みがつく」と述べた。安倍晋三首相もかつて東京国際映画祭で「日本の経済成長の中核がコンテンツ産業だ」とあいさつした。
是枝さんは言う。「映画は『コンテンツ』ではなく『シネマ』と言う。外貨獲得の手段ではなく芸術作品で、国益や経済を文化の上位に置く価値観は映画祭にはなじまない」。映画と国益が結びいた先には「国策映画」があると懸念している。
「徴用工」研究にも圧力
反日」批判は、文科省の外郭団体が助成先を決める科学研究費補助金科研費)でも起きている。
日本の朝鮮半島統治時代の徴用工問題に取り組む研究を、自民党杉田水脈(みお)議員が「科研費を使って韓国の団体と一緒に反日プロパガンダ(宣伝)をやっている」と批判(2月26日衆院予算委員会分科会)。さらに、政権に批判的な法政大の山口二郎教授への科研費助成もツイッター上などでやり玉に挙げた。
山口氏は「研究が国益にかなうか否かを決めるのは政治権力ではない」とツイッターで反論。法政大の田中優子学長も「適切な反証なく圧力で研究者の言論をねじふせることは断じて許されない」と発信した。
安倍政権下特有の現象
コラムニストの小田嶋隆さんは「助成する国や公的機関ではなく一部の議員やネトウヨネット右翼)が批判し、『反日』のレッテルを貼る。安倍政権下特有の現象」と言う。「かつて安倍首相や近い勢力は極右として自民党内で浮いていたが、今は政権中枢にいて自信を得ているのではないか。我々は右でも左でもなくど真ん中だ、という自意識が透けて見えます」
ネトウヨの批判について「必死だな」「反抗期の子供か」など相手への“上から目線”が特徴と指摘。「相手を不快にさせ、優位に立つ姿をギャラリーに見せるのが目的で、議論にならない。それでもきちんと反論することが正常な言論空間の維持につながる」と話す。
戦前の国家主義者を連想
近現代史に詳しい著述家の辻田真佐憲氏は祝意辞退や科研費の議論に、戦前の国家主義者・蓑田胸喜(みのだ・むねき)を連想したという。天皇機関説を唱えた美濃部達吉(みのべ・たつきち)ら自由主義的な学者を攻撃する蓑田に政治家や軍部が呼応した。「大衆を刺激する『報国』『不敬』などの強い言葉が学問や表現の否定に利用された。戦後は封印されてきたが今は新鮮に響き、他人への攻撃のよりどころとなっている」と見る。
反日」に惑わされないために、辻田さんは「学問や文化の恩恵を受ける『市民社会』や『公共』のイメージを持つことが大切だ。表現の自由の大事さを社会一般にもっと理解させる努力が必要だ」と強調する。

<原発のない国へ 基本政策を問う> (6)「教育」の名の宣伝活動 - 東京新聞(2018年7月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201807/CK2018071902000151.html
https://megalodon.jp/2018-0719-0939-39/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201807/CK2018071902000151.html


