(空自機トラブル)「軍民共用」もはや限界 - 沖縄タイムズ(2018年7月19日)


http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/285760
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航空自衛隊那覇基地所属のE2C早期警戒機が17日夕、那覇空港へ着陸した後にタイヤがパンクして滑走路上で立ち往生。約1時間40分にわたって滑走路が閉鎖された。
那覇空港を発着する国内線と国際線計50便以上が欠航や遅れ、目的地変更の措置が取られ、18日までに約9400人の足に影響が出た。
県経済を引っ張る好調な観光に影を落としかねないトラブルだ。
那覇空港は軍民共用空港である。自衛隊の事故が相次いでいることが懸念される。
今年6月、緊急発進(スクランブル)しようとしていたF15戦闘機2機が管制官の指示を守らず滑走路に進入し、民間機の着陸許可が取り消された。
国土交通省は航空事故につながりかねない重大インシデントとして調査している。F15のパイロットが管制官の指示を適切に把握していなかった可能性が指摘されている。
滑走路閉鎖も相次いでいる。昨年1月にはF15の前輪のタイヤが外れ約2時間、同じく7月にはF15の部品落下で約45分間、閉鎖された。
今回のパンク事故も飛行前の点検で異常は確認されず、離陸後も異常を知らせる連絡はなかったという。
空自は現在、E2Cの飛行を自粛している。県から呼ばれた那覇基地幹部はパイロットからの聞き取りの結果、エンジンのブレーキ機能の不具合と説明したという。
空自は事故原因の究明を徹底し、公表する義務がある。

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事故の背景に何があるのか。尖閣周辺や南シナ海での中国の活動を念頭に置いた自衛隊増強が大きな要因だろう。空自は2014年、那覇基地にE2Cの第603飛行隊(4機)を新設、16年にはF15を約40機に倍増して第9航空団を編成している。
緊急発進は17年度477回。過去最多だった16年度の803回より減ったものの、過密化に拍車をかけている。
那覇空港の16年度の離着陸は民間旅客機や貨物機、自衛隊機などを合わせ約16万6400回。滑走路1本の空港では福岡に次いで多い。
国は那覇空港の第2滑走路を20年に供用開始するという。年間18万5千回の離着陸を見積もるが、16年度の1・1倍にとどまる。
米軍嘉手納基地を使用する米軍機とルートが重なる場合に調整の必要があることや、自衛隊機が緊急発進する場合に民間機が待機しなければならないからである。

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第2滑走路を民間機と自衛隊機がどう使うのか、運用形態はまだ決まっていないが、見積もりから見えるのは観光客の増加にだけ対応したものではないということである。
沖縄の17年度の観光客数は957万9千人で初めて900万人を突破した。県が21年度の目標として掲げる1200万人が視野に入っている。
那覇空港は沖縄の玄関口である。観光は安全が何より優先されなければならないが、軍民の多種多様な航空機を管制するリスクを抱えている。「軍民共用」と「過密化」をどう解消するか。空港の在り方の議論が避けられない。