(大弦小弦)一日の仕事を終え、真っすぐ帰りたくなくて居酒屋の… - 沖縄タイムズ(2018年7月19日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/285758
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一日の仕事を終え、真っすぐ帰りたくなくて居酒屋ののれんをくぐる。名前と連絡先を書かされ、壁には禁止事項がいっぱい貼ってある

▼仕事のミスで落ち込んでいることや将来の悩みをなぜか店員が知っていて、キャリアアップの支援を申し出る。独りでボーッと過ごしたいのにコミュニケーションスキル講座を案内される

▼「そんな居酒屋、嫌だよね?」。静岡県富士市で子どもや若者の居場所づくりに取り組むNPO法人ゆめ・まち・ねっとの渡部達也さん、美樹さん夫婦が9日、沖縄市で講演した。心がほっとする場として子どもの居場所を大人の居酒屋に例えた。子どもの気持ちより大人が身に付けさせたい能力が優先される風潮に異議がある

▼運営する冒険遊び場は川に飛び込むのも木登りもたき火ものこぎり使用も自由。居場所には思春期の子、やんちゃな子も定期的に顔を出す。夫婦は見守るだけ。あせらず付き合ううちに信頼が芽生え、身の上話が聞けるようになった

▼安全面を心配されるが、達也さんは「外遊びは子どもの発達を支える原動力」と揺るがない。「心が折れるより骨が折れる方がまし」が合言葉だ

▼少年少女の事件が報道されるたび、大事に至らずに済む方法はなかったかと悔やむという。思いをためこまず、少しずつ吐きだせる場が大人にも子どもにも必要だ。(田嶋正雄)