「先生、ここ、根拠は何ですか」。二〇一七年十月十二日の夕方、北海道経済産業局の八木雅浩・資源エネルギー環境部長が、北海道大大学院の研究室に入るなり、山形定(さだむ)助教(56)=環境工学=に詰め寄った。
八木氏の手には、山形氏が四日後に行うニセコ町ニセコ高校でのエネルギー問題の公開授業の資料があった。
同校は、一四年度に始まった経産省のエネルギー教育のモデル校の一つ。その一環の公開授業で、山形氏は原発の問題点を明らかにし、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの重要性を話すつもりだった。
授業の資料に「原発のコストは高い」との識者の試算があることに、八木氏がかみついた。「いろいろな見解があり、高いか安いかは一概には言えない」。福島第一原発が水素爆発を起こした写真には「ほかの電源も事故を起こすのに、ことさら原発が危ないという印象を与える」と迫った。
山形氏は「実際に起きた事故の写真を示して何が悪いのか」と反論。「影響が甚大な原発事故と、ほかの電源の事故を同列に扱う方が問題ではないか」とも思った。約束の十分は過ぎ、一時間以上たっていた。
八木氏の部下の広報担当調査官も同日、モデル校事業の委託先の財団に「驚きで講演の内容が反原発となっておりました(中略)そちらからも明日、ニセコ高校に指導を」と求めるメールを送っていた。
山形氏は授業の根本を変えるつもりはなかったが、原発のコストは「高いという指摘もある」と表現を和らげた。事故のほかに風力発電設備が倒れた写真も加え、授業を終えた。
経産局の対応は、波紋を広げた。ニセコ町長の諮問機関の環境審議会委員も務めるフリーライター葛西奈津子さん(50)らは「教育への検閲だ」と危機感を強め、住民説明会を開いた。
なぜ授業内容に介入したのか。八木氏は取材に応じず、代わりに経産局の広報担当調査官が「一方的で誤解を招きそうな内容だったため、山形氏に再考を求めた」と答え、「検閲の意図はなかった」と釈明した。経産省は今年四月、教育への介入という「誤解や懸念を生じさせる行為だった」として、モデル校事業の中止を発表した。
ニセコ高校の授業の二カ月後、山形氏は倶知安(くっちゃん)町の「再生エネセミナー」の講師三人のうち一人を頼まれた。やはり経産省の補助事業だったが、数日後に「あの件はなかったことに−」。講師は、経産局が推薦した森林組合幹部に差し替えられた。
倶知安町の環境対策室長は「山形氏に内諾を得たが、講師が学識者ばかりになるので、経産局に現場の実務を知る講師がいないか照会していた」と説明。しかし、山形氏は「裏で経産局が町に圧力をかけた疑念を拭えない」と語る。
原発への理解を深めようと、政府は教育や広報に再び力を入れはじめた。だが山形氏と葛西氏は口をそろえる。「政府が伝えたいことしか伝えられないのなら、教育ではない。プロパガンダだ」 (吉田通夫)

<エネ計画では>広報に再び注力
東京電力福島第一原発事故が起きるまで、政府は小中学校に原発の安全性を強調した副読本を配るなど、「教育」に力を入れた。
エネルギー基本計画では「依然として原発への不安感や政府・事業者への不信感・反発が存在する」「原子力の社会的信頼の獲得に向けて、最大限の努力と取り組みを継続して行わなければならない」としている。
過去の原発教育や広報戦略への反省に言及しつつ、教育や広報の重要性を再び強調。具体的には「客観的で多様な情報提供の体制を確立」「丁寧な対話や双方向型のコミュニケーションを充実する」と明記した。

<原発のない国へ 基本政策を問う> (5)核燃サイクル成算なし - 東京新聞(2018年7月18日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201807/CK2018071802000139.html
http://web.archive.org/web/20180718024503/http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201807/CK2018071802000139.html


都心から北東へ約百五十キロ。ヘリコプターから見下ろすと、倉庫のような建物が並んでいる。茨城県東海村にある日本原子力研究開発機構の燃料施設は、民家や畑に囲まれていた。
施設のどこかに、三・八トンのプルトニウムがある。核爆弾約五百発がつくれる量。国際機関の査察官が毎月訪れ、放射線防護やテロ対策で巨額の費用がかかっている。
日本は国内外に、核爆弾六千発に相当する計四十七トンのプルトニウムを保管する。その量は、二十五年前の五倍に増えた。
政府は、原発の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、再利用する「核燃料サイクル」構想を進めている。だが、国民から電気代や税金で集めた十三兆円を、プルトニウムを燃料にする高速増殖原型炉もんじゅ福井県)や再処理工場(青森県六ケ所村)などに投じながらも、構想実現のめどは立たない。
唯一の被爆国として核廃絶の理想を掲げながら、核兵器の材料をため込む日本に、海外の視線は厳しい。
「日本はわれわれに懸念を与え続けている。(東アジアでの)核拡散に加担しかねない」。今年二月、米上院が安全保障担当の国務次官としてアンドレア・トンプソン氏を承認するかどうかの公聴会民主党エド・マーキー議員が切り出した。トンプソン氏は「この問題を必ず掘り下げる」と約束し、承認された。
米国の念頭には、北朝鮮がある。プルトニウムをためる日本を引き合いに、「われわれも身を守る核が必要」と抵抗されれば、核兵器を放棄させる妨げになると警戒している。
米国の懸念を解消しようと日本政府はエネルギー基本計画に「プルトニウム保有量の削減に取り組む」との文言を加えた。もんじゅに代わり、フランスが開発する高速炉「ASTRID(アストリッド)」に望みをかけ、共同開発費を負担する計画だ。



ところが、このもくろみは風前のともしびだ。六月一日に東京・霞が関経済産業省で開かれた、高速炉開発会議の作業部会。仏原子力代替エネルギー庁の幹部、ニコラ・ドゥビクトール氏が「開発は緊急性を要しない。出力も縮小を検討している」と説明すると、官僚や三菱重工業幹部らの表情がこわばった。
「仏の原発業界は財政的に厳しく、アストリッドを従来のスピードで開発することに乗り気ではなくなった」。仏モンペリエ大のジャック・ペルスボワ名誉教授(エネルギー政策)が解説する。仏政府と業界はテロにも耐えられる新型炉を推進してきたが、福島事故後の安全規制強化で建設費は当初の三倍に。高速炉開発に資金を回せなくなった。
核不拡散問題が専門の米テキサス大のアラン・クーパマン准教授は「高速炉開発は、米英独など既にほとんどの国が断念。技術的に困難で、採算が取れないことがはっきりしてきた」と明かした。日本の原発政策は成算のないまま、逆風の中を進もうとしている。(伊藤弘喜、パリ・竹田佳彦)

<エネ計画では>実現へ推進維持
エネルギー基本計画は、核燃料サイクルについて「推進を基本的方針」とし、実現を目指す政策の維持を明記した。日本は十七日に延長された日米原子力協定に基づいて、原発の使用済み核燃料から再処理で取り出したプルトニウムの再利用が認められている。
日本は大量のプルトニウム保有している。しかし、本格利用できる高速炉の開発は進んでいない。ウランと混ぜた「MOX(モックス)燃料」を一部の通常の原発で使う「プルサーマル」は、プルトニウムを少量しか使えない。基本計画では「保有量の削減に取り組む」と明記しつつも、具体的には「プルサーマルの一層の推進」とするにとどまった。

 山本太郎が安倍首相にあの放火未遂スキャンダルを質問!「暴力団と繋がる人物に選挙妨害を発注する人間が総理なのか」- リテラ(2018年7月17日)

http://lite-ra.com/2018/07/post-4132.html

山本議員といえば、これまでこのカジノ法案を審議する内閣委員会において、自治体や集落への小型重機の導入や、ボランティアの高速道路無料措置など、被災地復旧のための具体策を提案してきた。しかし、きょうは質疑に立つと、カジノ法案についての質問を開始。「カジノ管理委員会を任命するのは総理大臣。任命者である総理にも廉潔性が求められるのではないか」と述べ、安倍首相にこう質したのだ。
「総理ご自身は暴力団、またはそれら勢力と繋がりがある人物との付き合いもしくは関係、仕事を発注などしたことなどありますか?」
安倍首相は「それはまったくございません」と短く答えたが、ここで山本議員は「いま巷で少し話題になっていることを調べてみた」と言い、“あの問題”に踏み込んだのだ。
あの問題──そう、本サイトでもお伝えしてきた、「安倍首相が暴力団とも関係が深い前科8犯の男に選挙妨害を依頼していた」という事件のことである。


過去記事
http://lite-ra.com/2018/07/post-4108.html

安倍事務所が暴力団に通じる人物に選挙妨害を依頼していた決定的証拠! 「安倍代議士に選挙妨害を報告」の記述も(2018年7月6日)
山本太郎 議員 内閣委員会 質疑(2018/07/17午前)

参院6増法が成立 自民、約束守らず強行 - 東京新聞(2018年7月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201807/CK2018071902000159.html
https://megalodon.jp/2018-0719-0942-22/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201807/CK2018071902000159.html

参院選の「一票の格差」是正に向けた選挙制度改革を巡り、自民党が提出した定数六増を柱とする公職選挙法改正案は十八日の衆院本会議で、自民、公明両党の賛成多数で可決、成立した。今国会の会期末が二十二日に迫り、与党が採決を強行した。来夏の参院選から適用される。改正法は自民党がかつて約束した「身を切る改革」と「選挙制度の抜本的な見直し」をほごにする内容。野党は衆院の全会派が反対し「党利党略の極みだ」などと反発している。 (我那覇圭)
参院議員定数は現行の二四二から二四八に増える。選挙区では「一票の格差」縮小のため、議員一人当たりの有権者数が最も多い埼玉選挙区の定数を二増。比例代表は掲載順に当選者を決める「拘束名簿式」を一部に導入し、定数を四増する。参院の定数増は沖縄の本土復帰に向け、一九七〇年に沖縄選挙区の新設で二増したのを除けば戦後初。
改正法が批判されるのは、これまでの「約束」に違反することが大きい。一つは定数増。二〇一二年の党首討論で当時の野田佳彦首相、自民党安倍晋三総裁が定数減で一致するなど、消費税増税などで国民に負担増を求める代わりに、国会議員が自分たちの「身を切る改革」を進めることを約束してきた。
だが、来年十月に消費税率10%への引き上げが予定される中、逆に定数を増やした。参院の付帯決議では、定数増による経費増大を避けるよう求めたが、給与引き下げなど具体的な方法には触れていない。
また、比例の定数増は「一票の格差」とは無関係。自民党も合区対象県の候補者を救済することを認め「鳥取・島根」「徳島・高知」の選挙区で公認が得られない現職を拘束名簿に掲載する方針だ。
もう一つが合区導入を決めた一五年の法改正の付則で、一九年参院選までに「制度の抜本的な見直しについて必ず結論を得る」と明記したことの約束違反だ。
自民党は審議で、選挙区と比例が並立する選挙制度を維持し、微修正した今回の改正を「抜本改革だ」と言い切っていたが、安倍首相は先月の党首討論で「臨時的な措置だ」と認めた。本来の目的である「一票の格差」縮小は限定的。一六年参院選で最大三・〇八倍だった選挙区の格差は二・九九倍となったが、来夏の参院選で再び三倍を超える可能性もある。
立憲民主党辻元清美国対委員長は十八日、記者団に「自民党が、自分たちが有利になるよう強行した。自民党の横暴ここに極まれり、だ」と批判した。

自民・船田氏が造反 参院6増法「国民に理解されない」 - 東京新聞(2018年7月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201807/CK2018071902000149.html
https://megalodon.jp/2018-0719-0944-18/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201807/CK2018071902000149.html

自民党の船田元・元経済企画庁長官(衆院栃木1区、当選十二回)は十八日の衆院本会議で、同党提出の定数六増を柱とする改正公職選挙法の採決を棄権し、党方針に造反した。船田氏はフェイスブックに「採決は拙速とのそしりを免れない。定数増は国民に理解されない」とのコメントを掲載し、改正法を批判した。
船田氏はコメントで「選挙制度(改革)はできるだけ多くの政党の賛同が望ましい」と強調。今回の改正案には多くの政党が反対し、他党の対案もほとんど議論されなかったとして、採決は拙速だと指摘した。
さらに、これまでの衆参の選挙制度改革は一貫して定数を削減する方向で、消費税増税などの際は国会自らの「身を切る改革」を前提に国民に理解を求めてきたとして「定数増は国民に理解されるものではない」と非難。「緊急避難であろうと定数増や拙速な手続きは避けるべきだ」とした。
船田氏は本会議で採決直前に退席。既に党の衆院議員総会長の役職を辞任する意向を示している。

初の司法取引 真相をゆがめぬように - 東京新聞(2018年7月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018071902000170.html
https://megalodon.jp/2018-0719-0952-05/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018071902000170.html

タイの発電所の建設事業を巡る贈賄疑惑で、日本企業と東京地検とが司法取引を結んだ。新制度の初適用だ。法人の責任は免れる一方、個人の刑事責任が問われる。真相をゆがめぬ捜査が必要だ。
「協議・合意制度」と呼ぶ司法取引が用いられた。容疑者や被告が供述や証拠の提出によって、共犯者ら他人の犯罪の捜査・公判に協力する見返りに、自分の起訴を見送ってもらったり求刑を軽くしてもらったりする制度である。
タイの贈賄疑惑では、大手発電機器メーカー「三菱日立パワーシステムズ」(MHPS)が、内部告発によって不正を把握した。社員らが資材の運搬を巡って、現地の公務員に賄賂を渡した疑いだ。
社内調査をした結果、不正競争防止法に抵触すると判断し、東京地検と協議を始めた。
そして、六月から施行された改正刑事訴訟法に基づき、双方が司法取引の「合意内容書面」に署名した。だから、法人としてのMHPSの起訴は見送られ、刑事責任を免れることができる。その見返りに個人の刑事責任を追及する捜査に協力するのだ。
これは「両罰規定」と呼ばれる罰則が不正競争防止法に規定されていることで成り立っている。つまり個人と法人の両方を罰することが可能で、外国公務員への贈賄については個人に刑罰が、法人に対しても三億円以下の罰金が科される定めなのだ。
法人としては捜査に協力した方が巨額な罰金を回避できるという判断が働いたのかもしれない。そう考えると、そもそも闇の中で行われ、発覚することが少ない贈収賄事件の端緒をつかみ、立件することには確かに有効だろう。検察は捜査の新しい武器を手に入れたといえる。
ただし、取引が介在して事実解明をする以上、犯罪の全体像がゆがんでとらえられないか懸念する。現地の公務員に渡った賄賂は数千万円規模だったようだ。金額の多さから組織の指揮系統に従った贈賄なのだろう。賄賂が渡った背景や経緯、企業内の指揮系統のやりとりを検察は正確に解明するべきである。
司法取引は組織犯罪や経済事件でトップを追及する際に使われることが想定されていた。
もし企業が責任逃れ、罰金逃れのために司法取引を使うのなら、国民の理解は遠くなる。もしこの手法が巨悪を眠らせる結果になれば本末転倒であろう。

(空自機トラブル)「軍民共用」もはや限界 - 沖縄タイムズ(2018年7月19日)


http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/285760
https://megalodon.jp/2018-0719-0948-32/www.okinawatimes.co.jp/articles/-/285760

航空自衛隊那覇基地所属のE2C早期警戒機が17日夕、那覇空港へ着陸した後にタイヤがパンクして滑走路上で立ち往生。約1時間40分にわたって滑走路が閉鎖された。
那覇空港を発着する国内線と国際線計50便以上が欠航や遅れ、目的地変更の措置が取られ、18日までに約9400人の足に影響が出た。
県経済を引っ張る好調な観光に影を落としかねないトラブルだ。
那覇空港は軍民共用空港である。自衛隊の事故が相次いでいることが懸念される。
今年6月、緊急発進(スクランブル)しようとしていたF15戦闘機2機が管制官の指示を守らず滑走路に進入し、民間機の着陸許可が取り消された。
国土交通省は航空事故につながりかねない重大インシデントとして調査している。F15のパイロットが管制官の指示を適切に把握していなかった可能性が指摘されている。
滑走路閉鎖も相次いでいる。昨年1月にはF15の前輪のタイヤが外れ約2時間、同じく7月にはF15の部品落下で約45分間、閉鎖された。
今回のパンク事故も飛行前の点検で異常は確認されず、離陸後も異常を知らせる連絡はなかったという。
空自は現在、E2Cの飛行を自粛している。県から呼ばれた那覇基地幹部はパイロットからの聞き取りの結果、エンジンのブレーキ機能の不具合と説明したという。
空自は事故原因の究明を徹底し、公表する義務がある。

■    ■

事故の背景に何があるのか。尖閣周辺や南シナ海での中国の活動を念頭に置いた自衛隊増強が大きな要因だろう。空自は2014年、那覇基地にE2Cの第603飛行隊(4機)を新設、16年にはF15を約40機に倍増して第9航空団を編成している。
緊急発進は17年度477回。過去最多だった16年度の803回より減ったものの、過密化に拍車をかけている。
那覇空港の16年度の離着陸は民間旅客機や貨物機、自衛隊機などを合わせ約16万6400回。滑走路1本の空港では福岡に次いで多い。
国は那覇空港の第2滑走路を20年に供用開始するという。年間18万5千回の離着陸を見積もるが、16年度の1・1倍にとどまる。
米軍嘉手納基地を使用する米軍機とルートが重なる場合に調整の必要があることや、自衛隊機が緊急発進する場合に民間機が待機しなければならないからである。

■    ■

第2滑走路を民間機と自衛隊機がどう使うのか、運用形態はまだ決まっていないが、見積もりから見えるのは観光客の増加にだけ対応したものではないということである。
沖縄の17年度の観光客数は957万9千人で初めて900万人を突破した。県が21年度の目標として掲げる1200万人が視野に入っている。
那覇空港は沖縄の玄関口である。観光は安全が何より優先されなければならないが、軍民の多種多様な航空機を管制するリスクを抱えている。「軍民共用」と「過密化」をどう解消するか。空港の在り方の議論が避けられない。

自衛隊機トラブル 民間専用化するしかない - 琉球新報(2018年7月19日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-764134.html
http://archive.today/2018.07.19-004548/https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-764134.html

またしても自衛隊機のトラブルによって那覇空港が一時、機能不全に陥った。航空自衛隊那覇基地所属・E2C早期警戒機のタイヤが着陸後にパンクしたため、17日午後5時38分から午後7時19分まで1時間41分にわたって滑走路が閉鎖されたのである。18日にかけて、民間機63便が欠航や出発地へのUターン、目的地の変更、遅延を余儀なくされ、少なくとも乗客9700人に影響が出た。
根本原因は、乗降客が年間2千万人を超え、ただでさえ過密化している那覇空港を、民間機と自衛隊機が共用している点にある。軍民共用が続く限り同様のトラブルを完全になくすことはできない。人命にかかわる大事故が起きてからでは遅い。民間専用化を強く望む。
国土交通省の資料によると、2012年度に7万3305回だった着陸回数が、16年度には8万3189回となり、4年間で1万回も増えた。
離陸を含めた発着回数は16万6千回以上だ。羽田、成田、福岡、関西国際に次いで5番目に多い。那覇空港の滑走路処理容量とされる年間13万5千回を大きく上回っており、綱渡りの運用を強いられている。建設中の第2滑走路の利用が始まれば、少しは緩和されるが、抜本的な解決には程遠い。
海外便をはじめ民間機の就航が増えたことに加え、自衛隊の機能が強化されていることが滑走路の過密化に拍車を掛けている。E2C早期警戒機は「空飛ぶ司令部」の機能を持ち、14年に配備された。この間、F15戦闘機も増強されている。民間専用化とは逆の方向に進んでいるのは遺憾に堪えない。
これまでにも、自衛隊機のトラブルはたびたびあった。タイヤのパンクは05年、08年、10年、13年にも起きている。17年1月には、F15戦闘機のタイヤが脱落した。同年7月には戦闘機の前脚部分にある着陸灯のガラスが破損した。そのたびに滑走路が閉鎖されている。
今年6月14日には2機のF15戦闘機が停止位置を越えて滑走路に進入し、降下中だった民間機の着陸許可が取り消された。事故につながりかねない「重大インシデント」として、国土交通省運輸安全委員会の事故調査官を派遣したばかりだ。
自衛隊の安全管理はどうなっているのか。原因を究明し再発防止策を徹底してもらいたい。それができないのなら、飛行を自粛すべきだ。
離島県の沖縄は県外との行き来を専ら航空輸送に依存している。空の玄関口の安全が確保されているかどうかは県民にとって死活問題だ。
こうもトラブルが度重なると、沖縄経済を支える観光産業へのダメージも甚大になる。予期せぬ空港での足止めや延泊は、楽しいはずの沖縄旅行を台無しにする。誰もが安心して快適に利用できる空港にしてほしい。

(大弦小弦)一日の仕事を終え、真っすぐ帰りたくなくて居酒屋の… - 沖縄タイムズ(2018年7月19日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/285758
https://megalodon.jp/2018-0719-0946-33/www.okinawatimes.co.jp/articles/-/285758

一日の仕事を終え、真っすぐ帰りたくなくて居酒屋ののれんをくぐる。名前と連絡先を書かされ、壁には禁止事項がいっぱい貼ってある

▼仕事のミスで落ち込んでいることや将来の悩みをなぜか店員が知っていて、キャリアアップの支援を申し出る。独りでボーッと過ごしたいのにコミュニケーションスキル講座を案内される

▼「そんな居酒屋、嫌だよね?」。静岡県富士市で子どもや若者の居場所づくりに取り組むNPO法人ゆめ・まち・ねっとの渡部達也さん、美樹さん夫婦が9日、沖縄市で講演した。心がほっとする場として子どもの居場所を大人の居酒屋に例えた。子どもの気持ちより大人が身に付けさせたい能力が優先される風潮に異議がある

▼運営する冒険遊び場は川に飛び込むのも木登りもたき火ものこぎり使用も自由。居場所には思春期の子、やんちゃな子も定期的に顔を出す。夫婦は見守るだけ。あせらず付き合ううちに信頼が芽生え、身の上話が聞けるようになった

▼安全面を心配されるが、達也さんは「外遊びは子どもの発達を支える原動力」と揺るがない。「心が折れるより骨が折れる方がまし」が合言葉だ

▼少年少女の事件が報道されるたび、大事に至らずに済む方法はなかったかと悔やむという。思いをためこまず、少しずつ吐きだせる場が大人にも子どもにも必要だ。(田嶋正雄)